文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

シニアニュース

ニュース・解説

「徘徊と呼ばない」運動広がる…認知症患者の尊厳守るため

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
「徘徊」という言葉を使わずに実施された模擬訓練(9月20日、福岡県大牟田市で)=大牟田市提供

 認知症患者が屋外を歩き回る行動を指す際に用いられる「徘徊はいかい」という言葉を使わないようにしようという動きが広がっている。「あてもなくさまよい歩く」という意味が、「患者への理解を阻害する」として、介護関係者らが捜索訓練などの場で取り組み始めた。2025年には700万人に増えるとされる認知症患者。関係者は「認知症への理解を深め、自分のこととして考える機会にしてもらえれば」と話している。(向井由布子)

「意味なく歩いているのではない」と患者の声

 福岡県太宰府市で11月1日、外出したままの認知症患者への対処法を体験する「声かけ・見守り模擬訓練」が行われた。昨秋の訓練は「徘徊模擬訓練」との名称だったが、今回は「徘徊」という言葉を外した。企画・運営を担当した龍頭りゅうとう吉弘さん(70)は約15年間、認知症の高齢者を預かる施設を運営し、外を歩き回る患者には「子どもを迎えに行く」「晩ご飯の準備をするために自宅に帰る」といった理由があることを知っていた。

 「『徘徊』が認知症の問題行動の象徴とされ、理解の妨げにもなり得ると思い、名称を変えた」と龍頭さん。地元で開く講座などでは「その人の人生を知れば、外へ出て歩きたい理由も分かる」と説いている。

 太宰府市以外でも、熊本県山鹿市の一部で訓練の名称から外したほか、今年から訓練を始めた佐賀県基山町は「適切な言葉とは言えない」として初めから使わないことを決めた。

 こうした動きのきっかけを生んだのは、福岡県大牟田市。長年、「認知症の高齢者が安心して徘徊できる街」をスローガンに、全国に先駆けて地域で見守るシステムを構築してきたが、患者から「意味なく歩いているのではない」との声が上がり、「当事者の尊厳に配慮する必要があるのではないか」と議論が起こった。

 市民からは「緊急性が伝わる」「これまでも肯定的に使ってきた」といった意見も多く出たが、活動を支える市認知症コーディネーターの大谷るみ子さんらが「大牟田から問題提起をしよう」と理解を求め、今年9月の訓練から「徘徊」を外すことでまとまった。

 一方、群馬県沼田市は11月上旬の訓練で「命のたからさがし訓練」との副題を初めてつけたものの、「徘徊」の言葉は残した。訓練は11回目で、市担当者は「『徘徊』は理解しやすいとの声も多い。今後、議論が深まれば」という。

 認知症介護研究研修東京センターの永田久美子研究部長は「『徘徊』という言葉が偏見を助長し、家族が睡眠時間を削って患者の行動を見守り続けるか、施設に入れてしまうかを選ぶ現実になっている」と指摘。大谷さんも「議論自体が当事者の気持ちを尊重して理解を深めることにつながるはず」と話している。

          ◇

 認知症 様々な理由で脳の働きが悪くなり、記憶障害や判断能力の低下などが起きる。アルツハイマー型、脳血管性、レビー小体型などがあり、それぞれ症状が異なる。約6割がアルツハイマー型で、直近に起きたことを忘れたり、大事な物を盗まれたと訴える「物とられ妄想」が起きたりする。国の調査では、65歳未満で発症する「若年性認知症」の患者も約3万8000人いるとみられている。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

シニアニュースの一覧を見る

最新記事