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ホントはどうなの?健康食品・サプリメント

国立健康・栄養研究所

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[グルコサミン]1か月で効果出なければ中止も検討を

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 変形性関節症やリウマチなどにより膝の痛みに苦しんでいる高齢者は多いことと思われ、実際に、膝の痛みによいとして「グルコサミン」「コンドロイチン」「ヒアルロン酸」などの健康食品が数多く市場に出回って人気となっています。

 そこで、今回は「グルコサミン」について解説します。なお、 「コンドロイチン」 については第2回で解説していますので、そちらもぜひ、参考にしてみて下さい。

 

二つのグルコサミン

 

 グルコサミンは、その名前の通り「グルコース(糖)」に「アミノ基」が付いた構造をしている糖の一種です(飲めば膝がグルグルまわるからグルコサミンと呼ばれているわけでは決してありません)。エビやカニなどの甲殻類の殻や動物の皮膚や軟骨に多く含まれています。 (とし) をとるにつれて、膝の軟骨が減ってしまうことにより膝関節痛の原因となることから、その成分の一つであるグルコサミンを摂取することで、痛みが和らぐと考えられています。健康食品ではエビやカニなどの甲殻から得られるキチンを塩酸などで分解して作られたものが利用されます。グルコサミンは欧米では医薬品成分として用いられていますが、日本では、あくまで食品成分として扱われています。実は、グルコサミンには主に二つの化学形態があり、一つは「塩酸グルコサミン(グルコサミン塩酸塩)」、もう一つは「硫酸グルコサミン(グルコサミン硫酸塩)」です。

 

グルコサミンは効果があるの?

 

 この2種類のうち、どちらの方が効果があるのでしょうか。一般的には「塩酸グルコサミン」に比べ「硫酸グルコサミン」の方がその効果は高いと言われています。

 しかしながら、関節痛に対するグルコサミンの効果を検討した報告を見てみると、塩酸グルコサミン、硫酸グルコサミンいずれにおいても、痛みの緩和に効果があったという報告と、効果はなかったという報告の両方があります。つまり、どちらのグルコサミンにおいても、「誰が」「どのくらいの量」「どのくらいの期間」利用したかによって効果が得られる場合もあれば得られない場合もあるということを示しています。結局のところ、どちらのグルコサミンかをこだわる必要はなく、それより重要なことは、これらの報告は全て品質のしっかりしたグルコサミンを利用した結果であるということです。

 健康食品では、製品の品質も様々で、また、いろいろな成分も一緒に入れられているため、効果が得られるかどうかは使ってみなければわからないのです(品質については、GMPマークを目安にしましょう)。また、飲んだらすぐに効果が得られる訳でもありません。そのため、グルコサミン製品を利用する場合は、1か月ぐらいをめどに、痛みが軽減しているようであれば継続して利用し、効果が得られていない、もしくはよくわからないようであれば、それ以上、飲み続けても効果は期待できませんので、利用を中止してください。

 

機能性表示食品であっても効果は限定的

 

 もしかしたら、すでに利用している人もいるかもしれませんが、グルコサミンを関与成分とした機能性表示食品もすでに売られています。しかしながら、消費者庁へ届けられている製品情報を見ると、その有効性の評価は、学術論文を収載している国内外のデータベースで検索されてきた「グルコサミン摂取によるヒザ関節機能の増進を評価した論文」126報のうち、1報のみで行われています。ただし、このこと自体は一定の基準(明らかな疾病・患者を対象としたもの、動物実験、湿布剤によるもの、などは除外)のもと、適正な段階を踏んで論文を絞り込んでいるので、問題はありません。

 問題なのは、これだけ人気がある成分であっても、1報しか評価に用いることができず、果たしてこの結果が皆さんにも当てはまるかどうかわからないということです。また、このような試験では当たり前のことですが、グルコサミンを摂取して効果があったという結果であっても、摂取したすべての人に効果があったということはないのです。つまり、摂取していない集団の平均値に比較して、摂取している集団の平均値で効果が認められていても、個々で見た場合、摂取している集団の中でも、効果が得られた人もいれば、効果が得られない人もいるのです。つまり、機能性表示食品であっても万人に効くものではなく、効果が得られる人もいれば、得られない人もいるということをしっかり認識しておきましょう。機能性表示食品を利用して効果が得られなかった人は、医療機関で診てもらうようにしましょう。

 話が少しそれますが、「機能性表示食品」を知っている、すでに利用している人もいるかもしれませんが、まだ知らない人も多いと思います。次の第8回(3月22日掲載予定)では、この「機能性表示食品」を中心に解説しますので、ぜひ、参考にしてください。

 

ワルファリンとの併用には注意

 

 グルコサミン製品の利用をする際にまず気を付けなければならないのはアレルギーです。前述したように、健康食品に利用されるグルコサミンはエビ・カニの甲殻から製造されることが多いため、場合によっては、エビ・カニに含まれるアレルゲンが混入し、エビ・カニに対してアレルギーのある人が摂取した場合には、アレルギー症状を起こす可能性があります。また、グルコサミンを含んだ製品の利用により肝機能障害をもたらしたという報告もあります。

 薬との相互作用も注意しなければなりません。それほど報告が多いわけではありませんが、グルコサミンの入った製品をワルファリンと併用することによりINR値(国際標準比といい、血液の固まりやすさの指標)が上昇したという報告が何例かあります。ただし、これらの製品にはグルコサミン以外の成分も入っているため、グルコサミン単独で同様の症状が起こるかはわかりません。実際に、グルコサミン製品の多くにはコンドロイチンも含まれており、グルコサミンではなくコンドロイチンの副作用かもしれません(第2回 コンドロイチンを参照)。つまり、実際に売られているグルコサミンの製品は、グルコサミン単独で出来ているわけではなく、コンドロイチンをはじめ様々な成分が一緒に入っている製品がほとんどですので、ワルファリンとの併用は避けた方がいいでしょう。

 また、ワルファリン以外のお薬についても、相互作用を起こすかどうかわかっていませんので、基本的には併用しないことをお勧めします。もし併用する場合には、医師・薬剤師に相談した上で利用するようにしましょう。

 

 グルコサミンの安全性・有効性に関する科学的根拠は以下のサイトを参照してみてください。

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報サイト

 (国立健康・栄養研究所 千葉 剛)

 

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国立健康・栄養研究所

国立健康・栄養研究所(健栄研、東京都新宿区)は、国民の健康の保持・増進に関する調査研究、栄養や食生活に関する調査研究等を行う機関。1920年に前身の機関が内務省に創設されて以来、国民の健康・栄養に関する調査研究に従事し、近年は「健康食品」の安全性・有効性に関する調査研究や情報提供も行っている。2015年4月に「医薬基盤研究所」(基盤研、大阪府茨木市)と統合し、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(略称:医薬健栄研)が設立され、現在はその中の組織として位置づけられている。

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