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佐藤記者の「新・精神医療ルネサンス」

コラム

三つ星精神科はどこ?

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 精神科医療機関の中には、患者をきちんと治すところもあれば、かえって悪化させるところもある。治療技術が劣る精神科を受診してしまったがために、不適切な治療で病状が悪化し、自殺に至ったと思われるケースさえある。

 確かな検査法があり、診断や治療の指針が整った外科、内科などの一般診療科と比べ、精神科は明らかに医師の技術差が大きい。受診する医療機関によって、回復度が大きく変わってしまうのだ。では、どこを受診すればいいのか。NPO法人地域精神保健福祉機構が進める「精神科医療機関の見える化計画」は、医師選びに悩む患者、家族にとって有益な指標になるかもしれない。

患者が精神科を評価する

 この計画は、精神科に通院する患者たちが、各医療機関(対象約3500施設)の診療内容を25項目(医師の態度、治療の見通しや副作用の説明、薬の種類など)にわたって評価し、結果を一覧表にしてインターネットサイトに掲示する取り組みが中心となっている。星の数で評価を示し、多くの項目で平均点よりも高い評価を得た医療機関は、病院名の横に三つ星が付く。大規模な患者アンケート調査と集計作業を経て、2015年11月に公開に至った。取り組みの経緯などは、8月25日の朝刊連載・医療ルネサンス「心の健康を守る」などでいち早く記事にしているのでご覧いただきたい。

 私は、患者アンケート作成前から、評価項目などについての意見を求められ、「精神医療を良くしたい」という関係者の熱意と努力をじかに感じることができた。今後は患者アンケート調査を継続するほか、評価に対する意見などもサイトに掲載し、情報を充実させていくという。

 2015年12月以降、各医療機関の項目ごとの詳しい評価を見るには、有料会員登録(賛助会員年会費5000円。月刊誌「こころの元気+」も郵送される)が必要になったのは残念だが、データ集計や管理にかかる費用を考えると、仕方がないのだろう。アンケートの回答やサイトへの書き込みも、身元が分かる会員に限る(個人情報は公開されない)ことで、医療機関の自作自演など、ヤラセ情報を防ぐ狙いもある。ただ、現状では困難でも、将来は閲覧のみの月額会員などを設け、より多くの人が詳細な結果を見られる仕組みを期待したい。

再診の3割が診察5分未満?

 アンケート調査の回答から、精神科診療の問題点も明瞭になった。例えば診察時間。11月上旬までに集まった1214人分の回答集計で、再診患者の29%は、平均5分未満の診察しか受けていないと感じていることが分かった。診察時間をその都度、正確に計る患者が多いとは考えにくく、あくまで感覚的な時間ではあるが、5分未満と答えた患者の多くは、その短さに不満を抱いている可能性がある。

 精神科の外来診察(通院精神療法)は精神科治療の基本で、対話によって患者の症状や生活上の問題を探り、回復に導く。通院精神療法の診療報酬は、30分未満3300円、30分以上4000円。条件による加算もある。精神科医療機関のほとんどが請求しているとみられるが、あまりにも短い診察では患者の現状すら把握できないので、費やした時間が5分未満だと算定できない。ところが、3割もの患者が「5分未満」と回答しているのはどうしたことか。5分未満の診察で、通院精神療法の診療報酬を請求している医療機関がかなりあるのだろうか。

 この調査では、1か所の医療機関で薬を4種類以上処方される患者が54%に上ることも分かった。また、精神科の診断は、抑うつなどの症状を引き起こす体の病気がないことを確認した上で行うのが原則だが、初診時に、そうした身体疾患に関する質問をされていない患者が84%に上ることも分かった。

 地域精神保健福祉機構専務理事の島田豊彰さんは「極端に短い診察は、過剰投薬や誤診を招きやすい。不正な請求の可能性もあるため、厚生労働省にデータを持参し、調査を求めたい」としている。

 以前から指摘されつつも、放置され続けた精神科外来の様々な問題が、患者視点の「見える化計画」によって具体的な数値として浮かび上がってきた。患者の声が、精神医療を変える日は近いのかもしれない。

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佐藤写真

佐藤光展(さとう・みつのぶ)

読売新聞東京本社医療部記者。群馬県前橋市生まれ。趣味はマラソン(完走メダル集め)とスキューバダイビング(好きなポイントは与那国島の西崎)と城めぐり。免許は1級小型船舶操縦士、潜水士など。神戸新聞社社会部で阪神淡路大震災、神戸連続児童殺傷事件などを取材。2000年に読売新聞東京本社に移り、2003年から医療部。日本外科学会学術集会、日本内視鏡外科学会総会、日本公衆衛生学会総会などの学会や大学などで講演。著書に「精神医療ダークサイド」(講談社現代新書)。分担執筆は『こころの科学増刊 くすりにたよらない精神医学』(日本評論社)、『統合失調症の人が知っておくべきこと』(NPO法人地域精神保健福祉機構・コンボ)など。

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