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夫婦関係と発達障害(上)母離れできない夫、妻の苦痛

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アスペルガー症候群のパートナーシップについて語る宮尾さん

 専門家シリーズ、次は発達障害の一種である「アスペルガー症候群」に詳しい「どんぐり発達クリニック」院長の宮尾益知さんです。宮尾さんは、小児神経内科、児童精神科がご専門ですが、子どもの発達障害を診ているうちに、子どもが思うように改善しない場合には両親のコミュニケーションに問題があることに気付き、大人の発達障害、特に夫婦、家族関係の問題も考えながら診るようになりました。性とパートナーシップで体験談を取材してきたところ、意図せずして2組のカップルでアスペルガー症候群が影響していたことがわかりました。100人に1人が抱えているとも言われるこの発達障害は、もしかしたら気付いていないだけであなたや身近なカップルの性とパートナーシップに影響を与えているかもしれません。

 ――まず、アスペルガー症候群とはどのような発達障害なのですか?

 「今は、『自閉症スペクトラム障害(ASD)』という診断名に統一されていますが、一般に『アスペルガー症候群』や『自閉症』という言葉もまだよく使われていますね。ASDは、社会生活に必要な三つの能力に問題がある発達障害です。三つの能力とは、①コミュニケーション能力②想像力③人と社会的関係を持つ能力です。ASDのうち、知的能力が正常範囲以上で、言語発達の遅れもない方をアスペルガー症候群、知的発達に遅れがある方をカナー型自閉症と言います。アスペルガー症候群は、真面目で規則を守り、決まったパターンの仕事については集中力があり、専門的な職種で力を発揮するなどの長所がある一方、変化に弱い、周りの空気が読めない、言葉で表現するのが苦手で誤解されやすい、社会の暗黙のルールがわからないなどの短所があります。その人の個性や生い立ち、社会的な経験によって様々な症状が表れるので、一人一人抱えている問題も異なります」

 ――アスペルガー症候群はどのぐらいの割合でいると言われているのですか?

 「アメリカでは130人に1人ぐらいと言われていますが、日本でもおおむねそれぐらいだと思われます。男性の方に多く、男女比は5:1とも言われていますね。知的能力が高いため、就職も結婚も通常通りされている人が多いので、大人になるまで気付かれなかった『大人の発達障害』として最近、注目されるようになりました。中には、医師や弁護士、企業の管理職など社会的に高い地位にある人も数多く含まれています」

 ――アスペルガー症候群の夫を持った妻が抱える問題も注目されていますね。

 「夫とのコミュニケーションがうまくいかないのに、周囲の人には『真面目ないい旦那さんじゃないの』とか『男なんてたいていそうよ』と受け流され、わかってもらえないことで、自分が悪いと考えてしまい自信を失ってしまいがちです。心の葛藤から、心身に苦痛が生じてしまう状態を『カサンドラ症候群』と、イギリスの臨床心理士であり自身も同じ状態であるアストンにより提唱されました。カサンドラとは、ギリシャ神話で太陽神アポロンに予知能力を授けられたトロイの王女の名前で、トロイの滅亡を予知して周囲に伝えるのですが、信じてもらえずにトロイは滅亡してしまいます。周りに夫の問題を理解してもらえないアスペルガー症候群の夫の妻も似たような状況に置かれるためということです。偏頭痛や体重の増減、自己評価の低下や抑うつ、パニック症候群などが典型的な症状です。海外から始まりましたが、日本でも同じ問題を抱えた女性たちの自助グループ活動が始まっています」

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14件 のコメント

果たして本当に障害?

ごまちゃん

学問として確立されているので、否定が難しいと思いますが… 損得で判断してきた、というケースについては障害ではなく、文化が生み出した弊害だと思うん...




学問として確立されているので、否定が難しいと思いますが…

損得で判断してきた、というケースについては障害ではなく、文化が生み出した弊害だと思うんですが。

今や拝金主義の日本といいますか、日常が損得の文化で溢れているし、そうなるのは何も不思議ではないと思います。この根拠について語るには、論文のようになってしまうので、到底足りませんが。

女性の場合、本能的に無償の愛に対して抵抗が少ないという傾向があるように思います。母親の子育てなんかは典型的で、損得で考えていたら、到底出来るものではありません。

本能的に備わっていない上に、母から受けてきたばかりの男性が、そこに理解を示すのは元々至難の業ではないでしょうか?

ましてや、ただでさえ外で働いていて、家事に関わる時間が少ないのに、積極的に理解を示そうという動機すら起きる状況にもならないと思います。

障害ではなく、長年の文化形成の影響が大きいと私は思うのですが。

ある意味、生活習慣というか、その人が触れてきた文化思想の問題であって、障害という捉えかたには疑問があります。

ここまで障害として概念が確立されてしまっては、遠吠え程度にしか受け取られないでしょうが、私は発達障害と定義されている概念の多くに疑いを持っています。

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発達障害は障害者ですか?

おひとりさま

このコラムを非常に興味深く読ませていただきました。 私の父も人の話を聞かない、トンチンカンな事を言う人です。プライドが高いので専門医にかかって診...

このコラムを非常に興味深く読ませていただきました。
私の父も人の話を聞かない、トンチンカンな事を言う人です。プライドが高いので専門医にかかって診断してもらうことはないでしょう。父の妹も同じように人の話を聞かない、人の気持ちを理解できない人です。今まで自己中心的な人だと思ってましたが発達障害なのかもしれません。
周りの人特に家族が苦労するのですが本人は全然気にしないというか悪気がないので改善してもらうことは難しいです。
私自身はADHDではないかと思うのですが片付けが苦手で周りの人とも上手くやっていけません。現在は失業中です。前の職場で酷い目に遭ってそれがトラウマとなり就職活動に前向きになれません。今後どうすればいいか?途方にくれてる日々です。

とはいえこのコラムとコメントは参考になりました。
ありがとうございました。

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お願い(興味のない人への対応)

ひよこ

3回目の投稿・・・最後に、先生や記者さんへのお願いがあります。最近は、大人の生きづらさについて様々な分野の研究・分析や広報が進んできていて、私の...

3回目の投稿・・・
最後に、先生や記者さんへのお願いがあります。

最近は、大人の生きづらさについて様々な分野の研究・分析や広報が進んできていて、私のように自らが知りたいと思うタイプの人間には、内容の質はピンキリですが、探せば探すだけ多くの書籍やネット情報があふれています。

一方で、自分には無関係と感じている人たちやナイーヴな人には、記事や書籍のストレートすぎるテーマが壁になり、目さえ通してもらうまでのハードルが高く、苦労した経験が数多くありました。

 よって、今回のテーマに限らず、生きづらさ(医療・生活・・・例えば発達障害、アスペルガー、男性更年期など)に関して「生活しやすくするヒントがもらえそうだよ!」くらいの軽いノリで勧めたり、受診、サービスを利用するきっかけや、話を伝えやすくするツールが意外と少なく、読んだり学んだ者がその内容を自ら通訳して伝えることに苦労を伴うことが多くありました。
よって、今回の特集のようなしっかりとした専門的な内容であり【興味なく受動的対象者が試しに読んでみようと思わせる”タイトル”の記事や書籍づくり】にも、並行して是非力を入れてください!お願いします。

 余談ですが、”専門家の書く男性更年期の本”で家族がようやく手にしてくれた本のタイトルは『男が40を過ぎてなんとなく不調を感じ始めたら読む本(著:秋下雅弘)でした。中身もあるが、タイトルはやわらかい・・・探すのが大変でした。

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