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知って安心!今村先生の感染症塾

コラム

インフルエンザが全国で「警報レベル」に

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 インフルエンザが、全国的な流行を示す「警報レベル」となっています。今回は、いろいろなサイトで公開されている情報をもとに、インフルエンザ流行の現在の状況について解説してみたいと思います。インフルエンザのように急速に流行が拡大する感染症では、流行状況は時間の経過とともに刻一刻と変わっていきます。この記事は、原稿を執筆している2016年2月18日時点の情報をもとにまとめました。賞味期限は1~2週間……。ぜひホットなうちにお読みください。

インフル流行が警報レベルに

『インフル、初の警報レベルに…感染が急速に拡大』読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/national/20160215-OYT1T50059.html

インフルエンザが全国で「警報レベル」に

 インフルエンザは、全国的に警報レベルとなっています。まずは、インフルエンザ流行レベルマップをご紹介しましょう。これはインフルエンザを調査するために決められている全国約5000の医療機関を受診した患者数をもとに、保健所単位に流行状況をまとめた地図となっています。この記事を執筆している2月18日の時点では、全国が警報レベルとなり、真っ赤な地図となっています。

[インフルエンザ流行レベルマップ]
http://www.nih.go.jp/niid/ja/flu-map.html

 次に、インフルエンザによる学級閉鎖・学年閉鎖の状況を、全国都道府県別にまとめた資料をご紹介しましょう。2月18日時点における最新版は、ページの下の方にある第23報で、2月1日~7日の期間における状況をまとめた表となっています。インフルエンザが警報レベルとなったことで、学校などでも学級閉鎖等が増えています。わずか1週間で、全国約6000(報告では5995)の園や学校から、休園・休校・学年閉鎖・学級閉鎖などの報告がありました。

[インフルエンザ様疾患発生報告(学校欠席者数)]
http://www.nih.go.jp/niid/ja/flu-flulike.html

 これらの情報は、報告された数値を集計して発表するまでに、1~2週の期間を必要としています。したがって、このようなニュースがテレビや新聞のニュースでとりあげられた時には、すでに少し前のデータによる報道であることも知っておきましょう。多くの感染症においては、これくらいの時間差は問題となりません。しかし、インフルエンザのように急速に広がる感染症では、たった1週間でも状況が変わっていることもあるのです。

東京におけるインフル流行状況

 では、東京の流行状況も確認してみましょう。

[インフルエンザの流行状況(東京都2015―16年シーズン)]
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/flu/flu/

 このページの2番目にある[都内流行マップ(保健所別)]は、先ほど説明した全国の流行レベルマップと同様に、真っ赤な地図となっていることがわかります。1番目の流行グラフでは、赤く濃い線が今の流行状況を示しています。このグラフをみると、そろそろ流行のピークだということがわかります(もしかすると、すでにピークを越えているかもしれません)。

薬の処方で調べた流行状況

 全国の薬局で処方されている抗インフルエンザ薬の処方数をもとに、インフルエンザの流行状況を調査しているページをご紹介しましょう。これは、タミフルなどの抗インフルエンザ薬を使いすぎている、日本だからこそ可能な調査だともいえます(自慢できるものではありません。とほほ…)。 日報で報告されているので、リアルタイムな変化を確認することができるのがポイントです。毎日、多くのインフルエンザ薬が処方されていることがわかりますね。

[薬局サーベイランス日報:抗インフルエンザ薬によるインフルエンザ推定患者数]
http://prescription.orca.med.or.jp/syndromic/kanjyasuikei/flu/2015_16/index.html

地域によって異なる流行状況

 全国で警報レベルとなっていても、それぞれの地域における流行状況には、かなりバラツキがあります。この記事を読んでいる人の中にも、まわりの人が次々とインフルエンザにかかっている方もいれば、そんなに増えていないという方もいるはずです。インフルエンザは、小さな地域での流行を繰り返しながら、全国に広がっていきます。各地域でみれば、早く流行のはじまったところもあれば、流行開始が遅かったところもあるのです。今は、すでにピークを越えようとしている地域、ちょうどピークの時期となっている地域、そして今から流行のピークとなる地域が、全国で混在している状況です。まわりで流行していないからと、安心してはいけません。その地域は、これから流行する可能性もあるからです。

流行しているインフルの型は?

 今は、どんなインフルが流行しているのでしょうか。ここでは、国立感染症研究所からの報告を参考に、現在の流行状況を確認してみましょう。以下のページのグラフは、全国で診断されたウイルスの一部を検査して、インフルエンザの型を調べた結果を示したものです。あくまでも一部のウイルスを検査したもので、全国で発生している全てのウイルスを調査したのではありません。しかし、今年の流行の「傾向」を知るための参考にはなります。

[週別インフルエンザウイルス分離・検出報告数]
http://www.nih.go.jp/niid/images/iasr/rapid/inf2/2016_6w/sinin1_160214.gif

 冬に全国で流行するインフルエンザは、大きくA型とB型の2つがあります(実は幼児を中心に感染する「C型」もあるのですが、冬期の流行に影響を与えることはありません)。A型には多くの種類があるのですが、その中でも「A香港型:H3N2」と「Aソ連型:H1N1」の2種類が大きな流行を繰り返していました。そして、2009年に新型インフルエンザとして世界で大流行した「H1N1pdm09」が、今は季節性インフルエンザのひとつとして加わっています。B型のインフルエンザは、「山形系統」と「ビクトリア系統」の2種類に分けられています。

 改めて、ご紹介したグラフをみてみましょう。現在は、09年に新型として流行した「H1N1pdm09」が多く、次いで「B型」、そして「A香港型:H3N2」の順となっていることがわかります。例年は、冬の後半から春先にかけてA型が減少してきて、それに変わるようにB型が増えるというのが典型的パターンです。しかし今季は、インフルエンザの流行入りが遅れたため、A型の流行が年明けにずれこみ、B型と重なっているようです。

 また、インフルエンザは、まわりの人にうつりながら広がっていくので、狭い地域では同じ型が増える傾向があります。したがって、全体ではA型が多くても、自分のまわりではB型ばかりということもあるでしょう。以下の都道府県別の地図で示されたインフルエンザウイルスの型をみても、地域によって流行のバラツキのあることがわかります。

[都道府県別インフルエンザウイルス分離・報告状況]
http://www.nih.go.jp/niid/images/iasr/rapid/inf2/2016_6w/sinin4_160214.gif

今年の傾向は?

 インフルエンザの症状は、インフルエンザの型だけでなく、かかる人の基礎疾患(呼吸器系などの他の病気の存在)、これまでインフルエンザにかかった経験の有無、ワクチンの接種、そして日々の体調などによっても異なります。そして今年は、「H1N1pdm09」、「A香港型:H3N2」、「B型」が、同じタイミングで増えています。今年のインフルエンザの症状については、一定の傾向はないというのが正直なところです。また、流行する年によっては、タミフルなどの薬が効きにくい耐性ウイルスが問題となることがあります。しかし、今のところ入っている情報では、薬剤耐性についての大きな問題は生じていないようです。

休みやすい環境づくりも大切

 学校保健安全法では『発症したあと5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで [注:保育所は解熱後3日]』を自宅療養の期間としています。大人については、このような法律上の規定はありません。したがって、とりあえず子どもの基準に合わせて、就労停止の期間を説明されていることが多いと思います。インフルエンザにかかった時に無理して登校・出勤すると、かえって感染を広げてしまいます。調子が悪い時に休むことができるという、環境づくりも大切です。

安心しないで予防の継続を

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 ・もうかかった・・・と安心しない
 ・ワクチン打ったから大丈夫・・・と安心しない
 ・まわりで流行していない・・・と安心しない

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 インフルエンザが警報レベルの流行となっている時には、人混みの中などで感染する機会も多くなります。そして、病院やクリニックの待合でさえも、感染してしまう可能性があります。インフルエンザの流行は、まだしばらくは続きます。A型、B型、耐性ウイルス・・・どれであっても、手洗いなどの予防策は効果が期待できます。流行がピークを越えてきても、気を緩めずに乗り越えていきましょう!

 最後に、昨年度の「ゆるキャラグランプリ」をとった「出世大名家康」くんのインフルエンザ予防ポスターをご紹介しましょう。ちなみに、各地ゆるキャラとコラボした啓発ポスター(厚労省作成)の一覧は、こちらのページでみることができます。

『マメゾウくん&アズキちゃん×各地キャラクターとのコラボ・ポスタ-』
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/keihatu-collaboration.html

id=20160218-027-OYTEI50020,rev=6,headline=false,link=true,float=left,lineFeed=true

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知って安心!今村先生の感染症塾_201511_120px

今村顕史(いまむら・あきふみ)

がん・感染症センター都立駒込病院感染症科部長

石川県出身。1992年、浜松医大卒。駒込病院で日々診療を続けながら、病院内だけでなく、東京都や国の感染症対策などにも従事している。日本エイズ学会理事などの様々な要職を務め、感染症に関する社会的な啓発活動も積極的に行っている。著書に『図解 知っておくべき感染症33』(東西社)、『知りたいことがここにある HIV感染症診療マネジメント』(医薬ジャーナル社)などがある。また、いろいろな流行感染症などの情報を公開している自身のFacebookページ「あれどこ感染症」も人気。

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1件 のコメント

とても参考になりました

幸福の木の花

子供が通ってる幼稚園でもインフルエンザB型が流行っています。今だからこそホットなうちに 読めるとても参考になるものでした。 つい何週間前は注意報...

子供が通ってる幼稚園でもインフルエンザB型が流行っています。今だからこそホットなうちに
読めるとても参考になるものでした。
つい何週間前は注意報、今は警報レベルまでに達しました。
親としてははらはらです。
が、最後の締めくくりの三つの言葉は私達の心に響きました。
ありがとうございました。

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