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雅楽師 東儀秀樹さん

一病息災

[雅楽師 東儀秀樹さん]膝のがん(3)消えた死の怖さ

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[雅楽師 東儀秀樹さん]膝のがん(3)消えた死の怖さ

 宮内庁で雅楽の 楽生がくせい だった1984年、25歳の時、左膝が痛んで入院した。屈伸するとお皿が痛かった。

 母と医師が話している後をつけ、盗み聞きしてしまった。「本人には言えないが……」。医師はがんの可能性を母に伝えていた。当時、患者へのがん告知はあまりなかった。

 「若かったので、あと1年ももたないで死ぬんだろうな、と想像しました」。医師や看護師に「どのくらい生きられるか教えて」と頼んでも、「がんじゃないから」と硬い表情で微笑するだけだった。裏では、延命のため、足を付け根から切断する検討も進んでいた。

 「そんなに長くないが、死ぬまで一生懸命生き、完全燃焼しよう」。冷静になって、そう思うと、死の怖さがなくなった。曲のフレーズが浮かぶと、五線紙に書いた。お見舞いの花が絵になると思うと、スケッチブックを広げた。見舞客との時間も楽しんだ。

 「わくわくする毎日を過ごしていました。すると、医者が首をかしげる奇跡が起き、検査でがんの可能性を示す数値が下がって、がんが消えてしまった」

 数年後、再び同じ所が痛んだ。検査で、がんと思われるカゲが見つかった。医師は、膝の患部を切る手術を勧めた。「大丈夫という確信はなかったが、『しばらく様子を見よう』と決めました」。“達観”すると、がんがまた消えていった。

  雅楽師  (とう)()   (ひで)() さん(56)

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