寒竹葉月~男に生まれ女として生きる~
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(4)心のままに ~男から女として生まれた日
2012年6月、青空に入道雲が浮かんでいるのを私は那覇地方裁判所の前で見上げていた。1年以上の時間を経て、帰化申請の正式な許可が下りた。つらかったタイでの性別適合手術も終え、帰国して休む間もなく私は戸籍変更(性別変更)の手続きを進めていた。
この手続きを行うには、自身が「性同一性障害」であるという精神科医の診断書が必要になる。染色体の検査、ホルモン治療の経過、性別適合手術を受けた証明書、幾度かのカウンセリングを受けて診断書が出た。さらに戸籍謄本、申立書を用意する。申立書を受け取りに裁判所に行った際、受付の事務の方が慣れた様子ですらすらと説明してくれるのが不思議な気分だった。そして申し立てをする条件を教えられた。
(1)2人以上の医師から「性同一性障害」の診断を受けていること
(2)20歳以上であること
(3)婚姻をしていないこと
(4)生殖腺がないこと、または生殖腺の機能を永久的に欠く状態であること
(5)未成年の子がいないこと
(6)他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること
この条件を満たして初めて申し立てを行える。条件のうち、4と6は性別適合手術のことだ。4月に受けた性別適合手術の傷がまだ完治していなかった私は、この条件の重さを感じた。申立書を用意し、書類を提出して申し立てをした。裁判所を出る時に裁判所を前にして思った。
今まで何人の当事者がこの場所で手続きを行ったのだろうか。そして、その当事者はどんな気持ちでここに立ったのだろうか。「夢」が現実になり、「目標」になる。性別の戸籍変更が認められる時代になった。どれだけの当事者がその目標をつかむためにここを通ったのだろう。申し立てが通り、戸籍変更の許可が下りれば、そこからまた始まる新しい道。一致する性を手にした瞬間、何を思うのか。ただ青空を流れる雲を見上げていた。
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