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多剤耐性の結核…新薬 服用管理が重要

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 かつて「不治の病」とされた結核。新たに診断を受けた患者は昨年、統計をとり始めた1951年以降初めて2万人を下回った。ただ、死者は2000人を超え、複数の薬が効かない多剤耐性菌の問題も深刻だ。昨年、約40年ぶりに耐性菌に対応する新薬が登場した。

 結核は、長さ1~4マイクロ・メートル(1マイクロは100万分の1)、幅0・3~0・6マイクロ・メートルの細長い形をした結核菌が元で発病する。せきやたん、発熱、寝汗の症状が出る。放っておくと肺の奥の気管支や肺胞で炎症が起き、呼吸不全で死に至る。

 結核菌は空気感染で広がるが、感染してもすぐに発病するとは限らない。免疫に抑えられて肺の奥で冬眠状態となり、高齢になって発病するケースも多い。また、エイズ患者、人工透析や免疫抑制剤の治療を受けている人らはリスクが高い。

 症状は風邪やぜんそくと似ているが、結核予防会複十字病院(東京都)診療主幹で呼吸器内科の吉山崇さんは「せきが長引くなら病院で診断を受けるのが望ましい。レントゲン検査で発病の疑いを発見できる」と話す。たんをとり、菌の培養や遺伝子分析などで確定診断を行い、どの薬が効くかを調べる。また、感染の有無も血液検査で分かり、薬の服用で発病を予防できる。発病者が周りにいたら検査を受けるのが望ましい。

 厚生労働省によると、発病者数は統計を取り始めた戦後直後の51年は約59万人いたが、昨年は1万9615人にまで減った。同じ時期、死亡者数も12万人を超え死因のトップだったが、昨年は2099人だった。治療のための抗生剤が複数登場したおかげだ。

 だが、標準治療で使われるイソニアジドやリファンピシンなどの治療薬が効かない多剤耐性の結核菌が出現し、世界中で問題になっている。国内でも多剤耐性菌の発病者が年数十~100人出ている。

 多剤耐性菌に対し、効果を発揮する新治療薬「デラマニド」が昨年9月、大塚製薬(本社・東京都)から発売された。結核菌は脂質成分を多く含む細胞壁に覆われているが、デラマニドは従来の薬とは違うメカニズムで脂質の生成を抑えて菌を殺す。

 結核の標準的な治療は、イソニアジドとリファンピシンの内服薬2種類を6か月、別の内服薬や注射薬を初期の2か月に併用する。これまでの薬では治らない可能性が高いと判定された時に、デラマニドを3~4種の治療薬と合わせ使用する。デラマニドは6か月以上、残りの薬は菌の排出がなくなった後も引き続き1年半使う。

 世界9か国で多剤耐性菌患者481人を対象に行われた臨床試験では、デラマニドとその他の薬を2か月併用すると4割強の人で菌の排出がなくなり、デラマニドを使わない場合の3割弱を上回った。

 ただ、不整脈の副作用が出ることがあり、医療機関では、服用する患者の心電図を定期的にチェックしている。

 せっかくの新薬だが、服用を中断すると、新たな耐性菌を生みかねない。使用する医療機関は、耐性菌の治療に通じた医師が在籍し、服用確認の体制があるなどの条件を満たす必要がある。

 患者は入院中、看護師の前で服用を行う。外来時も定期的に保健所に通うか、保健師に自宅に来てもらい、服薬の確認を受ける。国立病院機構近畿中央胸部疾患センター(大阪府)感染症研究部長の露口一成さんは「結核治療では耐性菌を作らないよう、しっかり薬を飲み続けることが大切」と強調している。
(米山粛彦)

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