文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

知りたい!

ニュース・解説

離島医師を育む(下)一人診療、原点を再確認

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
離島医師を育む(下)一人診療、原点を再確認

患者の古賀さん(右)の耳元で話しかける診療所医師の村田さん(沖縄・渡嘉敷島で)

id=20160222-036-OYTEI50012,rev=3,headline=false,link=true,float=left,lineFeed=true

  ◇沖縄・渡嘉敷島に赴任

 東西1000キロ、南北400キロにわたり島が点在する沖縄県。県内39の有人離島のうち、20か所に公立の診療所がある。診療所の医師は、地域にただ1人の医師として、島民の健康を守っている。

 那覇市から西に約30キロ、人口700人弱の渡嘉敷島(沖縄県渡嘉敷村)の県立診療所で働くのが、村田祥子さん(31)だ。那覇市出身。小児科医を目指して自治医大で学び、卒業後、県立中部病院(同県うるま市)で研修を積んだ。

 渡嘉敷島に赴任したのは、2014年4月。研修や観光で訪れ、穏やかな雰囲気と温かい島民の人柄にひかれ、勤務を希望した。

 島の診療所は、医療機器も医薬品も限られる。診療所にいるのは、村田さんと看護師、事務職員の3人。専門医の診療が必要な患者の紹介先探しや、病院への連絡業務から診療所の掃除まで何でもやる。負担は大きいが、「患者との距離が近く、人間対人間として接することができ、医療の原点を再確認できるのが魅力」と話す。

  ◇骨折や傷の処置も

 「薬は飲みにくくないですか」

 今月上旬のある日、村田さんは、耳が遠い古賀静子さん(87)にゆっくりと話しかけた。腎臓病や高血圧などのため月に1度、受診する古賀さん。腎性貧血を防ぐ注射を打ち、血圧の薬を処方する。自転車で転んだという足の傷の処置も手際よく済ませた。

 患者は乳幼児から高齢者まで幅広い。かぜや糖尿病などの病気から、骨折や傷口の縫合といった外科処置まで一人で診る。島の保健師や役場の職員と毎月連絡会を開き、妊婦の健康状態の把握や、子どもの予防接種の日程調整などの仕事もある。

  ◇経験積み「島医者」に

 土日や夜間も、診療所の携帯電話を手放さず、島から出ることはない。「最初の3か月は、緊張して眠れなかった」と振り返る村田さん。2か月に1度、代診医が派遣されるが、1度に取れる休みは2、3日という。

 ダイバーがかかりやすい肺に水がたまる肺水腫など、当初は離島特有の病気の診断がつかず戸惑ったことも。末期がんの90歳代の女性を、本人の希望に沿って最期を迎える直前まで島で診たことも忘れられない経験だ。

 「1人で不安も大きかったが、みんなに助けられながら『島医者』になっていった」と、振り返る。

  ◇ゆいまーるプロジェクト

 沖縄県の離島医療を支えるのが「ゆいまーるプロジェクト」だ。自治医大の卒業生らが創設した公益社団法人「地域医療振興協会」(東京)が07年、県の委託を受け、プロジェクト推進室を設置し運営を始めた。

 離島で働く医師を全国から募集し派遣する「ドクターバンク事業」や、医師への情報提供を行う「へき地医療支援」、代診医の派遣や専門医の巡回診療などを行う。室長の崎原永作さん(61)は「制約の中でも最善の医療が提供できるよう、医師を支援することが、離島・へき地医療を継続するには必要」と話す。

 村田さんは3月末で2年間の渡嘉敷島勤務を終え、中部病院で研修を続ける予定だ。目指すのは、幅広い患者を診ることができる家庭医療専門医だ。「病気だけを診るのではなく、患者の気持ちや患者の家族、その背景も含めて診る家庭医になりたい」

 (遠藤信葉)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

知りたい!の一覧を見る

最新記事