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認知症の妻と向き合う小児科医…介護生活 映画に記録

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進む病状、自身もうつ病に

「未来のある子どもたちを診察していると元気をもらえる」と話す石本浩市さん(高知県南国市の「あけぼのクリニック」で)

 高知県南国市の小児科医、石本浩市さん(64)は、レビー小体型認知症になった妻の弥生さん(63)の介護を10年以上続けている。

 自身もうつ病を抱えながら、病気の妻と向き合ってきた。2人の生活を記録した映画が話題を呼んでいる。

 弥生さんは同市中心部の「グループホームひよし」にいる。病状が進み、見舞いに来る石本さんを夫と認識しているのかも分からない。寝ている弥生さんの体位を変えようとすると「先生、すみません」。石本さんが手を握って「大丈夫?」と声をかけると「ありがとう」と答える。「元々の心の優しさ、謙虚さが出てるんだろうね」と石本さんはしみじみ言う。

 2人は小学校の同級生。石本さんが順天堂大(東京)を卒業し、同大の小児科医になってから結婚した。石本さんは小児がんの専門家。がんを経験した子どもが交流するキャンプを1998年から続けている。

元気な頃の弥生さん(浩市さん提供)

 2001年、生まれ故郷の同市に戻り、診療所「あけぼのクリニック」を開業した。3年ほどして、弥生さんに異変が現れた。「人に見られている」と訴え、探していた書類が突然出てきたと言い張る。精神科を受診すると、妄想、幻聴などが出る統合失調症と診断された。だが、向精神薬を飲んでも効果がない。その頃の石本さんの日記がある。

 06年6月12日 (妻が診療所の)振り込みの計算をするもできず、姉に手伝ってもらい書く。こちらもきつい言い方になり、それが傷つけていることが分かるが抑えられない。

 弥生さんは夜中に何度も起き、人がいると言って各部屋を見て回る。それを見守る石本さんも眠れない。腹を立て、弥生さんに手を上げることもあった。仕事の疲れも重なり、石本さんはうつ病になった。

 知人の医師を頼り、弥生さんがレビー小体型認知症と診断されるまで3年近くかかった。認知機能の障害のほか、幻視や妄想、猫背なども表れる。付きっきりの介護が欠かせず、診療所の経営に支障が出かねないため、08年7月からは離れて暮らし、時々会いに行く。

 東京の介護付き老人ホームに入居させる際、石本さんは弥生さん宛てに手紙を書いた。内容は理解できないだろうと思いながら。

 2人が離れなければ2人とも共倒れになっていた(中略)。私のうつがよくなり、弥生さんの症状も安定したら、また、いつか一緒に暮らせる時が来る。

 「妻は1人しかいない家族。できるなら自宅で世話して一緒に暮らしたいが、仕事や自分の病気もあってそれはできない。介護や公的サービスを上手に活用しないといけないと思った」と振り返る。

 発病直後から、周囲には弥生さんの病状を隠さず説明してきた。「認知症や重い病気になるのは恥ずかしいことではない」という医師としての思いからだ。11年から3年ほどの2人の様子は、映画「妻の病―レビー小体型認知症」になった。「褒められる介護はできていないが、自分の体験でよければ参考にしてほしい」。妻への感謝を込め、診療の合間に患者会などで講演をしている。

 映画「妻の病―レビー小体型認知症」 映像作家の伊勢真一さんが監督し、石本さんと弥生さんの生活を約3年間追ったドキュメンタリー。2014年公開、1時間27分。全国での上映会の日程は「いせフィルム」のホームページ(http://www.isefilm.com/)で確認できる。(石塚人生)

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