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Dr.徳田の「総合診療の出番です」

からだコラム

[Dr.徳田の「総合診療の出番です」]過剰な検査、治療の是非

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 病院や診療所ではさまざまな検査を行います。検査には費用もかかりますし、CT検査など放射線被曝ひばくのあるものもあります。

 また、精密検査のなかには、管を体内に入れたり、針を刺したり、手術で組織を摘出したりするなど、リスクのあるものもあります。

 60歳代の女性は運動中に軽く頭を打撲し、近くの病院を受診しました。女性はCT検査を希望しました。

 脳のCT検査は、脳血管障害の疑いがある時や、重度の頭部外傷などでは必須の検査ですが、慢性の頭痛や軽い頭部打撲では本来、勧められません。女性は検査でまったく関係のない血管腫がみつかりました。脳外科に紹介され、手術が行われました。手術で全て摘出することはできましたが、記憶力が低下する後遺症を残しました。

 実は、医療のなかには効果とリスクを考えた時、治療すべきかどうか判断がつかないものが少なからずあります。けれども、患者も医師も問題を見つけると治療せずにはいられません。欧米では今、過剰な診断、治療が大きな問題となっています。その背後には過剰な検査があるとされています。

 女性はその後、不安神経症と睡眠障害を発症し、総合診療外来を受診しました。手の震えや動悸どうき、甲状腺腫大などがあったため、医学的な適応のあるホルモン検査を行い、バセドー病と診断しました。薬でその症状は治りました。

 日本ではまだ、「その検査が医学的に必要かどうか」吟味されることは少ないように感じます。けれども今後は、医師も患者も「過剰な検査」について考えていく必要があると思います。女性の記憶力はリハビリで、ある程度回復していますが、完全には治癒していないのです。(徳田安春・地域医療機能推進機構顧問)

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