文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

白血病と闘う~政治部デスクの移植体験記

闘病記

(8)9日目の高熱…のどの痛みも激しく

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 さい帯血移植を終えた患者には、「二つの関門」が待ちかまえています。「day 9 fever(デイ・ナイン・フィーバー)」と、「生着」です。

 デイ・ナイン・フィーバーとは、移植9日目頃に感染症によらない高熱がでることです。移植されたさい帯血由来のリンパ球が体内で成長し、この時期に炎症反応を起こすために見られる現象といわれています。さい帯血移植をした患者全員がそうなるわけではないようですが、40度以上の高熱が長期間続くケースも多いという説明を受けました。

 移植後、最初に悩まされたのは、やはり下痢でした。移植直後こそ回数が減ったのですが、2~3日後には、一日10回以上もトイレに通っていました。ただ、移植5日後からは、5回以下と徐々に減っていきました。

 しかし、一難去ってまた一難、苦しみの日替わりメニューというのが、この病気の常です。下痢が峠を越えたら、今度はのどの痛みがひどくなってきました。食べ物はもちろん、水や薬、つばを飲み込むのもつらいほどでした。

 医師からは「ゼリーやお菓子などでもいいし、少量でいいので、何とか毎日、口に何か入れるよう、頑張ってください」と言われました。胃や腸が空っぽの日が続くと、排出がない分、菌がたまって感染しやすくなるほか、体力・体調の維持・回復の面でも悪影響を及ぼすという話でした。

20151224_ikebe_01_800

命つなぐバウムクーヘン…味覚障害も

 この時期、のどを通すことができた数少ない食べ物の一つが、お菓子のバウムクーヘンでした。私はふだん、甘い物はほとんど食べません。しかし、この時期はバウムクーヘンだけがとてもおいしく感じられ、少し大げさにいえば、命をつなぐ貴重な食べ物となりました。

 バウムクーヘン以外では、オーブンで焼いたお餅も比較的好きで、のどが痛い時期を除けばよく食べていました。移植後、味覚障害は徐々にひどくなり、それまでおいしかったうどんなどの食べ物も、以前ほどおいしくなくなっていましたが、バウムクーヘンとお餅は、なぜかいつもおいしく食べることができました(以上はもちろん、私個人の感想です)。

 アイスクリームは、おいしく食べた時もありましたが、下痢が悪化することを警戒して、途中から一切口にしませんでした。妻が「少しでも消化しやすいものを」と、幼児用のクッキー、ゼリー、ジュースなどを持ってきてくれて、これらも食事がのどを通らない時期などに、大事な栄養補給になったと思います。

 一方、刺し身などの生ものはもちろん、ヨーグルト、納豆など菌を含む食べ物は、入院中はずっと禁じられていました。

 のどの痛みには数日間苦しめられましたが、幸い、徐々にひいていきました。

高熱は3日間のみ、しかし「順調」の言葉に違和感ぬぐえず

 移植からちょうど9日目の4月12日の夕方、寒けを感じて熱を測ると38.1度。「デイ・ナイン・フィーバーがついにきました」と看護師に直ちに連絡。ただ、翌朝には37.5度に下がりました。少し肩透かしをくらった感じでした。結果的に、38度超の熱は3日間だけ、しかも一時的でした。主治医は「この程度で済んで良かったですね」と笑顔で話してくれました。

 下痢やのどの痛みはピークを過ぎていましたが、相変わらず続いており、だるさは頻繁、吐き気も時々起こっていました。自分では「体調は良好です」なんてとても口にできないというのが正直な気持ちでしたが、医師や看護師は「とても順調です。毎日シャワーを浴びて、食事も毎回、少量でもちゃんと食べているのもすごい」と口をそろえて言ってくれました。ほめられると悪い気持ちはしないのですが、「順調」の実感がなく、どうしても違和感がぬぐえませんでした。

 ただ、自分では「順調」とは思えないのに、医師や看護師の言う通り「順調」だとしたら、これまで移植を受けた患者の方々の多くは、どれほどつらい経験をしてきたのか、少なくとも今の私よりずっと苦しい思いをしてきたにちがいないと、思いを巡らせることもありました。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

白血病と闘う~政治部デスクの移植体験記_201511_120px

池辺英俊(いけべ・ひでとし)
1966年4月、東京生まれ。90年、読売新聞社に入社。甲府支局に赴任し、オウム真理教のサリン事件などを取材。96年、政治部記者となり、橋本龍太郎首相、小沢一郎新進党党首、山崎拓自民党幹事長(肩書はいずれも当時)の番記者を経て、外務省キャップ、野党キャップ、外交・安保担当デスクなどを歴任。2011年5月から政治部次長。著書に、中公新書ラクレ「小泉革命」(共著・以下同)、同「活火山富士 大自然の恵みと災害」、東信堂「時代を動かす政治のことば」、新潮社「亡国の宰相 官邸機能停止の180日」など。

白血病と闘う~政治部デスクの移植体験記の一覧を見る

7件 のコメント

コメントを書く

リブログさせて頂いてよろしいですか?

たかぴょんきち

私は今現在、さい帯血移植を終えたばかりの女性です。闘病記をブログに書いております。池辺様の闘病ブログを読ませて頂く機会に恵まれ、いくつかの記事が...

私は今現在、さい帯血移植を終えたばかりの女性です。闘病記をブログに書いております。池辺様の闘病ブログを読ませて頂く機会に恵まれ、いくつかの記事が共感が湧きました。是非、私のブログでご紹介させて頂いてもよろしいかどうかのご確認です。
初対面の方に不躾だとは思いましたが、あまりにも感動してしまって...。
命を繋ぐバームクーヘンの記事が特に共感して、何を食べてもわからなかった味が...!

そのようなわけです。
どうぞ宜しくお願い致します。

つづきを読む

違反報告

編集チームヨミドクター

e-yomidr@yomiuri.comにご連絡ください。よろしくお願いします。

e-yomidr@yomiuri.comにご連絡ください。よろしくお願いします。

違反報告

明けましておめでとうございます!

TYSON

池部さんの闘病記は父親の癌とシンクロしてしまう部分も多かったので、読んでコメントを打つ事をしばらく躊躇してしまっていました。人の良い部分や良い話...

池部さんの闘病記は父親の癌とシンクロしてしまう部分も多かったので、読んでコメントを打つ事をしばらく躊躇してしまっていました。

人の良い部分や良い話は聞きやすいですが、辛い話や悪い話を都合良く逃げている自分が情けなくなり、年越しから年明けにかけて数回読ませて頂きました。

地獄の様な経験をされた事を客観的に捉えている部分は本を読んでいる感覚で読めたのですが、写真を見たり、「これは体験談で、実話なんだ」と再認識すると、やはり読むスピードが落ち、思考が先行し、心配や同情、不安に近い感情が押しよせてきました。

大切な人を失う事は必然ですが、まだまだそこまで大人にはなれませんので、これからも出来るだけ色々な話を聞かせて頂きたいです。

この正月に父親にもトレーニング指導をしました。少しでも力強いスウィングで少しでも長い飛距離をと諦めていませんでした。

一度はダウンしましたが、再度立ち上がった中年世代の頑張りを、僕は全力サポートしていきます!

つづきを読む

違反報告

皆さま、よいお年を!

池辺英俊

今回も闘病記のブログを読んで頂き、誠にありがとうございます。毎週木曜日に更新してきましたが、次の木曜日は大みそかですので、1週お休みをいただき、...

今回も闘病記のブログを読んで頂き、誠にありがとうございます。
毎週木曜日に更新してきましたが、次の木曜日は大みそかですので、1週お休みをいただき、1月7日(木)から再開する予定です。残りあと4回。来年も継続して読んでいただければ幸いです。
今年をふり返ると、白血病が再発し、1年の半分近くが入院生活でした。なんてひどい年、散々な年、みじめな年、悪い面を数えればきりがありません。でも、その苦しみがあればこそ、闘病記ブログに初挑戦し、多くの方に読んでもらい、激励や批評のメールをたくさんいただきました。読者の皆さまのおかげで、いいことも確実にありました。
今回、コメントを寄せてくれた「よこのり」さん、「書き伝える」という記者の使命をあらためて自覚させてくれてありがとうございます!「凡人」さん、まだまだ私など精神的に成長していませんよ。生きているだけで本当に有り難いと強く実感していた日々と比べ、今は成長どころか、逆にだんだん欲深くなる一方ですから。「一文字一文字を真剣に読んで自分の身に置き換え、修業させて頂きます」とのメッセージ、心に染みました。
皆さまのコメントが大きな励みと張り合いになっています。本当に感謝です。
それでは皆さま、どうか良いお年をお迎え下さい。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事