気になる社会保障Q&A
医療・健康・介護のニュース・解説
Q 高齢者虐待 なぜ起こる
介護職員・家族にストレス
Q 高齢者施設で、お年寄りが職員から虐待を受けたとニュースで聞いたよ。
A 川崎市の有料老人ホームで、職員が入居者の頭を手でたたいたり、暴言を吐いたりしていたことが昨年発覚し、大きな問題になったばかりだね。
Q 虐待って、どんなことを言うの?
A こうした暴行や不当な身体拘束などは「身体的虐待」だ。東京都北区の高齢者向けマンションでも、体をベッドに縛り付けたり、ベッドから下りられないよう柵で囲ったりしていたなど、高齢者95人が虐待を受けていたと同区が昨年、判断した。ほかに、悪口を言うなどの「心理的虐待」、年金や預金を勝手に使うなどの「経済的虐待」もある。食事を用意しないことや、入浴させないことも虐待だよ。
Q どれもひどいね。どのくらい起きているの。
A 厚生労働省の調査によると、2013年度に、特別養護老人ホームなどの施設内で起きた虐待は221件(被害者402人)で、家庭内の虐待は1万5731件あった。虐待の発見者に自治体への通報を求めた高齢者虐待防止法に基づき、自治体が虐待と判断した件数を集計したものだ。自治体が把握しきれないものも多く、「氷山の一角」と指摘されている。
Q 家族なのに、どうして虐待してしまうのかな?
A 介護疲れやストレスがたまりやすいほか、介護者の障害や病気、家庭の経済的困窮も背景になっている。調査では、加害者の4割が息子で、夫が2割を占めた。特に男性は、相談相手が身近におらず、一人で抱え込んで精神的に追い込まれてしまいがちだ。被害者の半数は認知症の人で、コミュニケーションがうまく取れず、負担が大きくなりやすいこともある。
Q じゃあ、施設内では、なぜ起きるの?
A 介護職員の教育や知識、介護技術に問題があったケースが最も多い。職員がストレスをためがちで感情のコントロールができないこと、虐待を助長する職場環境、職員間の関係性の悪さなども要因だ。職員が慢性的に不足し、経験の乏しい職員が多いことも背景にある。
Q どうすれば防げるの?
A 介護職員への教育を充実させ、在宅介護を担う家族への支援を強化する必要がある。認知症への理解を深めたり、ケアの方法を学んだりする機会を設けることも大切だ。家庭内虐待の半数は被害者と加害者だけが同居しているケースで、特定の一人に負担が集中し、ストレスが大きくなりやすい。介護サービスの利用を増やしたり、ほかの介護家族と交流できる機会を設けたりして、介護者に多様な支援を届け、虐待の芽を摘むことが重要だね。(野口博文)
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