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予防医学研究者・石川善樹の「続けたくなる健康法」

コラム

笑いに変える力

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 こんにちは。

 予防医学研究者の石川です。

 少し前の話なのですが、北海道にある増毛町の方から「健康づくりの講演会をしていただけませんか」という依頼をいただきました。

 「おー、増毛町か!」

 と思った私はすぐに依頼を引き受けました。

 というのも、たまたまその時、小説家・吉村昭さんの「赤い人」という北海道の開拓に関する物語を読んでいて、ちょうど増毛町に関する話を目にしたところだったのです。

 「これは何かのご縁だろう!楽しみだな!」

 そう心待ちにしながら、つい先日、念願の増毛町に行ってきました。

 新千歳空港から電車で約3時間半。

 まさにドラマ「北の国から」を彷彿ほうふつとさせるような景色の中、のんびりと電車に揺られていたのですが、私の注意は景色よりも車内での会話に向けられていました。

 おそらくどこかの老人会の旅行だったと思うのですが、60~70代の方々が楽しそうにわいわいとおしゃべりに興じていました。

 自分の病気のこと、親の介護のこと、孫のこと、まだ子どもだった頃のこと、そしていつか入る墓のこと。

 次から次へと話題は尽きず、そのどれもがあまりに興味深かったので、失礼を承知でこっそりと会話に聞き耳を立てていました。

 するとある方が、「若いときはなんでこんなに苦労するんだろうかと思っていたけど、今にして思えば、あの時の苦労があるから、どんなことでもへっちゃらでいられるのよね」としみじみおっしゃっていました。

 私はその話を聞いて、「なるほどな~」と感心しました。若い時の苦労は買ってでもしろと言いますが、それは本当に真実なのかもしれないなと。

 仕事柄、私は高齢者の方々に「どうして今日まで元気にこられたのですか?」と聞く機会が多いのですが、色々とお話しすると「やっぱり若い時の苦労があったからかな・・・」とおっしゃる方はとても多いように感じます。

 もちろん、若い時に苦労したばっかりに、その後お体を崩されてしまった方もいると思いますが、一方でその苦労を力に変えた方々もいらっしゃいます。

 これは極端な例かもしれませんが、医療人類学者のアントノフスキーという学者が、ナチスの強制収容所にいた人々を研究したことがあります。当初は「あれだけつらい経験をしたのだからきっとその後メンタルを病んでいる方が多いだろう」と思っていたそうですが、調査を進めるうちに「むしろ普通の人以上にイキイキと輝いている人たちもいる」ことに気が付いたそうです。

 そんなことを思い出しながら、「同じ経験をしても、それが苦しみにしかならない人と、生きる力に変えられる人の違いはなんだろうか?」と改めて考えていたのですが、車内で同席している方々の楽しそうな様子を見ていて「あっ!」と気が付きました。

 「もしかしたら、それは笑いかもしれない」

 つまり、つらい経験を笑いに変えていける力を持っている人は、もしかしたら健康で長生きできるのではないだろうかと思ったのです。もしそれが正しいのだとすれば、それこそ小学校の時から「漫才の授業」を取り入れてもいいかもしれませんね。

 そんなこんなで、あっという間に3時間半が過ぎ、無事に目的地である増毛町にたどり着きました。

 「いやー、増毛町まで来て本当によかったな」

 とまだついたばかりなのに大いに満足したというのが今回のお話でした。

 また次回、よろしくお願いいたします!

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予防医学研究者・石川善樹の『続けたくなる健康法』_顔120px

石川善樹(いしかわ よしき)

 予防医学研究者・医学博士。(株)Campus for H共同創業者。1981年 広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学にて博士(医学)取得。「人がより良く生きるとは何か」をテーマとして、企業や大学と共同研究を行う。専門分野は予防医学、行動科学、機械創造学、マーケティング等。

 著書に「疲れない脳をつくる生活習慣」(プレジデント社)など。最新刊「ノーリバウンド・ダイエット」(なとみみわさんとの共著、法研)が2017年1月19日に発売。

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1件 のコメント

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志の輔落語に喝采

めざめたじいさん

 後期高齢者の二人住まい。互いに体調不良を訴える毎日です。 笑いが少ないどころか、ほとんどありません。 ユーチューブで志の輔落語を聞き、深夜、一...

 後期高齢者の二人住まい。互いに体調不良を訴える毎日です。
 笑いが少ないどころか、ほとんどありません。
 ユーチューブで志の輔落語を聞き、深夜、一人でにんまり。
 朝の一言が、一日を明るくしたり、暗くしたり。互いに気を遣いながらの生活です。

 日曜夕方、「笑点」を二人で見るのが、その週の決め手になるような気がします。

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