茂木健一郎のILOVE脳
yomiDr.記事アーカイブ
旅は、まだまだ続く
旅は人生であり、人生は旅である。
旅には、必ず、始めと終わりがある。人生という旅は、いつまでそれが続くのか、わからないわけですが、人生の中の旅は、とりあえずの終わりと始まりがあります。
私は、この原稿を、マレーシアのジョホールバルの近郊のホテルで書いています。今から約2時間後、コンピューターやインターフェイスをテーマにする国際学会で、90分の基調講演をしなくてはなりません。
用意したパワーポイントのファイルは、160枚。
あと少しで、私の
12月から読売プレミアムで新連載
さて、今回、なぜこのように「旅」について考えているかというと、実は、みなさまにご報告しなければならないことがあるのです。
これまで、112回にわたってご愛読いただきました「茂木健一郎のI Love 脳」でありますが、今回を持って、一つの区切りとさせていただくことになりました。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
思い返せば、この2年余りの歳月の中で、なかなか体重が落ちずに、読者のみなさんをヤキモキさせたり、無事減量に成功する中、東京マラソンを完走したりなど、走馬灯のように、さまざまな思い出がよみがえってまいります。
読者の皆さまと、2年間の、健康と脳をめぐる旅をしてきた、という思いがこみ上げてまいります。
本当に、ありがとうござました。
そして、12月からは、読売プレミアム(および読売新聞デジタル)で、「茂木健一郎の実践脳トレ塾」というタイトルで、新たに連載させていただくことになりました。
一つの旅が終わり、新たな旅が始まります。
もしよろしければ、次なる新たな旅も、お付き合いください!
さてさて、今回のマレーシアの学会への出席のための旅ですが、主催者から送られてきたチケットが行きは台北、帰りは上海経由だったのです。
最初は、「なんだか面倒だなあ」と思いました。
直行便もあるのに、わざわざ経由して行くのは手間がかかる、と思ったのです。
ところが、実際に旅して見ると、経由便ならではの出会い、発見がありました。
台北の空港に降り立つと、飛行機の乗り換えの看板が見えてきました(写真1)。なんだか、日本ではあまり見ない漢字です。
日本、中国、台湾は、同じ漢字圏とは言いながら、使う漢字が少しずつ違います。
それが、個性のようで、つながりがあるようで、何とも言えない感覚を与えてくれます。
経由(トランジット)とはいえ、空港内で使われるのは、当然のことながら、その国の通貨。
台湾に最後に旅をしたのは数年前のことで、出発前、その時のお札の残りを何枚か、ポケットに忍ばせていました。
さっそく、自動販売機を見つけて、コカコーラを購入(写真2)。
このような時、現地通貨を使うことができると、まるで言葉が通じた時のような、ある種の
特に、今回の私のように、数年前の旅行の時の名残のお札だったりすると、果たして今も使えるのだろうか、というちょっとしたスリルを感じたりするのです。
現地のリアリティーを実感
今度は、台北からシンガポールへ、再び機上の人に。
私が乗った飛行機は、シンガポールを経由して、インドネシアのスラバヤまでの便。
スラバヤは、インドネシア第二の都市で、古くから中華系の方々が住んでいたようです。
台湾、シンガポール、そしてスラバヤをつなぐ、人の縁、ネットワーク。
単純に、東京からシンガポールへ直行便で飛んでしまっては見えないアジアの現状が、感じられてきます。
飛行機で見るフライトマップには、今国際的に何かと騒がしい海域が映しだされています(写真3)。
日本でニュースを見ているだけでは、実感できない、現地のリアリティーのようなもの。
旅をする歓びは、実に、ここにあるといえるでしょう。
シンガポールのチャンギ空港は何度も通りましたが、そこから陸路マレーシアに入るのは、初めて。
国境の橋では、シンガポール側で出国審査が、マレーシア側で入国審査が行われ、国境のものものしさがありましたが、一方で、バイクや自動車で通勤しているような人の群れも見られ、両岸の密接な結び付きを感じさせました。
ホテルに着いたのは、22時過ぎ。
疲れていましたが、とりあえずビールで乾杯(写真4)。
部屋に戻る時に、自動販売機で、朝の食事用のカップラーメンを買いました。
私は辛いものが好きなのですが、なんと、トムヤンクン味!
そして、明けて今朝、カップを開けたら、凄い工夫がありました。
何と、フォークが二つ折りになって入っていたのです(写真5)。
実は、どうやって食べようと思案していて、部屋のスプーンを使おうか、などと思っていたのですが、これで解決。
土地が変われば、思わぬ発見、出会いがある。
二つ折りのフォークのような小さなところにも、それが感じられます。
そんなこんなで、そろそろ、学会に行く準備をしなければならない時間になりました。
この原稿を、ヨミドクターの編集部にお送りして、出かけなければなりません。
人生は、旅。旅は、人生。
旅は、まだまだ続きます。
これまで、「茂木健一郎のI Love 脳」をお読みいただき、ありがとうございました。
読売プレミアム(および読売新聞デジタル)で始まる新しい旅、「茂木健一郎の実践脳トレ塾」にも、どうぞ、お付き合いくださいますよう。