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オープンダイアローグ…精神障害 対話重ね治療

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ミーティング 患者抜きでは何も決めない

オープンダイアローグ…精神障害 対話重ね治療

治療のポイントを語り合うミアさん(左)とカリさん(大阪大中之島センターで)

 「オープンダイアローグ(開かれた対話)」という、フィンランド生まれの精神科の治療法が関心を集めている。統合失調症をはじめとする急性期の精神障害が、ほとんど入院せず、薬もあまり使わずに回復するという。現地の専門家2人が初めて来日し、東京と大阪のセミナーで実際を語った。

 オープンダイアローグでは、専門家チームと本人、家族などが集まって、対話を重ねる。言葉の力で治す。統合失調症は主に薬で治療するしかないと考えてきた精神科の常識をひっくり返すものだ。

 昨年末に来日した精神科医・家族療法士のカリ・バルタネンさんと、看護師・家族療法士のミア・クルティさんは、治療の進め方を次のように説明した。

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 「精神的な危機にある人や家族はいつでも、電話で病院に相談できる。電話を受けたスタッフは2人以上のチームを編成し、24時間以内に本人や家族を含めたミーティングを開く。自宅へ出向くことも、病院内の部屋で開くこともある」

 「チームでは、医師も看護師もソーシャルワーカーも対等。上下関係はなく決定権を持つ人はいない。スタッフの大半がセラピスト(家族療法士)の資格も持ち、看護師だけでチームを組むこともある」

 ミーティングは治療の核心。必要なら親類や友人にも加わってもらう。1回長くて90分ほどだが、危機的な状況の間は毎日、する。

 「大事なのは、参加者全員が発言すること。妄想や幻聴の話を含めて、どんな言葉にも耳を傾け、必ず誰かが応答する」「事前の計画は一切立てず、スタッフだけの会議もしない。本人を抜きにして何も決めない。記録はつけず、対話に集中する」

 説得するわけでも、何かを決めていくわけでもなく、多様な声が響き合う関係をつくる。本人の言葉を引き出すため、専門家同士が本人の前で本人について語る「リフレクティング」という技法も用いる。

 「簡単な解決法に飛びつかず、(見通しの)不確実な状況に耐えて対話を続ける。自分ならどうしてほしいかを考える。薬も否定しないが、大量には使わない」とカリさん。

 「精神的な危機は、治療の“窓”が開いている時なので、それを活用する。精神病的なことを話すと病院に入れられるという心配がないので、本人は安心して話せる」とミアさん。

 医師が主導して患者に病名をあてはめる一般的な診療と異なり、診断は重視していないという。

 有効性はどうか。1990年代に治療を受けた人の追跡調査では、2年後に症状が残っている率、就労率、再発率といった指標で、たいへん良好な数字が報告されている。しかし症例数が少なく、科学的な検証が不十分だという指摘もある。

 日本への紹介に力を入れている精神科医の斎藤環・筑波大教授は「これが広がれば、精神科医療は大きく変わる。抵抗する精神科医は多いだろうが、日本でもパイロット的に試みていきたい」と話している。(大阪本社編集委員 原昌平)

 メモ 
 オープンダイアローグは、フィンランドで精神科病院の縮小が進められた1980年代、取り組みが始まった。北極圏に近い西ラップランド地方にあるケロプダス病院が拠点。現在は、事件や自殺未遂で強制入院になった患者にも、入院中に使われているという。
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