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ペットと暮らす特養老人ホーム…犬や猫から元気と癒やし

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認知機能改善の効果も

ペットと暮らす特養老人ホーム…犬や猫から元気と癒やし

ダックスフントを笑顔でなでる入所者(横須賀市のさくらの里山科で)

 犬や猫と一緒に暮らせる特別養護老人ホームが神奈川県横須賀市にある。入所者が連れてきたペットのほか、施設が保健所などから引き取っており、入所者に明るさとぬくもりを与えている。(原隆也)

 社会福祉法人・心の会が運営する「さくらの里山科」では、100人の入所者のうち20人が犬5匹と、もう20人が猫10匹と暮らしている。記者が訪れた1月中旬、共用スペースでくつろいでいた女性が膝の上に抱えたダックスフントに「いい子だねえ」と声をかけながら笑顔でなでていた。

 理事長の若山三千彦さん(50)によると、犬や猫は4年前の開所時から受け入れている。

 施設ができる前、心の会のデイサービスを利用していた独り暮らしの男性が別の施設に入所することになった。引き取り手がなかった男性の犬は保健所に預けなければならなかった。男性は半年たたないうちに亡くなったという。「ペットもかわいそうだが、人生の最後に大切な家族を失い、後悔しながら亡くなるのはおかしい」(若山さん)との思いから、ペットと暮らせる特養ホームを思い立った。

 自分の年齢から犬や猫を飼うことを諦めた人にも喜んでもらおうと、飼い主が亡くなるなどして引き取り手のない犬猫をボランティアを通じて引き取っている。福島第一原発事故の影響で現地に取り残された犬や猫も引き取った。若山さんは「ペットショップから買うという発想はなかった」と振り返る。

 餌やりなどの世話には施設のスタッフがあたるほか、地元のボランティアが毎日朝夕、犬の散歩に協力。トレーナーによるしつけもしている。

 アレルギーがあったり、動物が苦手な入所者にも配慮し、犬と暮らす入所者、猫と暮らす入所者、それぞれスペースを分けている。

 犬や猫と暮らす入所者には、認知症で家族の名前を忘れ、会話もままならなかった人が、犬や猫の名前を覚えたり、「この子にごはんをあげて」と気にかけたりするようになるなど認知機能の改善が見られるようになった。また、犬や猫をなでる動作を繰り返すことで、関節のこわばりが和らいだという。

 ポメラニアンの「チロ君」と入所した山口 宜泰よしひろ さん(82)は「みんながかわいがってくれて(チロ君が)なじんでくれている。一緒に過ごせて最高です」と話す。猫の「佑介君」と入所した澤田 富與子ふよこ さん(71)も「他の人に(佑介君を)託すことは考えられなかった。こういう施設が増えることを望みます」と語る。

 若山さんは「介護が必要になったからといって、高齢者がペットを飼うことや、旅行やショッピングなどを諦めずに楽しむことが大切だ」と力を込めた。

 吉備国際大(岡山県 高梁たかはし 市)の 太湯ふとゆ 好子特任教授(老年看護学)は「介護を受ける側は『してもらっている』という感情を抱きがち。動物には『かわいがってあげる』と自分が優位に立て、リフレッシュにつながる」と指摘している。

 高齢者とペット 
 高齢化社会の進展に伴い、高齢者がやむを得ずペットを手放さなければならないケースも増えている。東京都で2014年度に飼い主から引き取られた犬猫は約200匹。飼い主が手放した理由は「高齢化」が最多の25%、次いで「病気」が24%、「死亡」が18%だった。
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