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高層階の住人に多い心臓停止死、25階以上は生存率ゼロ

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高層階の住人に多い心臓停止死、25階以上は生存率ゼロ

カナダ研究

 素晴らしい眺望で人気のタワーマンションだが、良いことばかりではないようだ。カナダの研究グループは、マンションの高層階に住む人は低層階に住む人に比べ、心筋梗塞などで心臓が止まった後に生き延びる割合が低いとする研究結果を、1月18日発行のカナダ医師会誌「CMAJ」( 電子版 )に報告した。心停止で病院に運ばれ、生きて退院できた割合は、1~2階の4.2%に対して16階以上で0.9%、25階以上ではゼロだったという。

救急到着が遅れがち

 人口密度の高い都市部を中心に、高層マンションが次々と建設されているのは日本だけではない。この調査が実施されたカナダでも建設が進み、トロント市では2006年から2011年にかけて高層マンションの住民が13%増えたという。

 研究グループは、2007~12年にトロント市などで、心停止で病院に運ばれた8,216人を対象に調査した。

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 その結果、生きて退院できた人の割合は、1~2階の住民で4.2%(5,998人中252人)だったのに対し、3階以上の住民では2.6%(1,844人中48人)、16階以上では0.9%(216人中2人)と大幅に低下。さらに、25階以上の住民(30人)では生存者がいなかったという。

 この原因として、高層階の住民が心停止状態となった場合、救急車を呼んでも救急救命士が部屋までたどり着くまでに時間がかかり、心臓マッサージや自動体外式除細動器(AED)などの救命処置が遅れやすいことが考えられる。なお、公共施設や共同住宅などでの設置が広がっているAEDだが、この調査では近くにいた人がAEDを使用していたケースは1%に満たなかった。

「エレベーター確保」と「AED設置場所」が鍵

 では、高層階の住民の救命率を高めるにはどうしたらよいのか。研究グループは「救急救命士がいち早くたどり着けるよう、専用のエレベーターを確保する」あるいは「マンションの管理人が救急救命士の到着前にエレベーターを1階に呼んでおく」、「近くにいる人がすぐにAEDを使用できるよう、設置場所を工夫する」などを対策として挙げている。

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 一方、高層マンションがひしめくシンガポールの救急医であるシンガポール総合病院のマーカス・エン・ホク・オン氏らは、同号の論評( 電子版 )で、シンガポールでも高層階の住民の心停止例が増えていることを紹介。現在、マンション管理組合を巻き込んで救命処置の訓練を行うなどの取り組みを進めているという。

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kenkohyakka

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