文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

知りたい!

ニュース・解説

ウンカや蚊 海外の病害虫 飛来予測…気象データなど利用し

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
ウンカや蚊 海外の病害虫 飛来予測…気象データなど利用し
id=20160219-036-OYTEI50015,rev=2,headline=false,link=true,float=right,lineFeed=true

 多くの昆虫が風に乗って海を越え、日本を訪れる。病害虫や、ウイルスを運ぶ蚊もやってくるため、専門家は飛来予測に取り組んでいる。

 体長4ミリほどのセミの仲間「ウンカ」は毎年、梅雨前線の北上とともに現れ、冬になると姿を消す。イネの茎に針状の口を刺して養分を吸い、イネを枯らしたり病気を広めたりする。繁殖力が強く、2013年には九州など西日本を中心に被害額が105億円に上った。

 これまで気象庁の観測船が太平洋や東シナ海の海上でウンカの集団が移動するのを確認しており、ベトナム周辺から中国を経由、日本や台湾、韓国に飛来するルートが明らかになってきた。中国から九州まで、約1400キロ・メートルを24~36時間かけて移動すると考えられている。

 日本や韓国に渡ったウンカは冬に死に絶えるが、中国にとどまった個体はベトナムなどに戻って越冬、子孫を残す。熊本県 合志こうし 市の農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)九州沖縄農業研究センターの大塚彰主任研究員は、「移動は風任せで一部は死滅するものの、基本的には、イネの成長が盛んな時期を狙って各地に広がる戦略だ」と話す。

 大塚さんらは04年、日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)とウンカの飛来予測システムを開発した。基になったのは、放射性物質の拡散予測システムWSPEEDIだ。中国南部を出発する時期や、風向き、気温などのデータを組み合わせ、ウンカが広がる様子を計算する。

 14年には、日本に飛来する3種類のウンカのうち、やや北寄りの経路をたどる少数派の1種も予測システムの対象に含めるなど改良を重ね、現在、的中率は80%程度まで高まった。

 日本脳炎ウイルスを媒介する体長5ミリほどの蚊「コガタアカイエカ」も、同じように海外から飛来しているらしい。日本脳炎は、日本ではワクチン接種が奏功して年間の患者数は10人以下だが、世界では約7万人に上り、うち1~2万人が死亡していると推計される。

 国立感染症研究所の沢辺京子昆虫医科学部長らのグループは、コガタアカイエカは遺伝子のタイプにより日本固有の「日本型」と、アジアに広く生息する「アジア型」に大別できることを確認した。09~10年に東北から九州にかけて調べたところ、7~8月に佐賀市と長崎県五島市などで採集した蚊の約1割がアジア型だった。日本型は国内で越冬するが、アジア型は海外から飛来しているらしい。

 ウイルス学が専門の長崎大熱帯医学研究所の森田公一教授は「日本脳炎ウイルスは昔から頻繁に海を渡り、日本に入ってきていた」と推測する。

 コガタアカイエカは、最長38時間飛び続けられることが実験で分かっている。沢辺さんは「コガタアカイエカの飛来をコンピューターで予測するシステムを開発し、アジア全域で日本脳炎の予防につなげたい」と話す。

日本が終着点?

 体長7ミリほどのハエ「ミカンコミバエ」は、かんきつ類などに産卵し、幼虫が果実を食べてしまう。国内では1986年に根絶されたが、現在も台風の通過後などに奄美大島や沖縄で成虫が見つかることがあり、台湾やフィリピンなどから飛来しているとみられる。

 「ハスモンヨトウ」というガも、幼虫が大豆や野菜類などの葉を食べる害虫だ。風の解析から、中国などから飛来していると考えられている。

 体長1~3ミリの「ヌカカ」は、ウイルスを媒介し、牛で流産や死産を引き起こす。中国南部や東南アジアが発生源の可能性が高く、気象データを使った飛来経路の解明が進められている。

 大塚さんは、「日本はアジアの東端で、その先は太平洋が広がりアメリカまでまとまった陸地はない。風に乗った昆虫がたどり着く『終着点』なのかもしれない」と話している。

  <WSPEEDI(ダブルスピーディ)>

 原子力事故などで放射性物質が風に乗って拡散する様子を世界規模で予測するシステム。1月の北朝鮮の核実験でも放射性物質の放出を仮定して予測し、大気中の試料採取などに役立てられた。福島第一原発事故では国内版のSPEEDIが使われた。昆虫の飛来予測では、虫が自ら羽ばたいて動くことも計算に入れている。

 (小日向邦夫)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

知りたい!の一覧を見る

最新記事