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[iPSの10年]医療を変える(4)がん治療へ免疫細胞培養…患者に注入、数年後に治験

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[iPSの10年]医療を変える(4)がん治療へ免疫細胞培養…患者に注入、数年後に治験
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  ■わずか0.1%

 横浜市鶴見区の郊外にある理化学研究所。北研究棟5階の細胞培養室で「NKT細胞」と呼ばれる特殊な免疫細胞が、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から大量に生み出されていた。

 NKT細胞は、がん細胞を攻撃すると同時に、他の免疫細胞を活性化させる働きも持ち、がん治療に高い効果があるとされる。ただ、血液中の免疫細胞の中で、0.1%しか存在せず、培養するのが難しい。

 「iPS細胞の技術でこの細胞を大量に増やせれば、新たながん免疫療法を生み出せる」。理研グループディレクターの古関 明彦はるひこ (54)は、そう力を込めた。

 NKT細胞のがん治療への応用は、iPS細胞が2006年にマウスで開発される以前から、千葉大が積極的に進めてきた。

 同大では1997年、NKT細胞を活性化させる糖脂質を発見。この糖脂質をくっつけた別の細胞を、進行した肺がん患者17人に注入する臨床研究を2005~09年に行った。

 10人で免疫が活性化され、免疫反応が見られなかった7人と比べて生存期間が延びた。7人は、がんの影響でNKT細胞の機能が低下していたとみられる。

 同大教授の本橋新一郎(48)は「活性化する物質を加えても、NKT細胞ががんの影響で弱っていれば効果は薄い。どの患者で効果が出るかを事前に知る方法も今のところない」と課題をあげる。

 そんな中、千葉大出身でもある古関とiPS細胞を使った共同研究の話が持ち上がった。

 患者以外のNKT細胞から作ったiPS細胞を“元気な”NKT細胞に変化させ、がん患者に注入する計画で、臨床試験(治験)を3、4年後に始める準備を進めている。

  ■ES細胞の壁

 免疫細胞を増やし、がん治療に応用しようという発想は、iPS細胞より先に研究が進んだ別の万能細胞のES細胞(胚性幹細胞)でもあった。実際、古関らはiPS細胞が開発された06年、ES細胞からNKT細胞を作ることに成功している。

 だが、この方法は受精卵にNKT細胞の核を移植する必要があるなど、技術的にも倫理的にも治療への応用は困難だった。

 iPS細胞であれば、元の免疫細胞に複数の遺伝子を加えれば作製できるうえ、再び免疫細胞に変化させても元の細胞の特徴は維持される。

 「ES細胞では核移植などの『職人技』が必要だった。iPS細胞の誕生が、免疫のがん治療への応用を加速させた」。古関らとともに、理研でこの研究を行った京都大再生医科学研究所教授の河本宏(54)はそう振り返る。(敬称略)

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