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ボンジュール!パリからの健康便り

医療・健康・介護のコラム

芸術の国で育まれたアート・セラピー、医学部でも人材養成

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 フランスのアート・セラピーの起源は、いつごろに遡るのだろうか。

 1950年頃、最初の造形芸術によるセラピーが始まった。しかし、実は1800年には、すでに精神科医フィリップ・ピネルによる音楽療法が始まっている。フィリップ・ピネルは、イギリスのアート・セラピーに影響を受けて、その当時、ひどい環境におかれていた精神病棟の患者を解放し、合唱や楽器の演奏などを行うセラピーを開始した。その後、セラピーは絵を描いたり、彫刻をしたりといった造形芸術から、ダンスや演劇などにも広がっていき、今では陶芸やサーカス、作詩などあらゆる分野に及んでいる。

 1980年代になり、大学の医学部でもアート・セラピスト養成クラスが設立され、卒業者には芸術療法のディプロマ(卒業証書)が授与されることになった。大学の他にも、国家認定のプライベートの養成所があり、認定書などを出している。アート・セラピストが加入する団体や協会もある。音楽療法についてはフランス音楽療法連盟があり、74年にはパリで初めての音楽療法世界会議が開催された。

 アート・セラピーは小グループまたは個別のセッションで、病院や医療機関またはプライベートのアートスタジオで実施されている。インターネットで調べてみると、パリ市内にもいくつかのプライベートスタジオがある。

 セラピーは、ケースによって1~3年程の期間が必要とされる。1回のセラピーは1~2時間程で、1回の費用は材料費などによって30~70ユーロと異なる。保険からの還付金はなく、すべて自費となる。あらゆる症状にアート・セラピーが効果的というわけではない。一部の症状には適さないことも認知されている。

 乳がんを患い、手術後の抗がん剤治療中にアート・セラピーを選んだ女性の記事を読んだことがある。

 手術後の治療にとても不安で、彼女には何か助けが必要だった。自分の心の不安と深い悲しみを追放するための何かが必要だった。そんな時、アート・セラピーの存在を知る。何回かのセッションを経て、粘土で何かを作るようにと言われた。やってみると、自分が想像していた以上の悲しみ、苦しみ、怒りが自分の内から込み上げてきた。創造したものは、それを象徴しており、それを目の前にした彼女は泣き崩れた。その後、6週間目ほどから次第に自分の心から解放されていくのを感じ始める。心がほどけて解放されていく。

 私たちが日常、何げなくやっていることも、もしかしたら自身のセラピーとなっているのかもしれない。自然と自分に必要なセラピーを自分自身で行っているのかもしれない。

■淡雪や 逢瀬の後の 肌に落つ

芸術の国で育まれたアート・セラピー、医学部でも人材養成
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ボンジュール!パリからの健康便り_古田深雪_顔120px

古田深雪(ふるた みゆき)

1992年渡仏。
1997年より医療通訳として病院勤務。

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