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ホントはどうなの?健康食品・サプリメント

国立健康・栄養研究所

健康・ダイエット・エクササイズ

[アントシアニン]視力改善の効果には諸説あり

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 アントシアニンといいますと、私は紫キャベツを使った理科実験を思い出します。紫キャベツのしぼり汁を様々なpHの水溶液と混ぜるという実験です。赤、ピンク、紫、青、緑、黄とpHに応じて魔法のように色が変わります。酸性かアルカリ性かしか分からないリトマス試験紙よりよっぽど優秀だなと、かつて小学生だった自分はいたく感動したものです。この色調変化の原因が紫キャベツに含まれているアントシアニンという物質によるものだと知ったのは、すっかり大人になってからでした。今回は、この「アントシアニン」について解説したいと思います。

アントシアニンとは

 

 アントシアニンは化学的にはポリフェノール類に分類され、様々な野菜や果物に幅広く含まれています。身近なものですと黒豆、イチゴ、ブドウ、ナスなどの赤~紫色の部分やスミレ、朝顔などの花の色がアントシアニンによるものです。なお、アントシアニンという単一の物質があるわけではなく、わずかに化学構造が違う多数の物質を取りまとめてアントシアニンと総称しています。近年、アントシアニンを豊富に含む食品としてブルーベリーが注目されており、「目に良い」「血管を丈夫にする」などの機能性が期待されています。その仕組みとしては、ブルーベリー中に含まれるアントシアニンが持つ、体にとって有害な活性酸素を消去する働き(抗酸化作用)が重要だと考えられています。

ブルーベリーとビルベリー

 

第4回 アントシアニン

ビルベリー

 ブルーベリーにはいくつか種類があります。健康に良いとして多くの研究がなされているのはビルベリーという野生種で、一般の食料品売り場で販売されている畑で作られる栽培種とは違います。ヨーロッパでは、アントシアニン含量36%のビルベリー抽出液が規格化され、医薬品となっています。しかし、国内でブルーベリーエキス含有と表示されたサプリメントを分析した結果、ビルベリーとは異なる種類のブルーベリーを使用している可能性がある製品も見つかっています。

目に対する作用

 

 目は網膜で光を感知して脳に信号を送りますが、この作用にロドプシンと言うたんぱく質が重要な働きをしています。アントシアニンはロドプシンが活性酸素により傷ついて働きが低下するのを防いだり、体内で再合成されるのを助けたりすることで視力を向上すると期待されています。

 ビルベリーエキスが視力(特に暗い所でも良く見えるかという夜間視力)を高めるかどうか、これまで数多くの臨床研究がなされてきました。その結果をまとめると、効果ありとする研究がある一方、効果なしとする研究もあるという状況です。また、効果ありとする研究では、被験者(試験を受ける人)が、自分が今から食べるのがビルベリーエキスだと知った上で試験が行われていることも多く(非無作為化臨床試験)、この場合プラセボ効果(「目に良いものを食べている」という心理効果などの、ビルベリーとは無関係の影響)が否定できません。現時点は、ビルベリー(アントシアニン)が視力を改善すると結論するにはデータが十分ではありません。

その他の作用

 

 アントシアニンは試験管内では抗酸化作用、一部のがん細胞やヘリコバクター・ピロリ菌の増殖を抑える作用、炎症を抑える作用など様々な作用を持つことが報告されています。このことから、酸化ストレスが関係すると言われる血管障害(血管内皮細胞障害、動脈硬化)やがん、ヘリコバクターピロリ菌が原因となる胃潰瘍、その他の炎症性疾患などを予防・改善すると期待されています。しかし、アントシアニンの吸収率は極めて低く、吸収されたアントシアニンも速やかに尿中に排出されます。アントシアニンの様々な有用作用が試験管内だけでなく生体内でも発揮されるか、動物試験やヒト試験による検証が進んでいますが、まだ結論を出すにはデータが十分ではありません。

安全性について

 

 アントシアニンは一般の野菜・果物にも含まれている成分であり、通常の食べ物から取る量なら安全です。ブルーベリーエキスやビルベリーエキスとして大量摂取する場合も、重篤な副作用は報告されていません。ただ、特に何らかの薬と併用してサプリメントを摂取する場合などに、現時点では明らかとなっていない思わぬ副作用が生じる可能性があります。異常を感じたらすぐにサプリメントの使用をやめ、医師・薬剤師にご相談ください。

最後に―「データが十分ではない」ってどういうこと?―

 

 仕事柄、講演会などで健康食品についてお話しさせていただく機会が多いのですが、「現時点では十分なデータがない健康食品が多い」とお伝えすると、「効果がないのですか!ずっと食べ続けてきたのに、残念です…」というお言葉をいただくことがあります。実は、これは誤解であり「十分なデータがない」は、「効果がない」と捉えるのではなく、「効果があるかないか一概には言えない」と捉えるべきだと私は考えています。

 今回のアントシアニンと目の関係について言えば、一口に「目が見づらい」と言ってもその原因にはいろいろあり、アントシアニンがうまく働ける場合とそうでない場合があるかもしれません。また、日常の食生活で十分な栄養補給ができているか、目をどの程度酷使しているかなどの様々な要因により、効果が変わってくるのかもしれません。そういったことを含めて、どのような人に効果があり、どのような人に効果がないか分からないという場合、「現時点では十分なデータがない」という表現になります。

 先程のようなコメントをいただいた際には、「もし、今、サプリメントなどを使っていて効果が実感できているなら続けてください。でも、もし効果が感じられないようなら、あなたには効果が小さいのかもしれません」と、私はお答えしています。

 

 アントシアニン、ブルーベリー、ビルベリーの安全性・有効性に関する科学的根拠の詳細をお知りになりたい方は、以下のサイトをご参照ください。

 国立健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報サイト

 ⇒ アントシアニン

 ⇒ ブルーベリー

 ⇒ ビルベリー

 (国立健康・栄養研究所 竹林 純)

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