文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

目に強い痛みと眩しさ…安定剤、睡眠導入薬で副作用

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 「目にいつもいつも頑強な痛みがあって何もできない」「家の中でもまぶしさがあって外出はおろか、自分の移動もままならない」という方が眼科を訪れることは、決して珍しくありません。

 原因となる目の異常がわかれば、眼科医としてはありがたく、必要な治療を施すことで改善すれば患者も医師も平和です。

 ところが眼球をくまなく診察しても、そういう強い訴えに対応する所見が得られないことが結構あります。

 そういう場合、医師は「どこも悪くありません。心配ないです」などと言うでしょう。ところが、患者さんとしては、それで症状が取れるわけではなく、納得がゆきません。

 もしかすると医師は、眼精疲労とか、ドライアイとか、何か理由をつけて点眼薬を処方するかもしれません。効くと信じて使用すると心理的効果で症状が軽減する「偽薬効果」を期待している場合もあります。

 こうした不明で頑固な症状の原因のひとつとして私が見つけたのは、薬物の副作用でした。

 自覚症状の程度には軽重がありますが、こうした症状を持っている症例のかなりの人々が共通して使用している薬があったのです。それは、安定剤や睡眠導入薬として多用されているベンゾジアゼピン系あるいは同等の薬理作用を持つ薬の連用でした。

 同等の薬理作用というのは脳内の神経伝達物質受容体のうち、「GABA」の受容体に作用する薬物で、ほとんどの睡眠導入薬が含まれます。

 ただし、この種の薬物を長期連用している例には、薬への依存性があって容易には中止できません。無理に突然中止すると「離脱症候群」といって、予期できない身体のいろいろな症状が出現したり、今出ている症状が重症化したりすることがあります。ですので、慎重にゆっくり、場合によっては補助薬などを使用しながら何か月もかけて減量、そして中止にもってくる必要があります。

 こうして減量中止が成功した例の中に、劇的に頑固な症状が改善し、喜び一杯の笑みで再来される患者さんを何十人もみて、やはり薬物の副作用だったのだと確信するに至ります。

 ところが、これらの副作用は、眼科医にも、処方している科の医師にもほとんど知られていませんし、薬物の添付文書にも明確な記載はありません。

 全例とはゆきませんが、減量中止で改善させられる可能性がある副作用だけに、これを「ベンゾジアゼピン眼症」として広めていかなければならないと、この副作用に気づきはじめた眼科医たちと相談しているところです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。北里大学医学部客員教授、日本神経眼科学会理事長などを兼務し、15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ、副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人---心療眼科医が本音で伝える患者学」(春秋社)、「健康は眼に聞け」(同)、「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、医療小説「高津川 日本初の女性眼科医 右田アサ」(青志社)、「茅花流しの診療所」(同)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半には講演・執筆活動のほか、NPO法人などのボランティア活動に取り組む。

心療眼科医・若倉雅登のひとりごとの一覧を見る

最新記事