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日めくり、今時の格言…「認めてほしい」に応える
自然体でいる大切さ
日めくりといえば、含蓄のある格言が添えられるのが定番だ。最近では、人気タレントが応援や励ましを送る日めくりが爆発的に売れる一方、後ろ向きなつぶやき満載の変わり種も登場し、意外にも広く受け入れられている。“今風”日めくりの言葉は、人々の心にどう響いたのか。
「『できる、できない』を決めるのは自分だ」
「苦しい時ほど、笑ってごらん」
めくる度、熱いメッセージが迫ってくる「まいにち、修造!」は、熱血漢のキャラクターが人気の、元プロテニス選手でタレントの松岡修造さんによる日めくり。2014年9月の発売から15年12月までに発行部数118万部とミリオンセラーに。第2弾の「ほめくり、修造!」も15年9月の発売後、同12月時点で55万部発行された。
発行元のPHP研究所によると、偉人の名言が中心の日めくりを「もっと身近に」と考えた。幅広い年代に支持されているが、部活に受験に頑張っている子どもへのプレゼントとして、子育て中の親が買い求めるケースが目につくという。
人気の理由について、同社広報部は「多くの人が、『応援してほしい』『応援したい』という思いを心に納めておくのではなく、自分や他人に伝えるための『言葉』を求めていたのではないか」とみる。
「ほめくり、修造!」と同じ時期に発売されたのが逆発想の「まいにち、ネガティブ。」。ままならぬ日常を笑いに変える「自虐ネタ」で人気を博したお笑い芸人、ヒロシさんの作だ。
「『苦しいときほど笑え!』 笑えるくらいなら、とっくに笑っています」
「ピンチはピンチでしかない」
なにやら皮肉っぽく、後ろ向きな言葉ばかり。でも、不思議と後味の悪いものはなく、クスッと笑えてしまうのが特徴だ。
「日ごろ頑張っている人が息抜きとして遊んでくれたら」と発行元の自由国民社編集部長の竹内尚志さん。購入した人からは「なぜかほっとした」という声が多く、発売3か月で10万部を突破した。竹内さんは「無理な目標設定を強いられ、頑張らされてつぶれてしまう若者もいる。ネガティブというより、平常心を取り戻し、穏やかな心でバランスのいい生き方をしようと呼びかけている」と語る。
よく見ると確かに、ネガティブな一言の後には「そのときなりに、自然に生きればいい」「いつも立ち向かっていると、生きにくくなります」といった言葉が続く。肩の力を抜き自然体でいることの大切さを説いているようだ。
「どちらの日めくりも、結局は表裏一体のような気がします」と指摘するのは、精神科医の香山リカさん。力強い応援メッセージにしても、ネガティブな言葉にしても、自分を「肯定してもらいたい」「認めてほしい」という人々の思いに応えるもの、という共通点がみられる。
香山さんは「日めくり人気は、シンプルで極端な物言いが好まれる世相を反映している。困難で複雑な社会の中で、迷いや戸惑いを持つ自分の背中を押してくれるものと感じるのではないでしょうか」と話す。(高梨ゆき子)
日めくり |
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毎日1枚ずつめくるカレンダー。1年分365枚からなるものが一般的だが、「まいにち、修造!」や「まいにち、ネガティブ。」は1か月分31枚だけ。何月から始めてもよい形式になっている。 |
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