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がん在宅療養ガイドブック…患者や家族、何が最善か

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対話形式で助言

「ご家族のための在宅療養ガイド」を手にする渡辺さん(仙台市の医療フォーラムで)=冨田大介撮影

 2人に1人ががんになる。患者や家族が、在宅での療養生活で、納得や満足を得るにはどうすればよいか。専門家や患者、市民らが知見や経験を持ち寄り、「家族目線」のガイドブックを作った。

 タイトルは「ご家族のための がん患者さんとご家族をつなぐ 在宅療養ガイド」。長年、がんに関する情報の普及に取り組んでいる帝京大准教授の渡辺清高さん(44)をまとめ役に、24人が議論を重ねた。

 在宅療養を選んだ膵臓すいぞうがんの夫(59)と暮らす専業主婦の妻(55)が、相談員に悩みを打ち明け、アドバイスを求める形で話が進む。まずは、「何でも一人で抱え込む必要はない。夫と一緒に支え合うぐらいの気持ちで」という心構え。「一番大切にしたいことを、本人と家族が共有する」など、ギクシャクしないためのコツが説かれる。

 妻は、在宅医や訪問看護師、ケアマネジャーら医療や介護のスタッフとの交流をきっかけに、「こまめな相談や連絡」が大切なことも知る。

 夫はやがて衰弱し、生返事しかしなくなる。相談員は「普段と同じように見守り、声をかけて」と助言し、どんな状態ならスタッフの支援が必要かを示す。夫が「強い恐れや不安、悲しみを何日も訴え続ける」「今までになく、自らを卑下し、罪悪感を訴える」ような時だ。

 別れが近づいてきた際は、「水をほしがる」「すでに故人になった家族や知人について語る」「眠る時間が長くなり、無呼吸が表れる」などの兆候がある。それらが家族の目にどう見えるのか、家族がどんな心境になるのかも対話の中で示される。

 各章ごとにまとめや、別の家族の体験談を添えた。ガイドブックに描かれた迷いや不安を自分におきかえて読みながら、最期に至る流れをイメージできるように工夫した。

 渡辺さんは2003年から5年間、東大病院消化器内科で勤務した。肝臓が専門で、肝炎から肝硬変、肝がんと進む患者や家族に、注意点や先々の見通しなどを丁寧に伝えた。だが、医療用語を理解するのは難しく、せっかくの情報が家族の間で共有されることが少ないことに気づいた。多くの患者や家族が不安なままでいるのだ。

 08年に国立がん研究センターがん対策情報センター(東京都)に移り、がんの基礎的な情報を整理し、社会に普及させる仕事に就いた。14年から現職。今回のガイドブックは、がんとの関わりの中で最も個別性が高く、意思決定の難しさに直面する「在宅での療養」や「終末期」を対象とした。

 実際は、病状も家族関係もさまざまで、対応や過ごし方に「正解」はない。しかし、それぞれの段階で、患者も家族も主体的に考え、決断せざるを得ない時がくる。「自分たちには何が最善か。それを考えるきっかけにしてほしい」と、渡辺さんは語る。

 ガイドブックの内容を踏まえ、今月8日、仙台市で医療フォーラムが開かれた。250人の参加者のうち4割を、医療や介護の担い手が占めた。支援に関わる全員が「家族の目線」や「暮らしの目線」を共有する意識を持つことで、初めて地域にあった連携の形が見えてくる。ガイドは、そのきっかけにもなるだろう。

 メモ ガイドブックは、公益財団法人・正力厚生会の助成で活動する「地域におけるがん患者の緩和ケアと療養支援情報プロジェクト」のホームページ(http://homecare.umin.jp/)からダウンロードできる。冊子は、全国のがん診療連携拠点病院など約500施設や都道府県に約2000冊が配られる。(鈴木敦秋)

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