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あなたの健康百科 by メディカルトリビューン

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電車通勤、徒歩・自転車通勤より生活習慣病リスク低い

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大阪・守口市での調査

 通勤に電車やバスなどの公共交通機関を利用している人では、自動車やオートバイを利用している人に比べて高血圧や糖尿病、肥満になる危険性が27~44%低いことが、大阪府守口市の就労者5,888人の健診データを解析した結果から分かった。関西医科大学医学部の辻久子講師(循環器内科)が、11月7~11日に米フロリダ州オーランドで開かれた米国心臓協会(AHA)の会合で報告したもので、自動車通勤よりも電車・バス通勤が健康的なのは多くの人が納得するところだが、徒歩や自転車で通勤している人と比べてもリスクが低かったという。

自動車通勤の3割超で高血圧・肥満

 これまでの多くの研究から、日常生活で徒歩や自転車で移動する時間・距離が長いほど、肥満や高血圧、糖尿病、心血管病、死亡などのリスクが低くなることが示されている。

 辻講師らは今回、鉄道やバスなどの公共交通機関が整備された守口市で、2012年に健診を受けた就労者5,888人(平均年齢61歳、男性37%)を対象に、アンケートから(1)通勤手段、(2)職場での活動度、(3)余暇時間での活動度―についてデータを収集。通勤手段は以下のように分類した(カッコ内は平均年齢)。

1.電車またはバス………………1,039人(49歳)
2.自動車またはオートバイ……1,361人(53歳)
3.徒歩または自転車……………3,488人(54歳)

 なお、自動車・オートバイ通勤者の33.4%が肥満、36.9%が高血圧、8.3%が糖尿病で、いずれも最も多かった。

最寄り駅まで歩く距離が徒歩通勤より長い可能性

 自動車またはオートバイで通勤している人を基準に分析した結果、電車またはバスで通勤している人の肥満リスクは42%減、高血圧リスクは28%減、糖尿病リスクは34%減と、生活習慣病になる危険性が大きく低下した。ところが、徒歩や自転車で通勤している人では、肥満リスクは24%減だったものの、高血圧と糖尿病のリスクはいずれも統計学的に意味のある低下が認められなかった。

 以上を踏まえ、辻講師は「公共交通機関を利用した通勤は肥満、高血圧、糖尿病の有病率低下と関連していた。したがって、自動車の代わりに電車やバスで通勤することは、体重や血圧、血糖の低下につながる日常的な活動になり得る」と結論。ただし、「公共交通機関を利用することで健康的になったのか、それとも公共交通機関の利用者はもともと健康的だったのかは不明」と付け加えた。

 さらに、徒歩・自転車通勤者よりも電車・バス通勤者でリスクが低かった点については「公共交通機関の利用者では、自宅から駅やバス停までの歩く距離が、徒歩・自転車通勤者の移動距離よりも長い可能性がある」と考察している。

 弊社医師向け情報サイト「Medical Tribune」では医師会員から、徒歩・自転車通勤よりも電車・バス通勤でリスクが低かったことに驚きの声が上がっているほか、以下のコメントが寄せられている。

「電車・バス通勤は乗車時の揺れで意外とインナーマッスルが鍛えられるのかも」
「立って待つ時間もあるし、乗り換えなどで歩くこと、ゆれたり押されたりして踏ん張ったり、やはりかなりの重労働と思います」
「他人が運転してくれ、自分は乗っているだけって楽だ。おまけに歩く。つまり、これが良いんだな」
「各群1,000~1,500人程度にしか過ぎず、通勤形態も余りにも単純にくくり過ぎでしょう。徒歩・自転車通勤者は多くは近くの人でしょうし、バス・電車は遠くの人でしょう。距離や通勤時間での層別化をした上で比較する必要がありますし、通勤形態以外の生活習慣の差も考慮しなければ...。自動車通勤が自身の健康にも、排気ガスを吸わされる沿道住人の健康にも宜しくないのは自明とは思いますが」

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kenkohyakka

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