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ボンジュール!パリからの健康便り

医療・健康・介護のコラム

フランス、終末期医療・緩和ケアに本腰

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 フランスでは2015年から18年まで3年間、オランド大統領の公約の一つでもある終末期医療・緩和ケアの研究開発を本格的に行うことになった。

 緩和ケアはフランスでは少しずつ知られてきてはいるものの、まだ十分に浸透しておらず、施設数も利用者も多くはない。しかし、緩和ケアによるサポートが必要な患者は増えており、フランスはこの3年間の開発費用として1億9000万ユーロの予算を付けた。

 在宅訪問看護による終末期緩和ケアを行い、優秀な「モバイル緩和ケアチーム」を全国に30チーム作るために支援するとした。また、10万人に1人分の緩和ケア用のベッドを確保し、大学医学部などに終末期医療や緩和ケアコースを新設するなど専門医の養成のための改革も進める。

 フランスでは終末期を在宅で過ごすことを希望する患者が多いので、在宅緩和ケアへ力を入れていく。今後は高齢化などで、こうした緩和ケアの需要が増えていく見通しである。また、モバイル緩和ケアチームは老人ホームなどの施設の終末期支援も行う。

 終末期医療や緩和ケアというと、ヨーロッパでは安楽死や自殺幇助ほうじょなどの問題が絡んでくるが、マリソル厚生労働大臣は、緩和ケアの目的は、あくまで終末期を迎えた患者への痛みや苦しみを緩和することであり、死を援助するわけではないとした。緩和ケアが必要な患者の5人に1人は、ケアを受けることができるようにすることを目指している。

 現在、緩和ケアサービスの病棟やモバイル緩和ケアチームなどを整備している国は世界で約20か国。2011年に世界中で緩和ケアを受けた人は、わずか3万人である。緩和ケアを人間の権利ととらえ、社会的、精神的な苦痛、また肉体的苦痛を和らげることを目的としている。また、患者を取り巻く環境や家族などのケアも充実させていく。

 例えば、私が緩和ケア病棟で聞いた話によると、母子家庭でまだ子どもが小さい場合など、子供を残して逝く母親を安心させるため、子どもの生活のケアも行うという。

 フランスには、緩和ケアのボランティアも多く存在し、代表的な3つの緩和ケア協会を合わせると約300近くのボランティア団体がある。フランスはこういったボランティアに参加するにも、事前に数週間もしくは数か月の訓練を要する。また定期的にボランティアの精神ケアのための精神科医との面談なども行われている。ボランティアの仕事は、在宅患者の見守り、通院の介助、また患者の話を聞く、など多岐にわたる。ボランティアの方々はプロ意識が高く非常に勤勉で真面目である。医師や看護師そして家族などに言えないこともボランティアの方々には言える、ということもあるという。

 フランスの終末期医療、緩和ケアの今後に注目していきたいと思う。

■今週の一句

ショコラショに 心も顔も 緩ませて

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ボンジュール!パリからの健康便り_古田深雪_顔120px

古田深雪(ふるた みゆき)

1992年渡仏。
1997年より医療通訳として病院勤務。

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1件 のコメント

イギリスのホスピス

セントパンクラス

ここイギリスでは終末期の緩和ケアはごく一般的で、NHS(ナショナルヘルスサービス)で無料ですがGP(家庭医)の紹介がないと利用できないそうです。...

ここイギリスでは終末期の緩和ケアはごく一般的で、NHS(ナショナルヘルスサービス)で無料ですがGP(家庭医)の紹介がないと利用できないそうです。また、ケアホームへ入所する患者よりも自宅で訪問看護を受ける患者のほうが圧倒的に多いそうです。普段患者を介護している家族に休息してもらうため、一時的に代わりの看護者を派遣するrespite careというのもあります。これは終末期患者だけでなく、障害児をもつ親にも適用され、勿論無料です。こんなに何もかも無料で大盤振る舞いしていると、NHSの財政(NHSに限らずですが)が破綻するのも無理はないと思います。
昨日はNHS病院の研修医たちが40年振りのストライキを行いました。待遇改善を求めてというよりは、待遇の悪化を阻止するためです。テレビニュースに映った彼らのプラカードに文法上の間違いを発見してしまい、おいおい大丈夫かと思いました。

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