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子どもの「浮き指」増加、転倒・足変形の原因にも
子どもの足に異変が起きている。指が地面に着かず浮いた状態の「浮き指」になっている子が多いという。病気ではないが、ふらつきや足の痛みにもつながりかねない。原因や対策を探った。
11月下旬、東京都品川区の区立戸越小学校を訪ねた。朝礼の最中、子どもたちは左右に揺れたり、軽く屈伸するようにリズムを取ったり、じっと立っていられない様子だ。養護教諭の小沢京子さんは「足指をきちんと使えていないから、姿勢を保てないのでしょう」と話す。
小沢さんによると、子どもたちの8割に、足指が地面に着かない「浮き指」が見られる。25年前から足型を調べており、10年前に比べ倍増したという。
兵庫教育大名誉教授の原田
「浮き指だと足裏の接地面が狭まり、体が安定しにくくなる。指で踏ん張れず、転倒にもつながりやすい」。子どもの姿勢改善に取り組む、東京の虎ノ門カイロプラクティック院院長、碓田拓磨さんは、そう指摘する。
原田さんは、猫背を心配する。足指が浮いて体が安定しないため、バランスを取ろうと、ひざが曲がり、腰が落ち、肩が前に出るからだ。また、そのままにしておくと、大人になって足の変形や痛みに悩まされる可能性も高くなるという。
浮き指が増えた背景には、子どもが足を使わなくなったことがある。
例えば、歩数の減少だ。文部科学省などの資料には1979年の小学生の歩数は1日2万7000歩とあるが、4年前の東京都の調査では平均歩数は約1万1000歩だった。
鬼ごっこのような「群れ遊び」も減った。原田さんによると、周囲の予想外の動きに反応して止まったり、駆けたりする鬼ごっこは、子どもの足の発達に役立っていた。
室内でも靴下をはいて過ごすなど、はだしになり足指を解放する機会も少ない。
対策として、戸越小では毎朝、片足で立ってバランスを取ったり爪先立ちしたりする体操をしている。
浮き指対策をした靴も登場している。スポーツ用品メーカー「ミズノ」は、立体的なアーチのある中敷きを設け、自然に足指が着くようにした靴を発売。直営店などで「足型測定」をして、変形への注意喚起もしている。
地域ぐるみで啓発に取り組む例も出てきた。
長野県佐久市では昨年、市や病院や学校、靴店らが「佐久市足育推進協議会」を設立。子育て情報誌で足の発育過程の解説や、小学校で足型計測や歩き方の調査を始めた。今年9月には、佐久大学に「足育サポートセンター」を開設、毎週、個別相談に応じている。
ある母親(45)は、4歳の息子の爪を切っていて指が浮いていることに気づき、同センターを訪れた。きつくなった上履きをはき続けていた影響とみられ、指を使う体操や靴の選び方を教わった。毎晩、足を使う遊びに取り組み、「足指を使うのが上手になってきたと思う」と話す。
同協議会会長で佐久大学副学長の宮地文子さんは、「子どもの足は柔らかく、本人は痛みや違和感を感じにくい。保護者は子どもの足を注意して見てあげてほしい。昔とは生活環境が変わり、意識して足を使うことが大切です」と話す。(大石由佳子)
足の機能や靴の研究を行うNPO法人「オーソティックスソサエティー」理事長で整形外科医の内田俊彦さんの話
子どもの足の変形は、浮き指のほか、
そこで重要なのが靴選びだ。靴は中敷きが取り出せるものを選び、中敷きでサイズをチェックしてほしい。子どもを座らせて素足で足を浮かせ、取り出した中敷きをかかとから合わせる。爪先に1センチの余裕があれば、ちょうどいい。5ミリ以下なら、サイズアップを。靴ひもなどでしっかり固定できることも大切だ。
3歳を過ぎると、子どもの足は1年に1センチ程度成長する。「成長するから」と大きめの靴を買わず、正しいサイズを選んでほしい。
記者も「浮き指」判明
◎取材を終えて 計測したら、自分も「浮き指」だった。なんと、全部の指が浮いていた。猫背でパタパタ歩くのが癖なのだが、浮き指の影響か。長く歩くと、以前より疲れる。
3歳の息子の指も気になり靴店で計測器に乗せてみたが、計測は「気をつけ」を10秒ほど維持できる年頃になってからと言われた。自分は遅すぎたかもしれないが、息子の足は大切に育てたい。足指を使う遊びなら、今から一緒にできそうだ。
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