予防医学研究者・石川善樹の「続けたくなる健康法」
医療・健康・介護のコラム
幸せな人は長生きか?…最新研究の結論は
こんにちは。
予防医学研究者の石川です。
いつの間にか、このブログも20回目を迎えました。
「そろそろ打ち切りになるのでは……」とドキドキしながらいつも書いていますが1年間は頑張りたいと思っておりますので、もうしばらくお付き合いいただけるとありがたいです。
さて、今回は「うお、これは衝撃的な論文が出てきたな」と驚いたことがあったので、それについて紹介させてください。権威あるイギリスの医学誌「ランセット」(電子版)に掲載された論文で、次のような疑問に答えようとするものです。(論文はコチラ: http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(15)01087-9/abstract )
「人は幸せだと長生きするのか?」
これまでにいくつもの研究で、「幸せな人たちは長生きする」と指摘されてきました。たとえばイギリスで行われた調査で、「今のあなたの幸せ度は、4点満点で何点ですか?」というシンプルな質問で、なんと寿命が予測できると報告されています。(ちなみに幸せ度が4点満点の人たちは、1点の人たちより35%長生きするのだとか)
ただ、従来の研究には2つの意味で、致命的な弱点があったといいます。一つは、「因果の逆転」の可能性です。どういう意味かというと、「幸せ→健康」という因果の向きではなく、実は「健康→幸せ」なのではないかというものです。
もう1つの弱点は、「間接効果」が考慮されていなかったということです。これもどういう意味かというと、たとえば「不幸せ→お酒を飲む量が増える→不健康」というようなメカニズムがある場合、それはむしろ「お酒」の効果のほうが大きいのではないかというものです。
そこで行われたのが、「幸せは直接的に死亡率に影響を与えるのか? イギリス女性100万人調査」というタイトルの研究です。上記に挙げた弱点を考慮した上で、100万人を対象に分析した結果、
「別に幸せでも長生きするわけではない」
ということが分かったのです。
このような直感を覆すような発見が相次ぐので、やはり研究は面白いものだと、改めて
さてこの論文を詳しく読むと、これまでの研究で「幸せだと長生き」とする傾向が見られたのには、2つの原因があるそうです。1つは、「もともと不健康な人は不幸せになりやすく、かつ早死にしやすい」のですが、そのような人たちの存在を十分に考慮できていなかったこと。もう1つは、不幸せな人は「
もちろん、これはあくまで1つの研究結果であり、今後もさらに様々な知見が出されると思います。
私自身としては、たとえこの研究の結果が正しいと証明されたとしても、毎日が少しでも幸せになるよう研さんを積みたいなと思っております。
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