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性とパートナーシップ

妊娠・育児・性の悩み

夫婦関係と発達障害(上)母離れできない夫、妻の苦痛

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 ――「性とパートナーシップ」で体験談を取材すると、セックスやパートナーシップがうまくいかないカップルの背景に、アスペルガー症候群が隠れていたケースが複数ありました。どういう特徴が影響を与えると考えられるのでしょうか?

発達障害の治療に使うロボットを前に語る宮尾さん

 「私の診ていたアスペルガー症候群のお子さんのお母さんに話を聞いていくのですが、お父さんがほとんど出てこないことが多かったんです。シングルマザーかな、離婚されたのかなと思うぐらいに。勇気を出して聞いてみたら、同じような疑問を持ったお父さんたちの行動パターンは全部一緒でした。家庭内での社会性がないし、人の心がまったく読めていない、奧さんとのコミュニケーションがまったく取れていないとのことでした。お母さんはほぼ全員がうつになっていました。そこでそのお父さんを変えれば、母のうつはよくなり、子どもも思ったように改善するのではと考えました。そのような、お父さんだけを集めてみたら、みなさん立派な紳士たちでした。会社の重役とか医者とか社会的地位の高い人ばかりで、セミナーの現場で私に質問される内容も理路整然としていましたし、家庭内で社会性がないと母たちから言われていましたので『あなた方はどうやって社会性を身につけたのですか』と聞いてみると、『僕は損得で身につけてきました』という人が多いのですね。知的能力が高いから、社会の中で損得を考えて動いて、今の高い地位を得たということでした。翻って、家庭の中では損得は生じないわけで、せいぜいおいしい食事、温かいもてなしが得としてあるわけですが、それはあまり意味をなさないとのことでした。だから、家庭内での社会性である夫婦関係に反映されないのではと考えるに至りました。また外の世界のビジネスで有効である素早い判断、冷静な分析、冷徹な人への評価は、家庭内では逆の効果を生み出します」

 「家族関係にも注目して、成育歴についても考えてみると、アスペルガーの男性は新しいことになじむのが苦手です。家族関係から考えてみると、ある時期までは母親の息子ですよね。思春期になって恋をして、結婚する。そこでの問題の一つは、自分が『母親の息子』という意識のまま、母親とつながったまま、結婚してしまうことなのです。女性は母しか知らないですから、女性の未熟な時代も知りませんし。新婚時代から、自分の母親と同じ役割を妻に求めてしまいます。さらに、奧さんがうつになってしまう原因として、ご主人の母親の存在があります。母親にとって、一流大学を出て、一流企業に務めている息子は自分の誉れです。その息子の子どもの出来が悪かったら、奧さんが悪いということになります。その思いがいつも降りかかってしまう。自分の息子は一流大学を出ているのに、勉強をしない、勉強ができない孫は、妻が頭が悪いか育て方がだめなのかということになります。『私は母親としてこんな社会的に立派な息子を育てたのに、あなたは怠慢』という視線が常にあるわけです。そうすると必死に子どもを教育しようとします。子どもは母に反抗し、母はますます気持ちが保てなくなります。そんな子どもたちがたくさんいます。おまけに祖母は孫に甘いので、同じ家の中でダブルスタンダードができてしまいます。妻はパニックになりますが、ご主人はそれに無頓着で、父の役割に加えて夫の役割も果たさないから、また落ち込む。奧さんが困った時に、『大変だったね。お前の味方をしてあげられなくてごめん』と言うのは夫の役割ですが、母親の息子のままでいるので、その役割を担えないのです」

 ――ほかのパターンはあるのですか?

 「もう一つは、逆に母親とけんかしている息子のパターンですね。基本的に母親は、社会の中でうまくやっていくために、二面性があります。例えば、PTAの担当の先生について陰で悪口を言っていても、先生の前ではぺこぺこしてゴマをすってばかりいる。それを見てアスペルガーの息子は『あの女はうそつきだ、許せない』と、母親と断絶してしまうのです。そういう場合は、奧さんがすべてになります。2人でいる限りはハッピーなんです。そこに子どもが生まれ、特に男の子が生まれると、自分にとっての恋敵になってしまうのです。奥さんに「おまえは人妻なんだから、子どもといちゃいちゃしてはだめだよ」と言ってしまいます。母であることより、妻であることのランクが高いというわけです。恋人や新婚時代はとても関係性がいいのに、子どもが生まれたとたん自分に注目してくれないので、ライバル意識を持って不機嫌になるというパターンです」

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14件 のコメント

果たして本当に障害?

ごまちゃん

学問として確立されているので、否定が難しいと思いますが… 損得で判断してきた、というケースについては障害ではなく、文化が生み出した弊害だと思うん...




学問として確立されているので、否定が難しいと思いますが…

損得で判断してきた、というケースについては障害ではなく、文化が生み出した弊害だと思うんですが。

今や拝金主義の日本といいますか、日常が損得の文化で溢れているし、そうなるのは何も不思議ではないと思います。この根拠について語るには、論文のようになってしまうので、到底足りませんが。

女性の場合、本能的に無償の愛に対して抵抗が少ないという傾向があるように思います。母親の子育てなんかは典型的で、損得で考えていたら、到底出来るものではありません。

本能的に備わっていない上に、母から受けてきたばかりの男性が、そこに理解を示すのは元々至難の業ではないでしょうか?

ましてや、ただでさえ外で働いていて、家事に関わる時間が少ないのに、積極的に理解を示そうという動機すら起きる状況にもならないと思います。

障害ではなく、長年の文化形成の影響が大きいと私は思うのですが。

ある意味、生活習慣というか、その人が触れてきた文化思想の問題であって、障害という捉えかたには疑問があります。

ここまで障害として概念が確立されてしまっては、遠吠え程度にしか受け取られないでしょうが、私は発達障害と定義されている概念の多くに疑いを持っています。

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発達障害は障害者ですか?

おひとりさま

このコラムを非常に興味深く読ませていただきました。 私の父も人の話を聞かない、トンチンカンな事を言う人です。プライドが高いので専門医にかかって診...

このコラムを非常に興味深く読ませていただきました。
私の父も人の話を聞かない、トンチンカンな事を言う人です。プライドが高いので専門医にかかって診断してもらうことはないでしょう。父の妹も同じように人の話を聞かない、人の気持ちを理解できない人です。今まで自己中心的な人だと思ってましたが発達障害なのかもしれません。
周りの人特に家族が苦労するのですが本人は全然気にしないというか悪気がないので改善してもらうことは難しいです。
私自身はADHDではないかと思うのですが片付けが苦手で周りの人とも上手くやっていけません。現在は失業中です。前の職場で酷い目に遭ってそれがトラウマとなり就職活動に前向きになれません。今後どうすればいいか?途方にくれてる日々です。

とはいえこのコラムとコメントは参考になりました。
ありがとうございました。

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お願い(興味のない人への対応)

ひよこ

3回目の投稿・・・最後に、先生や記者さんへのお願いがあります。最近は、大人の生きづらさについて様々な分野の研究・分析や広報が進んできていて、私の...

3回目の投稿・・・
最後に、先生や記者さんへのお願いがあります。

最近は、大人の生きづらさについて様々な分野の研究・分析や広報が進んできていて、私のように自らが知りたいと思うタイプの人間には、内容の質はピンキリですが、探せば探すだけ多くの書籍やネット情報があふれています。

一方で、自分には無関係と感じている人たちやナイーヴな人には、記事や書籍のストレートすぎるテーマが壁になり、目さえ通してもらうまでのハードルが高く、苦労した経験が数多くありました。

 よって、今回のテーマに限らず、生きづらさ(医療・生活・・・例えば発達障害、アスペルガー、男性更年期など)に関して「生活しやすくするヒントがもらえそうだよ!」くらいの軽いノリで勧めたり、受診、サービスを利用するきっかけや、話を伝えやすくするツールが意外と少なく、読んだり学んだ者がその内容を自ら通訳して伝えることに苦労を伴うことが多くありました。
よって、今回の特集のようなしっかりとした専門的な内容であり【興味なく受動的対象者が試しに読んでみようと思わせる”タイトル”の記事や書籍づくり】にも、並行して是非力を入れてください!お願いします。

 余談ですが、”専門家の書く男性更年期の本”で家族がようやく手にしてくれた本のタイトルは『男が40を過ぎてなんとなく不調を感じ始めたら読む本(著:秋下雅弘)でした。中身もあるが、タイトルはやわらかい・・・探すのが大変でした。

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