心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
医療・健康・介護のコラム
「ぼやけて見える」には2種類の原因…テレビ番組で大反響
昨年の12月、「たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学」というテレビ番組で、ものがぼやけて見えるのをきっかけに、脳脊髄液減少症という病気が見つかり、治療で改善が得られた、私が診察を担当した症例が紹介されました。
テレビ番組への出演は、翌日以降、病院の電話予約センターに相当な迷惑をかけます。
番組では、名医だの、革命児だのとやたらと誇張した表現で紹介され、構成も面白おかしく進め視聴率も稼ごうとしますから、視聴者に「この医者に一度みてもらいたい」という気を起こさせるのかもしれません。
過去にも数回迷惑をかけていますので、12月と1月に専用の予約枠を用意しておきました。いつもなら大体それで足りるのですが、今回はオンエアの翌日の午前中だけでも300を超える電話があり、あっという間に用意した枠は満杯になり、6月までの初診予約枠まで埋まってしまいました。
これだと、他の病医院からの紹介や、番組視聴者以外で予約したい方々を受け入れる余地がなく、困った事態です。
話題は、脳脊髄液減少症(これについては、いずれ詳しく取り上げます)で、どちらかというと頻度の低い病態ですから、この反響は予想外のことでした。
どうしてこんなことになったのでしょう。
この人の訴えは、「ものがぼやけて見える」「
人が「ものがぼやける」と感じる場合、2つの場合があることを、番組では解説しました。
一つは、右または左目で見た時にピントが合わない状態です。
もう一つは、両目で見た時に二重にずれてぼやける場合です。この場合、原則として片目ずつで見た時はぼやけません。
前者は、眼鏡などでの矯正が不適切な場合や、角膜、水晶体、眼底などに病気がある場合です。これは、一般眼科の診察でわかる場合がほとんどです。
後者は、左右の目からの視覚信号にずれがあるような場合に生じます。健常者でも左右の目で見える像はわずかにずれているものですが、それが脳で統合、調整されてはじめて一つのものとして見え、しかも距離感や立体感も測定できるような仕組みになっています。
この機能は、眼球と脳との共働作業ですが、それが崩れると、二重にぼやけることになるのです。
この種の異常は、この方面を多少学んでいる眼科医でないと見つけられません。
おそらく、後者のような自覚症状があるのに、眼科で適切でない診断や対応を受けていた患者数が、潜在的に多いための大反響かと踏んでいます。
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