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知って安心!今村先生の感染症塾

コラム

ノロウイルス(後編) その時あなたは…今知っておきたい対応策

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 前回は、ノロウイルスの感染力などについてのお話でした。ごくわずかな量でも感染して、乾燥にも強いノロウイルス。すでに流行がはじまっており、日本各地から集団食中毒の発生も報告されるようになっています。今回の後編では、ノロウイルスへの予防策や、自分や家族が発症してしまったときの対応方法について、今知っておきたい情報をまとめてみたいと思います。

脱水対策が大切です

 発症初期の対応ポイントは、脱水を防ぐことです。残念ながら、今のところノロウイルスに対する直接の治療薬はありません。ノロウイルス胃腸炎を発症すると、頻回の嘔吐おうとや、ひどい下痢になることが多いため、初期の脱水への対応が重要になります。特に小さな子どもや高齢者は脱水に弱いので、嘔吐や下痢がはじまったら、早期に対応することが必要です。

 ノロウイルス胃腸炎は、通常は数日の経過で自然軽快していきます。学生や大人の多くは、1~2日を水分補給に気をつけていれば乗り越えることができるでしょう。しかし、吐き気が強くて口から水が飲めず、頻回の下痢も持続するならば、やはり脱水がすすんでしまいます。このような場合には、クリニックや病院で、点滴によって水分補給することも考慮されます。

脱水に便利な水のつくりかた

 下痢がひどいと、ナトリウムなどの電解質も失われます。大人なら、お茶や水に加えて、スポーツドリンクも追加。子どもの場合には薬局にいくと、「ORS (Oral Rehydration Solutionの略、経口補水液)」と呼ばれる製品など、専用のドリンクも売っています。

 「ORS」とは、もともとはコレラなどの脱水用に研究された経口補水液です。医療が十分ではなく点滴もできない途上国では、下痢が原因で多くの子どもが死亡していました。そこで、点滴に匹敵する効果がでるようにと、経口によって脱水を防ぐ補水液が研究されたのです。「ORS」は、吸収しやすい糖分濃度に調整され、下痢で失われる電解質が補給できるよう、適切な成分を配合してつくられています。

 実は、この必要な条件を最低限満たした水は、どの家庭にもある材料を使って作ることができます。ノロウイルスの症状は突然やってきます。その時に役立つ、自家製でつくれる補水液をご紹介しておきましょう。下痢のひどい子どもの場合には、病院に到着するまでの緊急対応に役立つはずです。

 この材料をよくかき混ぜれば完成です。

 初期対応では、とりあえずは脱水にならないように水分補給を優先します。下痢は、下痢止めなどで無理に止めないのが基本です。下痢を止めることで、症状が悪化したり長期化したりする可能性もあります(あまりにも嘔吐・下痢がひどいときには、やむを得ず止めることはあります)。また、嘔気や腹痛は、腸管が動くほど強くなります。嘔気や腹痛があるときには、仮に食べるとしても、消化の良いものにして腸の負担を下げてあげましょう。

家庭内の二次感染を防ぐために

 家庭内の二次感染を防ぐためには、本人の下痢エチケット(手洗い)と嘔吐物の処理がポイントです。下痢になったらトイレのあとの手洗いをしっかりとしてください。嘔吐物は乾く前に処理します。乾燥させてしまうと、ホコリといっしょに舞い上がり、ウイルスが口に入って感染してしまうことがあるからです。

 ノロウイルスは、症状が消失した後でもウイルスを排出しています。症状消失後であっても1週間以上、長いときには1か月間もの長い間、ウイルス排出が続く可能性があります。したがって、下痢や嘔吐が続いている場合に気をつけることは当然ですが、症状が良くなってからも手洗いをしっかりしておきましょう。症状のあった人が、トイレ後の手洗いをしっかりする。これが、家庭内での二次感染を防ぐために最も重要なポイントとなります。

 ちなみに、ひどい下痢の時には、トイレから出て手を洗うまでに触れる「水を流すレバー」「ドアノブ」「水道のハンドル」に触れる手を、おしりを拭くのと反対側にするという作戦もあります(これは、家庭内の感染を防ぐ裏技です)。

汚染されたものを処理する方法

 発症した人の便や嘔吐物を処理するために、使い捨ての手袋、マスク、エプロンを準備しておくのがおすすめです。ノロウイルスはアルコールが効きにくいため、処理をした人は流水と石けんで手を洗いましょう。

 医療現場では、ノロウイルスに汚染されたものを処理する時に、次亜塩素酸ナトリウムという消毒剤を使います。この消毒薬は、家庭で使っている塩素系漂白剤を薄めることで作ることができます。薄め方については、以下のページを参考にしてください(作業時には、しっかりと換気をするようにしましょう)。

『感染性胃腸炎(ノロウイルスを中心に)』東京都

 http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/gastro/

『ノロウイルスの消毒方法』内閣府食品安全委員会

 http://www.fsc.go.jp/sonota/dokukesi-norovirus.html

病院や施設でも要注意

 ノロウイルスは、基本的にアルコールが効きにくいウイルスです。病院や施設でよく使われているアルコール性の手指衛生剤では効果が落ちるため、ノロウイルスを強く疑った時には「流水と石けんによる手洗い」が必要となります。下痢患者のオムツ処理、大部屋での嘔吐対応にも気をつけましょう。しっかり対応しないと、同室者や処理したスタッフが感染してしまい、大流行の原因となります。

調理者の手洗い徹底を

 ノロウイルスの流行期には、調理者の感染を原因とした集団食中毒が、全国各地から報告されるようになります。前述したように、症状が良くなった後も、長い間ウイルス排出が続く可能性があります。また、ウイルスに感染しても、ごく軽症ですむことや、ほとんど無症状の人もいます。トイレ後の手洗い、調理前の手洗い。これは、あたりまえのことだと思うでしょうが、実際にはしっかりとできていないことも多いのです。一般的な食中毒は起こしていなくても、感染力の強いノロウイルスは、それを見逃しません。手洗い励行…今一度ご確認を!

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知って安心!今村先生の感染症塾_201511_120px

今村顕史(いまむら・あきふみ)

がん・感染症センター都立駒込病院感染症科部長

石川県出身。1992年、浜松医大卒。駒込病院で日々診療を続けながら、病院内だけでなく、東京都や国の感染症対策などにも従事している。日本エイズ学会理事などの様々な要職を務め、感染症に関する社会的な啓発活動も積極的に行っている。著書に『図解 知っておくべき感染症33』(東西社)、『知りたいことがここにある HIV感染症診療マネジメント』(医薬ジャーナル社)などがある。また、いろいろな流行感染症などの情報を公開している自身のFacebookページ「あれどこ感染症」も人気。

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1件 のコメント

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アメリカでは・・・

かきつばたもこ

ノロウイルスでは普通はクリニックにはかかりません。行く病院が普通は決まっているので、そこに電話するとナースから詳しく指示されます。例えば最初の2...

ノロウイルスでは普通はクリニックにはかかりません。
行く病院が普通は決まっているので、そこに電話するとナースから詳しく指示されます。
例えば
最初の2時間は何も口にしないで
2時間後から、スプーンで水分をあげてください。一口飲ませて大丈夫そうなら2口まで1時間おきに。
その後落ち着いていたら(何時間後か言われる)スポーツ飲料をアイスキャンディーにして与えてください。
点滴のようにゆっくり口に入るから。

などなどと、症状をしっかり聞いてくれてから、細かく適正な指示をもらえます。
それで、こういう症状になったらまた電話してください、という感じで終わります。

子供が小さいころは何度も流行し、毎年お決まりのようにげーげーされましたが、一度もクリニックに行った事はないです。

指示通りにすると、たいていは翌日に収まる、という感じです。

ただ、子供より、大人の場合は大変でしたが、一度かかってからは、徹底的に予防してうつったことはありません。

日本はすぐに病院にかかりすぎだと思いますし、病院の指示があいまい、という経験もあります。
水分を取ってどんどん取って、と言われたのでガンガン飲ませたらガンガン吐かれました。
新米ママにはどういう風に水分をどんどん摂ったらいいのかがわかってなかったのです。

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