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オトコのコト 医師・小堀善友ブログ

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オープンアクセスで納得…ドラゴンボールと精子の共通点

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 医学の分野では、世界のいたるところで新しい発見があります。

 ついこの間まで当たり前のことだと思っていたことが覆されることもありますし、夢だと思われていたような治療があっという間に現実になったりします。学会に出席すると、どんどん医学が進歩しているのが感じられ、その新しい知識を取り入れていかないと、世界の先端の研究にはついていけません。

 

 わたしが研修医だった十数年前、患者さんの珍しい病気の治療を調べたり、学会発表をするために資料が必要な際には、新しい医学的知識を取り入れるために過去の論文を集めるところから始まりました。大学の図書館のコンピューターで論文を検索して、図書館の奥にある膨大な本の山から過去の論文を引っ張ってきてコピーをしたり、秘書さんにお願いして資料を集めてきてもらったりしました。

 

 やがてインターネットで論文検索ができるようになりましたが、すべての内容までは見ることができず、論文の抄録(簡単なまとめ)だけを見て、必要なものは取り寄せるようになりました。しかし、近年では「オープンアクセス」になっている論文は、最新の論文でもインターネットで内容や詳細なデータまで見ることができるようになっています。

 

 オープンアクセスとは、学術雑誌に掲載された論文が、インターネットを通じて誰でも無料で閲覧できる状態に置いてあることです。以前は論文を読むためには高額な購読料を払って雑誌を買わなくてはならなかったので、個人では多くの論文を購入することはできませんでした。しかし、学問の自由な共有を目指す動きが現れ、2000年代からオープンアクセスの雑誌や、発表された自分の論文をオープンアクセスにするような動きが増えてきました。

 

 例えば、2007年には米国で、アメリカ国立衛生研究所(NIH)から予算を受けて行った研究の成果は、発表後1年以内に公衆が無料でアクセスできる状態にしなければならない、ということが法律で義務化されたのを始め、世界各国で対応が進められています。

 

オープンアクセスで納得…ドラゴンボールと精子の共通点

 そうなると、世界各国の新しく発表された論文(研究のデータ)がすぐにインターネットを通じて読むことができるので、自分の研究に取り入れたり、その論文から新しいアイデアを得たりすることができるのです。世界の最新の知識の情報がすごいスピードで動き回っていることがわかります。

 

 さてさて、わたしは精子の研究をしているのですが、先日そのオープンアクセスで興味深い精子の動きに関する研究を見つけました。精子は顕微鏡で見ると頭部が振動しながら前進していることがわかります。精子が受精する能力を得ることを「活性化」というのですが、活性化した精子は頭部の振動が大きくなるという報告もあります。しかし、不思議に思っていたのは、なんで前進する際にそんなに精子の頭部がグワングワン揺れるのだろう、といつも考えていました。もしも、卵子に向かっていくのであれば、そんなにブルブル震えながら進まなくても、一心不乱にまっすぐに進んだほうが、効率が良いのではないかと考えていたのです。

 

 しかし、精子の動きを3D解析したオープンアクセスの新しい論文をみて、納得しました。

  Sperm navigation along helical paths in 3D chemoattractant landscapes. Nature com. 2015

 

 論文から引用した精子の動き方の図を示します(オープンアクセスの論文は無料で引用が可能なのです)。精子は、単純に首を振りながら進んでいるのではありませんでした。図のように、らせん運動をしながら、前進しているのです。だから、顕微鏡のスライドガラスの上で2Dの視点で見ると、ただ首だけを振っているように見えるのですが、精子が尾部を振りながら動いていくために、ぐるぐるとらせん運動をしながら進んでいっているのでした。

 

 この動き方は、どこかで見たことがある気がする…と考えて思い返しますと、漫画のドラゴンボールでピッコロさんが使った必殺技の「 ()貫光(かんこう)殺砲(さっぽう) 」ではないですか。これは著作権があるために画像を出すことができませんので、興味のある方は自分で調べてみてください。

 

 オープンアクセスのおかげでちょっとスッキリすることができました。

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オトコのコト_小堀善友顔120px20150821

小堀善友 (こぼり よしとも)

泌尿器科医 埼玉県生まれ

2001年金沢大学医学部卒、09年より獨協医科大学越谷病院泌尿器科勤務。14年9月から米国イリノイ大学シカゴ校に招請研究員として留学。専門分野は男性不妊症、勃起・射精障害、性感染症。詳しくはこちら
主な著書は『泌尿器科医が教えるオトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)。詳細はこちら

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