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オトコのコト 医師・小堀善友ブログ

妊娠・育児・性の悩み

父親の高年齢化が子供に影響する良いこと・悪いこと

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 国内の初産年齢は30歳を超えましたが、当然父親の年齢も高齢化してきています。これは日本だけの話ではないようです。

 オーストラリアでは、ここ20年間で父親となる平均年齢が3歳上昇しており、ドイツではなんとたった10年間で2歳上昇しているといいます。

 同様の傾向は先進国各国で起こっています。社会的・経済的な影響や、離婚率の増加により高齢再婚時に出来た子供が増加していることが指摘されています。

 父親の年齢の上昇はどんな影響を及ぼすのでしょうか?

 まず、精液の量が減り、精子数が減少することが知られています。

 自然妊娠率も下がります。ただし、体外受精や顕微授精では、妊娠・出産率が変化しないとの報告があります。

 一方、父親の年齢が上昇することで、死産率や低体重児、また早産児のリスクが上昇するとの報告もあります。

 原因は、二つあります。

 一つは精子のDNAへのダメージです。

 もう一つは精子の染色体の数が多くなったり少なくなったりすることが起こることです。これを異数性といいます。

 これらが起こることにより生まれる子供の、自閉症や統合失調症などの精神的疾患、アペール症候群、クルーゾン症候群、マルファン症候群などの非常に特殊な遺伝的疾患、MEN2Aまたは2Bという内分泌疾患が起こる可能性が高くなるのです。

 そうなると、父親の年齢が高くなると悪いことしかないのでしょうか?

 答えはNOです。良いこともあります。それは、テロメアの話です。

 テロメアというのは、染色体末端に存在するDNAの繰り返し配列で、細胞分裂の時に遺伝子が壊れないように保護する働きが知られています。実は、このテロメアは細胞が分裂するたびにだんだん短くなってきます。そして、テロメアが短くなりすぎてしまった細胞は、それ以上分裂できなくなってしまうのです。つまり、その細胞は「老化」した、ということになります。テロメアは細胞が分裂するに従い、年齢とともに短くなっていきます。テロメアが短い人の方が寿命も短いという報告もあるのです。つまり、テロメアは「細胞分裂の回数券みたいなもの」と考えられています。

 しかし、テロメアーゼという酵素の働きにより、なんととしをとるに従い精子のもと・精祖細胞のテロメアは長くなっていくということがわかっています。つまり、これを読み解くと、「歳をとった父親から生まれた子供は長生きする可能性がある」ということなのです。歳をとった男性の精子が人間を長生きさせるきっかけになる、若者ばかりの精子を用いると将来人間は短命になる、と説明している科学者もいます。

 ただし、長期間、生まれた子どもの経過を追えている信頼できるデータはまだありません。

 父親の加齢による悪影響(病気のリスク増加)と好影響(テロメアの延長)、それぞれどのような利益を将来の人類にもたらすことができるのか? また、テロメアの延長は、人間の進化のきっかけとなりうるのか? これらの研究は現在進行形で進んでいます。


 
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小堀善友 (こぼり よしとも)

泌尿器科医 埼玉県生まれ

2001年金沢大学医学部卒、09年より獨協医科大学越谷病院泌尿器科勤務。14年9月から米国イリノイ大学シカゴ校に招請研究員として留学。専門分野は男性不妊症、勃起・射精障害、性感染症。詳しくはこちら
主な著書は『泌尿器科医が教えるオトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)。詳細はこちら

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