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[フォーラム「がんと生きる」 「こころとからだ私らしく」](2)緩和ケア 診断時から

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副作用の問題

轟哲也さん

 町永 放射線や抗がん剤の治療には副作用の問題がついて回ります。

 秋月 最近は、病院に通いながら治療できるようになりました。それだけに患者や家族が自宅でどう副作用に対応するのか、周囲がどう支えるのかが重要です。

 轟哲也 私は抗がん剤で味覚障害になり、おいしいという感覚がなくなりました。ただ体力を維持するために食事をしています。

 轟浩美 副作用で吐き気が出ると、主人は私に「申し訳ない」、私は「主人を苦しめている」という思いになり、食卓を囲めなくなりました。とても悲しいです。色々な工夫はして来ましたが「食べやすかった」「おいしい」と言ってもらえることはなかったです。

 町永 なぜ副作用が起きるのですか。

 北川 治療で放射線を体に通すと、放射線はがんだけでなく正常な細胞にもダメージを与えます。食道や胃、小腸に当たると吐き気につながり、全身に倦怠けんたい感も出ます。

轟浩美さん

 轟哲也 食べ物をのみ込む度に食道がひりひりして、塩辛い物や酸っぱい物が付くと痛くて、一口食べては水で洗い流しています。

 北川 全身に投与される抗がん剤は、どこにでも副作用が出てきます。入れ替わりの早い髪の毛や、口や消化器の粘膜に出やすいです。白血球が減って、感染症への抵抗力が落ちることもあります。

 町永 副作用とどう向き合うのかが大きな課題になっています。

 内富 がん治療とともに心と体を調整していく緩和ケアが注目されています。支持療法とも言います。

 町永 緩和ケアには、終末期に行うというイメージがあります。違うんですね。

 内富 今はがんの診断時からです。体の痛みを和らげ、心の痛み、生きがいまで対応するのが緩和ケアです。

秋月玲子さん

 町永 在宅の緩和ケアが注目されています。訪問する在宅医療と、大学病院、拠点病院が連携することに大きな意味があります。

 轟哲也 病院から家に帰った後、ひどい副作用が出ることがあります。家を訪問した医師がそれを主治医に伝えてくれれば、患者の利益は大きい。主治医の側も、全人的に寄り添いながら治療しようという土壌が生まれ、医療者の育成にもつながります。

 秋月 厚生労働省では、治療による副作用や合併症を減らす支持療法の研究を重点的に進める予定です。

内富庸介さん

 町永 緩和ケアの中で体調を整える薬はありますか。

 北川 抗がん剤や手術、放射線による副作用で食欲が出ない、手足がしびれ、痛むといった場合、漢方薬を使うことがあります。免疫機能を維持するとも言われていますが、主に合併症や副作用を和らげていく作用が知られています。

 (2015年12月26日 読売新聞朝刊掲載)

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