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妊婦の旅行、体調急変注意…かかりつけ医に事前相談
妊娠中の旅行が、「マタ旅(マタニティー旅行の略)」などと呼ばれ注目されているが、旅先で体調が急変する例もある。旅行に行く場合は、事前に必ず医師に相談するなど、細心の注意を払いたい。
大手宿泊予約サイト「るるぶトラベル」では、妊婦向けのプランがある施設の掲載件数が2012年度の70件から、15年度は162件に増えた。サイトを運営するJTB(東京)の店舗でも、「妊婦が泊まれる施設を探してほしい」との相談が増えているという。
同社広報担当の神山百合子さんは、「以前は妊娠中は旅行を控える傾向にあったが、ここ数年、『出産前の記念に』と旅行する妊婦は増えている。施設側も需要を見込んで『マタ旅』向けの専用プランを次々企画している」と話す。
しかし、妊婦の旅行は、リスクも伴う。
千葉県内の30代女性は昨年11月、妊娠中に静岡県内に家族旅行に出かけた際、突然出血して同県内の病院に駆け込んだ。陣痛が始まり、そのままその病院で出産した。
女性は当時、妊娠25週で、いわゆる「安定期」だったが、早産になり、産まれた子は1000グラムに満たない未熟児だった。旅行の2週間前の妊婦健診では、何の異常も見られなかったという。
妊娠5~7か月(妊娠16~28週)頃は「安定期」と呼ばれる。妊娠初期のつわり症状などが落ち着き、少し活発に動けるようになる時期だ。
だが、沖縄県立中部病院(同県うるま市)産科医師の中沢毅さんは「妊娠中は体調が急変することがある。どんな妊婦にも、旅行は積極的に勧められない」と話す。
同病院では04年1月~14年7月、沖縄県内を旅行中の妊婦301人を救急患者として受け入れた。そのうち75人が入院し、33人は緊急手術した。中には、そのまま出産した人や流産した人もいた。中沢さんは「長期入院になれば、経済的にも精神的にも大きな負担になる」と注意を促す。
妊婦の旅先でのトラブルを研究したことがある、佐野産婦人科医院(千葉県浦安市)の院長、今野秀洋さんは「妊娠35週以降の妊婦、切迫早産や切迫流産の診断を受けた妊婦は旅行はやめてほしい」と話す。そのほかの妊婦が旅行に行く際は、「必ず事前にかかりつけ医に相談を」と呼びかける。
妊娠中に旅行する場合、どんな点に注意すべきか。早めに医師に旅行計画を伝え、移動手段や行程などの助言をもらう。万が一に備え、旅行先の病院を調べておくことも必要だ。
自家用車など狭い空間で長時間座っていると、特に妊婦は血流が悪くなりやすく、体に負担がかかりやすい。旅行は長距離の移動や渋滞を避け、約1時間おきに休憩を取るなど、ゆとりを持った行動を取るように心掛ける。また、風邪をひいたり、おなかが張ったりするなど体調が悪ければ、旅行を中止する決断も必要だ。
妊娠中に旅行に行く際の注意点 |
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・早めにかかりつけ医に旅行計画を伝え、行程や移動手段などの助言をもらう ・事前に旅行先で受診できる病院などを調べておく ・なるべく長距離の移動や渋滞を避け、約1時間おきに休憩を取るようにする ・保険証と母子手帳は常に携帯する ・体調が悪ければ旅行を中止する (今野さん、中沢さんの話を基に作成) |
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