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ボンジュール!パリからの健康便り

yomiDr.記事アーカイブ

早くから「子離れ」「親離れ」…老後はどうなる?

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 フランス人は老後、一体どんな生活をしているのだろう。

 家族がいても同居せず、1人で暮らすお年寄りが多いフランス。昔の日本のような大所帯で住む習慣はない。子供も、早ければ大学生の頃から友人とアパートをシェアするなどして独立し、遅くとも、働き始めれば親との同居はほとんどないといっていい。 同棲(どうせい) するカップルも多い。親子は早くから子離れや親離れをする。

 子供がいなくなった親は2人だけの生活になるが、いつしか年老いて、どちらかが先に逝き、どちらかが独居生活となる。パリは特に独居の高齢者が多い。週末には子供や孫たちが訪問してきたり、一緒に食事に行ったりして過ごすこともある。それでも高齢になるにつれて、1人での生活はだんだんと困難になってくる。

 フランスには高齢者のための介護サービスや公共の老人ホームがたくさんある。自宅で受けることのできるサービスは様々で、食事の宅配サービスや生活一般のヘルパーや各種介護サービスがあり、自宅での生活を続けることができる。自宅での生活を望む高齢者が多く、サービスを提供するNPOも多い。

 公共の老人施設は、高齢者用のアパートや一般的な老人ホーム、医療付きの老人ホームがある。高齢者用アパートは、自立できる高齢者が入居する。個室には小さなキッチンやシャワーなどが完備されており、自炊もできるし、希望すれば食堂での食事も可能だ。老人ホームは60歳以上の高齢者が入居対象となる。こちらも自立できる高齢者という条件がついている。医療付き老人ホームへの入居は待機者のリストがあるが、申し込んでから1年くらいで入居できるようだ。

 フランスも高齢者問題が深刻化しているので、今後は高齢者の介護問題、高齢者施設などの充実が大きな課題となっている。2003年の猛暑で多くの高齢者が亡くなったことは、よく知られている。そのほとんどが独居生活者だった。

 高齢者への様々なサービスが充実しているにもかかわらず、あれだけ多くの高齢者が亡くなるということは、サービスを受けていない人も多いのではないだろうか、もしかしたら高齢でサービスの利用方法が分からなかったのか、とも思う。

 フランスのアパートで時々、隣人パーティーなるものがある。普段は顔を合わせない隣人たちが、ワインや食べ物を持ち寄ってアパートの中庭などで行う。これはとても良いアイデアだと思う。自分たちの住むアパートにどんな人が住んでいてどんな生活をしているのかを知る機会となる。独居の高齢者の存在もわかり、時よりお声がけをして、助け合うこともできる。

 私のアパートにも高齢者のご夫妻が住んでおり、携帯の番号とメールアドレスを交換している。時々、メールのやり取りをしたり、電話で会話をしたりしているが、もっぱら私のほうがそのご夫妻に、「最近顔を見ないけれど元気にしている?」とメールで安否を気遣われている。

■今週の一句

春寒の アスファルト打つ  (ひづめ) かな

早くから「子離れ」「親離れ」…老後はどうなる?
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ボンジュール!パリからの健康便り_古田深雪_顔120px

古田深雪(ふるた みゆき)

1992年渡仏。
1997年より医療通訳として病院勤務。

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3件 のコメント

介護

セントパンクラス

ここイギリスでは、政府の資金削減のため介護サービスが減っている上高齢者の増加により、介護者が一軒当たりの訪問で費やす時間は平均で14分だそうです...

ここイギリスでは、政府の資金削減のため介護サービスが減っている上高齢者の増加により、介護者が一軒当たりの訪問で費やす時間は平均で14分だそうです。ほんの14分で一体どれほどのことができるのでしょうか。お金のあるお年寄りならプライベートの介護者を頼めるのでしょうが・・・。私の知人(うちの親くらいの年)でこちらでは身寄りのない人がいるのですが、彼女は集団生活が嫌いなので施設には入らず看護人を雇うと言っていました。
また私より若い知人は、引っ越した先が独居老人ばかりで、いきなり家の鍵を預けられそうになって困っていました。鍵を預かるだけならいいのですが、どさくさで介護人にされたらたまりません・・・。
うちは二人の子供がいるので、私が歳を取って一人暮らしになっても時々様子を覗いてくれるかしらと期待しています(笑)。

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老後

古田深雪

コメントをありがとうございます。 世界的に高齢者が増えているので、老後の問題は身近に感じます。 フランスも寿命が延びてきていますので、今後は介護...

コメントをありがとうございます。
世界的に高齢者が増えているので、老後の問題は身近に感じます。
フランスも寿命が延びてきていますので、今後は介護の問題も大きくなると思います。政府が行っている介護サービスをうまく使えていない人が多いようにも感じますが、こういったサービスを利用するにもインターネットで調べたり、区役所に問い合わせに行ったり申し込んだりと、高齢者自身が行うにはハードルが高く、家族の援助がないとなかなか難しいと思います。フランスには便利なサービスも多く、うまく利用すれば快適な生活を送れるのではないかと思います。共働きも多いフランスはおじいちゃんおばあちゃんに学校のお迎えなどをお願いしているご夫婦も多く、毎週日曜日のランチはおじいちゃんおばあちゃんと一緒に、という家もあります。家族がお互いに助け合って生活をするのはとても良いことですね。昔の日本は何世代も一緒に住むということがありました。大変なこともあったでしょうけれど良いことも沢山あったのではないかと思います。

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老後

パパノエル

フランスで永住すると覚悟を決めてから、老後や介護の問題はとても興味があります。 自分のまわりを見ると、リタイア後もパリに残る人、地方に移住する人...

フランスで永住すると覚悟を決めてから、老後や介護の問題はとても興味があります。

自分のまわりを見ると、リタイア後もパリに残る人、地方に移住する人、色々ですね。
でも、子どもの学校のお迎えに行くと、思った以上におじいちゃんおばあちゃんがお迎えに来ている家も多く、経済的には独立しても、スープの冷めない距離で実家の助けを借りながら暮らしている家庭も多いのかなと思います。

また、知り合いは、地方に一人暮らしする80歳近いお母様を、11月から4月までパリの自宅に呼び寄せて一緒に暮らしています。
フランスの冬は天気も悪く、日照時間も短いので、夏の暑さ同様、老人には厳しそうですね。

自分の老後のことも色々と考えてしまいますが、私たちの年代は年金を満額もらうには少なくとも67歳(これからもっと延長されそう?)まで働かないといけないようなので、老後は気が遠くなるくらい先のような気もしています。

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