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運転やめたらうつになる? 高齢者―4カ国16研究から

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運転やめたらうつになる? 高齢者―4カ国16研究から

抑うつ症状が2倍

 「年なんだから、もう運転やめたら?」―運転席に乗り込む高齢の親に、こう声をかける人も少なくないはず。しかし、車の運転をやめたせいでうつになる可能性があるとしたら、そう簡単には言えなくなるかもしれない。米コロンビア大学医療センターのスタンフォード・チフリ氏らは、4カ国で行われた16研究を分析したところ、運転を止めると気分の落ち込みや意欲の低下などの抑うつ症状が現れる危険性が約2倍になったと、1月19日発行の米国老年医学会発行誌「Journal of the American Geriatrics Society」( 電子版 )に報告した。

健康状態が全体的に悪化

 チフリ氏らは、医学分野の文献が収録されているデータベースを検索し、運転中止が高齢者の心身の健康に及ぼす影響を検討した16件の研究論文を抽出した。16件中12件が米国、2件がオーストラリア、残り2件がフィンランドとクウェートの研究だった。ほとんどの研究が65歳以上または70歳以上の高齢者を対象としていたが、55歳以上の中高年者を対象とした研究も2件含まれていた。

 これらの研究を調べたところ、運転をやめることで全体的な健康状態が悪化したり、体の機能などが衰えたりするという報告のほか、長期療養施設に入所しなくてはならない状態となるリスクを5倍近く上昇させるという報告もあった。

 また、運転をやめることと抑うつ症状の関連を検討していた5件の研究論文からは、運転をやめた高齢者では、そうでない高齢者よりも約2倍、抑うつ症状を起こしやすいことが分かった。

健康悪化と事故、どちらを取るか…

 チフリ氏らは「高齢者が車の運転をやめる際には、健康状態への悪影響も考慮すべき」と結論している。

 ただ、高齢ドライバーの交通事故が増加しているのも事実。日本では2014年に施行された改正道路交通法により、医師が認知症患者に運転中止に関する説明をしたり、診察結果を公安委員会に任意で届けたりすることができるようになった。研究で指摘されたような悪影響があっても、認知機能や判断力が低下したと感じるならば、やはり運転をやめるべきなのかもしれない。

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kenkohyakka

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