イグ・ノーベル・ドクター新見正則の日常
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肥満でないのに異常!? 「隠れメタボ」の実像とは
今日は、 「肥満でないのに『隠れメタボ』、914万人も!」 という記事についてのコメントです。肥満ではないのに高血圧や高血糖などの異常を複数持つ「隠れメタボリックシンドローム」の患者が全国で914万人に上ると推計されるという厚生労働省の研究班からの報告です。その根拠となる研究は、1997~2012年に国立長寿医療研究センターが実施した40~79歳の男女約4000人の健康調査データを解析した結果、男性の10.9%、女性の13.6%が、BMI<Body Mass Index(体格指数)=体重(Kg)÷身長(m)÷身長(m)>が25未満で腹囲もメタボの基準未満なのに、高血圧、高血糖、脂質異常のうち2つ以上の異常を持つことがわかったそうです。この数字をもとに、全国で男性380万人、女性534万人の隠れメタボ患者がいると推計したとなっています。
BMI、内臓脂肪で判断できるのか?
現行のメタボリックシンドロームの診断は、ファーストステップが腹囲で男性が85センチ以上、女性が90センチ以上で、セカンドステップに進みます。そして血圧(最高血圧が130以上、最低血圧が85以上)、血糖(空腹時110以上)、脂質(中性脂肪150以上、善玉コレステロール40未満)のうち、2つ以上に異常があるとメタボリックシンドロームとなります。
つまり、今回の研究ではファーストステップで問題ない人の中にも血圧、血糖、脂質の2つ以上の項目に異常を認めた人が相当数いるということです。僕にとっては特別不思議なことではありません。まず、そもそもメタボリックシンドロームの端緒は、肥満に分類される人の中にも比較的悪くない肥満と、相当悪い肥満があると思われていたことです。肥満は日本ではBMIが25以上です。つまり、単にBMIだけでは、その後の健康度を測れない、相当悪い肥満をふるい分けられないので、内臓脂肪に世界中が注目したのです。そして、CT検査でのおへその部分での輪切りでわかる内臓脂肪の面積が100平方センチの上下で分けました。すると明らかに内臓脂肪が100平方センチ以上の群で、その後の生活習慣病の発生頻度が高かったのですね。つまりBMIの数値だけではうまくいかないので、ある意味、ダブルスタンダードとなることを承知で内臓脂肪を導入しました。ところが内臓脂肪は簡単には測定できません。通常は
今回はBMIが25以下で、腹囲もメタボリックシンドロームの基準に満たない人を調べて、血圧、血糖、脂質の異常が2つ以上認められた人が相当数いたということです。すると疑問は、それらの人の内臓脂肪です。彼らが実は内臓脂肪が100平方センチ以上であれば、今までのメタボリックシンドロームのストーリーにまったく矛盾しません。また、もしも内臓脂肪が100平方センチ未満でやはり血圧、血糖、脂質の異常が2つ以上認められるのであれば、内臓脂肪の線引きの基準を100平方センチよりも下げた方がいいのかもしれません。また、内臓脂肪の基準を下げても、血圧、血糖、脂質の異常が2つ以上認められた人を拾い上げられないのであれば、そもそも日本人では内臓脂肪に着目すること自体に問題があるのかもしれません。来年には更なる結果が公表されるそうなので、とても楽しみです。
有酸素運動で異常値が改善
僕が、「隠れメタボ」という言葉と同じように違和感を覚えていた言葉は、「正常眼圧緑内障」です。緑内障は眼球の圧力(眼圧)が上昇することで、急性の場合には失明したりします。その緑内障に眼圧が正常のものがあるのです。昔は、まったく意味不明と思っていました。ところが、友人の眼科医に教えてもらったところ、眼圧を下げる薬で良くなる状態を緑内障と言うのだとの説明です。とても合点がいきました。そんな視点で今回の「隠れメタボ」を考えると、運動で異常値が改善する状態と考えれば納得できます。僕の外来では内臓脂肪や皮下脂肪の測定を行っています。すると、運動でまず内臓脂肪が激減します。そして徐々に皮下脂肪が減っていきます。つまり患者さんには、「内臓脂肪は普通預金で、皮下脂肪は定期預金ですよ」と説明しています。つまり、「メタボ」という言葉を「運動で改善する状態」とでも言い換えると、今回の見出しも合点がいきますね。適切な有酸素運動はなにより健康には有益です。できる範囲で精いっぱい有酸素運動をしてください。運動に無縁の人は、まずは朝晩30分の散歩から始めるといいですよ。
人それぞれが、少しでも幸せになれますように。
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