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虹色百話~性的マイノリティーへの招待

yomiDr.記事アーカイブ

第30話 にじいろ台湾~~台湾選挙と台湾の性的マイノリティー

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 1月16日の台湾総統選挙と立法院選挙は、日本でも大きく報道されました。民進党の蔡英文が当選して8年ぶりの政権交代が行われ、議会も民進党が多数を占め、安定した政権運営が見込まれています。

 選挙結果は、おもに台湾―中国関係の今後を占う点から注目されていますが、じつは台湾の性的マイノリティーにも今後、大きな変動が期待されています(例によって、日本のメディアではそうした点への言及はありませんが……)。

 今回は台湾の性的マイノリティーの諸相について、管見に入るところを述べてみます。

(1) 台湾はアジア最大のプライドパレード開催地域

 台湾の性的マイノリティー運動は2000年代以後、活発化してきました。それ以前、国民党の独裁と戒厳令体制下では、性的マイノリティーは抑圧され、タブーな存在であったことは日本も同様です。ゲイは公園など特定の場所に集まり「出会い」を求めるのがせいぜいで、台北の新公園(二二八和平公園)が有名でした。そんな70年代のゲイたちを描いたのが、台湾クィア文学の先駆け、白先勇『 ニエズ (げっし) 』です。

 1998年、ゲイの若者の自殺を契機に電話相談「 台湾同志ホットライン協会 」を設立、いろいろなコミュニティー活動の先駆けとなりました( 同志(トンチー) は中国語圏でゲイ、広くは性的マイノリティーを指す呼称)。

 台北でのパレードは2003年に第1回が約1000人の参加で行われましたが、 今秋で第14回 。年々拡大し、約6万人が参加するアジア最大のプライドパレードとなっています。アーメイ(張惠妹)らLGBTフレンドリーなアーティストも参加し、日本を含め海外からの参加者も少なくありません。パレードは近年、台中や高雄でも開催されています。台湾、意外に(?)盛り上がっています。

(2) LGBT支持を言う政治家や社会的エリートが多い

 こうした背後には、政治家も意外にLGBTフレンドリーだった影響があるかもしれません。

 民進党は90年代の結党以来、「人権立国」を掲げ、当時から世界標準だった性的マイノリティーの人権にも取り組んでいます。じつは国民党も同様で、2004年に台北LGBTフェスティバルを開催したのは当時市長だった馬英九氏(のち総統)でした。

 これには、国連追放以後の国際社会で台湾のプレゼンスを回復する、あるいは中国の権威主義体制へのアンチテーゼを表明するうえで、LGBT支持はうってつけだったという事情もあるようです。また、台湾は社会的エリートやNGO指導者も留学して海外で学位をとるのが当たり前の社会で、LGBT課題への認知が高いこともあります。

 ただ、地方選挙で2例、そして今回の立法院選挙で6人がはじめてカミングアウトして立候補しましたが、まだ当選には至っていません。

(3) 台湾はアジア初の同性婚合法地域になりそう

 今回の改選でむこう4年の間に、台湾でアジア最初の同性婚法が成立すると期待されています。台湾ではフェミニズムの女性運動にレズビアンたちも合流し、同性婚法、同性パートナーシップ法、さらに多元成家という3人以上のグループでも家族と認定するような仕組みの3つをセットで提案してきました。フェミニズム運動がベースですから、婚姻制度の保守性や問題性は共有されているわけです。

 そのうち同性婚法が、これまで民進党議員により3回、上程されましたが、国民党により押し返されています。

 蔡英文は昨秋のLGBTプライドパレードにあわせて、同性婚を支持するメッセージ動画を発表しました。

  https://www.facebook.com/tsaiingwen/videos/10152991551061065/

 愛のまえでは誰もが平等です。蔡英文です。私は婚姻の平等を支持します。

 すべての人が、自由に愛し、幸福を追求できるように。

 今回、ひまわり学生運動に発する新党「時代力量」が5議席を得ましたが、マニフェストに同性婚成立を掲げており、時代力量が民進党を突き上げるかたちで同性婚法は成立するだろうと目されています。

 なお、昨年から台北・台中・高雄で、日本の渋谷区や世田谷区のような自治体による同性パートナーシップ証明が開始しています。

(4) ゲイはHIV問題が苛烈、トランスジェンダーの可視性は低い

 台湾の性的マイノリティーの多様な側面として、ゲイ間でのHIV陽性率の高さが指摘されます。日本で感染・発症をあわせ年間1500人ほどで推移していますが、台湾では2005年には3300人、06年に2900人を数えました。人口2300万人の台湾では大きな数で、ほとんどがゲイ男性間での感染です。

 LGBTのプレゼンスが高い一方、ゲイ間でもHIV陽性へのタブー感は強く、陽性者の運動は難しいようです。台湾CDC(台湾の疾病管制センター)では 日本のコミュニティセンター事業 を参考に、ゲイ向け啓発拠点を各地に設置しはじめました。

 トランスジェンダーは、現地コミュニティーに詳しい友人によれば、FTMの可視性はほとんどなく、台湾にも女装文化はあるためMTFの顕在化は多少あるそうですが、日本のようにトランスで著名な活動家や政治家(候補含む)はいません。台湾にも性別変更の法律はありますが、手術要件をはずす検討がされているそうです。

 LGBT運動というと、とかく欧米と比べて進んでいる・遅れていると言いがちです。しかし、おなじ儒教的倫理観を共有する台湾社会で今後どういう展開があるのか。それは日本の当事者に大いに参考になるとともに、言い訳のきかない問いを突きつけるのではないか――、「台湾でできたことがなぜ日本でできないのか」、と私は思っています。

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永易写真400

永易至文(ながやす・しぶん)

1966年、愛媛県生まれ。東京大学文学部(中国文学科)卒。人文・教育書系の出版社を経て2001年からフリーランス。ゲイコミュニティーの活動に参加する一方、ライターとしてゲイの老後やHIV陽性者の問題をテーマとする。2013年、行政書士の資格を取得、性的マイノリティサポートに強い東中野さくら行政書士事務所を開設。同年、特定非営利活動法人パープル・ハンズ設立、事務局長就任。著書に『ふたりで安心して最後まで暮らすための本』『にじ色ライフプランニング入門』『同性パートナー生活読本』など。

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1件 のコメント

台湾と韓国では女性が最高権力者に

カイカタ

ある意味、日本はアジアでも遅れている国だと思います。なので、台湾で同性婚が成立するのが先だったとしても不思議ではありません。 でもって、女性の社...

ある意味、日本はアジアでも遅れている国だと思います。なので、台湾で同性婚が成立するのが先だったとしても不思議ではありません。

でもって、女性の社会進出度も、本当に先進国の中では低いですよね。

未だに夫婦は同姓を名乗らなければならず、そのうえ、戸籍制度なんてあるのは日本ぐらい。

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