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グローバルヘルス…世界中の人々の命守る

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グローバルヘルス…世界中の人々の命守る

 政府は、今年5月に日本で開かれる主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で地球全体の人々の健康を守る グローバルヘルス を議題の一つとして取り上げる方針だ。

 主に発展途上国に向けた取り組みだが、国境を越えて広がる感染症対策は先進国の課題でもある。日本も、感染症や保健医療の分野で、これまでの経験や技術を生かして、問題解決に取り組んでいる。

感染症対策

 「2年前に日本で広がったデング熱のワクチン研究も進んでいます」

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 「グローバルヘルス技術振興基金(GHITファンド)」(東京)の玉村文平さんはこう説明する。

 西アフリカのエボラ出血熱など感染症の流行は世界的な脅威にもなりえるが、発展途上国向けの薬やワクチンは利益が見込めず、日本では開発が遅れていた。日本の創薬技術を海外貢献に生かすため、2013年に設立されたのが同基金だ。国内の製薬企業や日本政府などが資金を出し合い、途上国向けの薬の開発を行う大学や製薬企業に投資している。

 これまでに43件に約54億円を投資し、うち6件は実用化に向けて臨床試験を行う段階にまで進んでいる。玉村さんは「開発する製薬企業にとって少なくとも損失は出ない仕組み。良いものができれば安価でも大量に購入してくれる国際機関がある。良い循環を作りたい」と話す。

 大量に購入した薬を途上国に届けているのが、02年に設立された「世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)」(本部・スイス)だ。00年の沖縄サミットでの提案を機に発足。14年末までに810万人がエイズの治療を、1320万人が結核の治療を受けた。蚊が媒介するマラリア予防の蚊帳の配布なども行い、推計1700万人の命が救われたとしている。

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 薬の配布だけではなく、診断、治療体制の整備や流行拡大を防ぐための教育活動などを支援している。世界約50か国の政府や企業、「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」などの民間財団が資金を出し合い、途上国が作ったプログラムを審査した上で資金を提供する。日本政府の累計拠出額は米仏英独に次いで第5位の約23億ドル(約2700億円)だ。グローバルファンド日本委員会の伊藤聡子事務局長は「運営に途上国の政府や民間組織、患者団体も参加して、現場の声が反映されることが、高い効果を生んでいます」と話す。

妊婦健診

 国際協力NGO「ジョイセフ」(本部・東京)は、日本が培ったノウハウを海外で展開する。地域の妊婦の相談にのるため1968年に国内で始まった母子保健推進員制度を途上国に紹介して、妊産婦の命を守っている。

 農村部の住民の中からボランティアの母子保健推進員を養成。助産師がいる保健センターで妊婦健診を受けるよう、呼びかけてもらう。健診でリスクが高いとわかれば急変時の対応がしやすい病院を紹介する。それ以外は保健センターで助産師の介助のもとで出産する。住居が散在する国では、センターの横に出産前の妊婦が滞在するマタニティーハウスも建設した。

 既に東南アジアのミャンマーやアフリカのザンビアなどで実績を上げている。「住民の意識が変わり、制度が根付くように努力している」と鈴木良一事務局長。ジョイセフではホームページ( https://www.joicfp.or.jp )で一般からの寄付も受け付けている。

 政府は、日本の医療保険制度を広めることなども検討している。渋谷健司・東京大教授(国際保健政策学)は「途上国でも生活習慣病や高齢化など日本と同様の問題が起こりつつある。世界の健康危機管理という点で日本ができることは多い」と話す。

  グローバルヘルス  地球規模で人々の健康に影響を与え、解決に国際的な連携が必要な課題のこと。感染症対策や乳幼児、妊産婦死亡率の低減、保健医療制度の構築などがある。テーマは時代と共に変化している。(館林牧子)

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