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原隆也記者のてんかん記

闘病記

抗てんかん薬と片頭痛

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 発作を抑える「抗てんかん薬」には様々な種類があります。私が服用しているのは、最もポピュラーな薬の一つのバルプロ酸(商品名・デパケン)です。

 ほかの薬、例えば風邪薬のように熱やせき、鼻水といった症状を改善する、病気を治すものとは異なり、脳の神経に作用して発作が起きるのを抑えてくれる薬です。てんかんという病気自体が治るわけではありません。私の場合、元々発作が少なかったことや深夜の業務がなくなり、睡眠不足になることもなくなったため、薬が効いている実感は薄いです。でも5年前の発作以降、起きていないことを考えると、効いているのかなとも思います。

 一方で、この薬のおかげで大変助かっていることがあります。それは、以前から悩まされていた片頭痛がきれいさっぱりなくなったことです。片頭痛は、成人の10人に1人が悩まされているとみられ、まさに現代人の頭痛の種となっています。

 私は高校生のころから片頭痛が表れるようになりました。症状は典型的で、頭痛が起きる前に、キラキラと光るギザギザ状の物体が目の中にちらつくようになります。これを前兆現象の「 閃輝暗点(せんきあんてん) 」といいます。この後に脂汗が出てきて、臭いや光に敏感になります。そしてドクドクと脈打つような激しい頭痛と吐き気が襲ってきます(私の場合、最初のてんかんの発作と少し似ています)。頭痛は半日程度続き、この間は、痛みと気持ち悪さで動けません。頻度は数か月から半年に1回程度で、頭痛が起きるのは、大抵、寝過ぎた時やワインなど特定の物を飲食したときでした。

 片頭痛には、トリプタンという頭痛が起きた時に、痛みを抑える効果の高い薬があることを知ってはいたのですが、ずぼらな私はてんかんの発作が起きるまで病院に行くことを怠っていました。このため頭痛になると家の中で布団にくるまってじっとしているか、外出先ではトイレにこもるのが常でした。

 ところが、抗てんかん薬として処方されたバルプロ酸には片頭痛の予防効果があり、私にとって福音になりました。てんかんの患者には私のように片頭痛も抱えている方は少なくないそうです。

 今はてんかんの発作と片頭痛予防としてバルプロ酸を服用し、片頭痛が起きた時用にトリプタンも処方してもらっていますが、ほとんどトリプタンを使用せずに済んでいます。このため、私にとって薬を手放したり、欠かしたりするのは考えられなくなっています。

 てんかんの患者の6割は薬で発作が抑えられ、薬が効きにくい人も手術で治すことができるといいます。患者の皆さんは希望を持ってほしいと思います。

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原隆也記者のてんかん記_201511_120px

原隆也(はら・りゅうや)
1974年、長野県出身。南アルプスと中央アルプスに囲まれた自然豊かな環境で育つ。1998年、読売新聞入社。千葉、金沢、横浜支局などを経て2014年9月から医療部。臓器移植や感染症、生活習慣病などを担当している。趣味は水泳、シュノーケリング。

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