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宋美玄のママライフ実況中継

医療・健康・介護のコラム

長崎大・産婦人科医の問題発言に思う 医師の先入観押しつけるな

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長崎大・産婦人科医の問題発言に思う 医師の先入観押しつけるな

初予防接種。ロタウイルスのワクチンを飲んでいるところです

 先週、生後まる2か月を迎えた息子に予防接種を受けさせてきました。ヒブ、肺炎球菌、B型肝炎、ロタの4種類です。居住する区は予防接種費用の助成が手厚く、ロタの一部を負担したのみで、他は無料で打つことができました。本当に助かります。

 寒い日が続いていますが、娘のパワーは家では発散しきれません。ベビーカーに息子を乗せて公園に遊びに行ったところ、娘は元気に走り回って、しまいにはコートを脱ぐくらい体が温まっていたようですが、立って見ている親は凍えそうになりました。息子はベビーカーのフットマフが十分あたたかかったようですが、泣いた時に抱き上げると寒そうなので、公園の中をぐるぐるベビーカーを押してあやしました。幼稚園に迎えにいった後も園庭でそのような感じになるので、風邪を引くのは時間の問題ではないかとおびえています。

 先日の報道です。

「将来、彼氏も結婚もできない」長崎大病院医師が知的障害患者に不適切発言
 長崎大学病院産婦人科の女性医師(50歳代)が昨年7月、重度の知的障害のある長崎市の女性患者(24)に「将来、彼氏も結婚もできない」などと差別と受け取られる発言をしていたことがわかった。翌月、母親(56)は投書で抗議したが病院側は応答せず、昨年末に母親から説明を求められ、今月14日に謝罪した。
 母親によると、医師は「生理は何のためにあると思いますか。子を産むためです。将来、結婚もできないから、妊娠・出産もできない」「彼氏もいないから、内診台の上で脚を広げることもできないでしょう」と発言。病院の聞き取り調査に対し、医師は「差別の意図はない。今すぐ結婚の予定がないならば、妊娠や出産の心配はないなどと伝えたつもりだった」と釈明したという。
 投書で抗議を受けた病院は医師に聞き取りを行い、不適切な発言と判断。医師を口頭注意処分にした。母親は「娘の存在価値を否定し、障害者への蔑視を感じてつらい。このような発言を繰り返さないでほしい」と話している。
 (2016年1月23日 読売新聞)

障害者に対してだけでない、医師の決めつけ

 報道しか情報がなく、実際のニュアンスなどは分からないとお断りしておきますが、この通りであったなら、同業者としてとても残念なニュースです。このニュースを聞いて、私が医者になりたてのころは、今よりも患者さんに対して、医師の先入観が押しつけられていたなあということを思い出しました。この報道は重度の知的障害を持つ患者さんに対しての発言で、患者さんのお母様は障害者への蔑視を感じられたとのことですが、障害を持たない患者さんに対しても女性としてのあり方を決めつけるようなことを多数、経験しました。

未婚・既婚、年齢による「判断」の差

 研修医の頃に勤めた病院では、(大切なこともたくさん教わりましたが)未婚の患者さんと既婚の患者さんでは同じ手術でも残る傷について気の使われ方が違っていました。未婚の患者さんは「これから結婚相手を見つけなければいけないので、なるべく目立たないお (なか) の切り方」で、既婚の患者さんは「その必要がないため、術者が安全に手術できることを優先したお腹の切り方」にされていました。

 また、50歳くらいになると、手術後の日常生活で気をつけることを医師や看護師が指導する際に、性生活についての指導はありませんでした。それ以上の年齢の患者さんや悪性腫瘍の患者さんに対しても同じでした。「もう年齢的にセックスはしないだろう」「がんになったのだから、そんな気にならないだろう」という考えのもとでしょう。その後、別の地域で勤務した時にも同じような考えがまかり通っているようでした。

一人一人の生活や希望に添った診療を

 今では、年齢や属性に関係なく、患者さん一人一人の生活や考えに合わせて治療を行うのが主流だと認識していますし、たとえ子供を産む希望がない患者さんや、年齢的に今後、妊娠はないだろうと思われる患者さんでも、子宮や卵巣をなるべく取りたくないという希望があれば、できるだけ希望に添った治療や手術を提案していると思います(昔は、臓器を失うことへの「喪失感」という概念があまりなく、子宮筋腫などの良性疾患の手術の際に「置いておいてもがんになるかもしれないだけだから」と、ある年齢以上になると子宮や卵巣の摘出も同時に勧めるというか、説得していました)。「性」についての意識も昔よりは高まっているのではないかと思います。

 そんなわけで、今回の報道を目にして、残念だと思うとともに、有り得る話だと思ってしまいました。人間と人間ですし、医学的に必要な治療や妥当な着地点というものはありますが、患者さん一人一人に対して先入観を持つことなく、極力傷つけることのない診療を心がけたいと思います。

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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4件 のコメント

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同感です

まま@こうとうく

まもなく出産をむかえます。 妊娠初期のころ、近所の産科にかかりました。 とにかく先生の意見を押し付ける感じが、とてもひどかったです・・・ 初期で...

まもなく出産をむかえます。
妊娠初期のころ、近所の産科にかかりました。
とにかく先生の意見を押し付ける感じが、とてもひどかったです・・・
初期で、地元に里帰りする予定が入っていたため
次回の予約はそのあとに、とお願いしたらば
「初期に旅行はおすすめしない」
「まがりなりにも望んで妊娠されたのだから」
というようなことを言われました。

他の産婦人科医の講演では初期の流産などは染色体異常など原因不明がおおく、妊婦の行動が原因とは必ずしも言えないという話をされていたので、「なんでそんなふうに言われないといけないのか」とおもいました。

また、そのクリニックではお産はあつかわないため、初期健診のみ受け付けているのですが
無痛分娩を希望して分娩できる病院を見つけるために相談したところ、
「無痛分娩なんて・・・」と否定され
「日本で乳児死亡率が低いのは無痛分娩が普及していないから」
とのコメント。

そんなこと一切きいていないのに。

ただ私が求めていた「無痛分娩を行う他の医療機関に関しての情報提供」を
まったくしてくれず、結局はすべてインターネットと電話問い合わせで、
自分で分娩できる医療機関の候補を見つけました。

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産婦人科へ 足が遠のく原因

ぷー

今回みたいなあからさまに酷い発言までいかなくても、ちょっとそれ失礼ではないだろうかと思うような発言(先入観?)が産婦人科のお医者さんって結構あり...

今回みたいなあからさまに酷い発言までいかなくても、ちょっとそれ失礼ではないだろうかと思うような発言(先入観?)が産婦人科のお医者さんって結構ありますよね。それが産婦人科から遠のく一つの原因だったりするのではないかと思います。もちろんそんな先生ばっかりではないけれど。産婦人科ってプライベートなことも関係(妊娠、出産、性生活等)してくるからかわからないけど、今回のことで自分もそのような発言を患者に対してしていないか見直すきっかけになってより良い医療提供に繋がったらいいなと思います。

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高齢出産後の健診で閉経の話…

あちゃこ

体外受精の末、13年振りに妊娠出産しました。その1ヶ月健診でまさかの閉経の話。状況的に次は無いと判断したのでしょうか。それから1年後に自然妊娠。...

体外受精の末、13年振りに妊娠出産しました。その1ヶ月健診でまさかの閉経の話。状況的に次は無いと判断したのでしょうか。それから1年後に自然妊娠。残念ながら流産となりましたが、閉経の話覚えていますか?と言いたかったです。今度は医師を変えた方がいいですかね。

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