予防医学研究者・石川善樹の「続けたくなる健康法」
医療・健康・介護のコラム
脳科学に基づく「ポジティブ感情の持ち方」
こんにちは。
予防医学研究者の石川です。
昔から私は、自分の感情を振り返るクセがあります。
どういうことかというと、たとえば、「今日自分は、どういう感情を経験しただろうか?経験しなかった感情は何だろうか?」と振り返るのです。
どうしてそんなことをするかというと、やはり研究者という職業柄なのかもしれません。様々な角度から物事をとらえ、発想することが私たちには求められるのですが、そのためには「情緒」が豊かでなければなりません。情緒というのは、別の言葉で言えば、喜怒哀楽の激しさというか、様々な感情を日ごろから経験しておくことが大事になるのです。
そのため、自分の感情の動きを振り返りつつ、できるかぎり色々な感情を経験するように気を付けています。
……そんな話を友人にすると、「どのようにしてやっているのか?」と聞かれることがあります。たとえば、ポジティブな感情を経験したいと思ったときに、どのような方法でやっているのかと。
実は、ポジティブ感情については、脳科学に基づいた明快な方法論があります。それは「思いやりを持つこと」です。
私たちの脳は不思議なもので、「苦しい状況にある人」に対して思いやりを持った時に、脳はポジティブな反応を示すことが知られています。ただし、これには注意が必要です。
というのも、苦しい状況にある人に対して「共感」してしまうと、脳はネガティブな反応を示すのです。つまり、苦しみという感情に寄り添うだけではだめなのです。「共感」と「思いやり」の違いは、そこに「相手の力になりたい」という意思があるかどうかだと言われます。
つまり、「苦しい状況にある人を思い浮かべ、その苦しみに共感し、何とか力になりたい」と思うことで、私たちの脳は極めてポジティブな状態になるのです。ちなみにこの「苦しい状況にある人」というのは、自分でもいいし、友人でもいいし、赤の他人でもいいとされています。
「共感」と「思いやり」は違うというのは、近年の脳科学が示した重大発見だと思います。一方でまだ分かっていないのは、思いやりは心の中で思うだけでいいのか、実際に行動として示す必要があるのかということです。もちろん、分かっていなければ、試してみればいいだけです。
このような調子で、感情に関する科学的知見を活用しながら、今日も一日、様々な感情を経験しようと思っています。
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コメントありがとうございます
石川善樹
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「共感」よりも「思いやり」で元気に働く
なおぷー
「『共感』と『思いやり』は違う」とのこと、なるほど!と納得しました。 医療従事者は、患者の苦しみに「共感」することを求められますし、そのよう...
「『共感』と『思いやり』は違う」とのこと、なるほど!と納得しました。
医療従事者は、患者の苦しみに「共感」することを求められますし、そのようにすべきだと教育されています。しかし、ただ単に「かわいそうだね、気の毒だね、おつらいでしょう」という「共感」をしているだけでは、お互いにネガティブになって医療者の側もつぶれてしまいます。「やさしい医療者」ほど、相手の苦しみとシンクロして自分の心を傷つけてしまう傾向があると思います。
ここで一歩進んで「相手の力になりたい」という「思いやり」を持つようにすれば、自分の健康を壊すこともなく良い仕事ができるのだと分かりました。「思いやり」って、要するに愛ですね。人間愛の大きな人がすさまじく元気な理由がなんとなく分かりました。
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