文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

教えて!yomiDr.

ニュース・解説

女性運動選手の健康調査…無月経・疲労骨折 10代で対策を

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 適度な運動は健康に良いが、激しい運動は体に負担をかけることもある。日本産科婦人科学会と国立スポーツ科学センター(JISS)は、女性の運動選手の約4割が無月経や月経不順に悩んでおり、疲労骨折の経験も一般の女性の約5倍に上るという調査結果をまとめた。女性の特性に配慮した選手の育成環境を整えることが必要だ。

 調査は、各種競技に日本代表として出場する女性選手と大学の体育会で運動する女性選手計約1600人に疲労骨折の経験や月経の状態を尋ね、一般の女子大学生約500人と比較した。これまで女性トップアスリートでは疲労骨折の経験や無月経が多いことが知られており、女性選手全体の実態を調べるのが狙いだった。

 女性選手の約4割が無月経や月経不順と回答。健康指導を受ける機会の多い日本代表選手より、むしろ大学の体育会で活動する選手の方が割合は高かった。疲労骨折の経験をした選手は、日本代表、大学の体育会でともに約2割を占め、一般女子大学生の約5倍に上っていた。

 種目別では、マラソンなどの陸上中長距離や新体操・体操など体重管理が求められる競技で疲労骨折の経験者や無月経が目立った。体格の指標を示すBMI(標準値18・5~25未満)でみると、18・5未満のやせ形の選手は2割以上が無月経で、標準体形の5倍以上と極端に多かった。やせ形の選手は、疲労骨折の経験も標準体形の約2倍に上っていた。

 女性選手が激しい運動をして、十分な食事をとらないと、エネルギー不足に陥り、無月経や月経不順が起きやすくなる。骨の形成に不可欠な女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が抑えられ、骨粗しょう症にもなりやすい。密接に関連する「エネルギー不足」「骨粗しょう症」「無月経」の三つの健康問題は、「女性アスリートの三主徴」と呼ばれている。

 特に、骨量を獲得していく10歳代に女性ホルモンが不足すると、身体への影響は大きい。今回の調査では、選手たちが疲労骨折を経験した時期は16~17歳に集中。一般の中学高校での部活動でも、何らかの対策が必要なことを示した。

 JISSの産婦人科医、能瀬さやかさんは、「特に10歳代の時は、運動量に見合う食事をとることが大事。無月経や月経不順がエネルギー不足のサインであることが多い。3か月以上、月経がなければ婦人科受診を」と呼びかける。

 2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、対策も進みつつある。JISSは、成長期の女子を教える指導者向けのハンドブックを作成。適切な栄養摂取量に関する研究も進めている。日本体育協会(日体協)は来年度から、女性選手の健康問題を、小中学生の指導者向けの研修課題に盛り込む。医療界でも、産婦人科医を対象とした講習会が開かれている。

 だが、課題も多い。女性選手の治療指針がなく、無月経への対応など、医師によって治療にばらつきがある。日体協が認定する「公認スポーツドクター」にも産婦人科医は少ない。

 選手の意識を変えることも重要だ。日本体育大准教授の須永美歌子さんによると、婦人科の診察台を思い浮かべ、受診を敬遠する学生もいるという。「中学、高校生はさらにハードルが高いと感じるのでは」と話す。

 無月経や月経不順は、将来の不妊につながる可能性がある。若いうちに十分な骨量を獲得しないと、閉経後、骨粗しょう症がひどくなり、寝たきりの危険因子にもなる。女性選手の生涯の健康を守るためには、中高生のうちから、指導者や保護者が極端な栄養不足に陥らないよう注意するとともに、健康に不安を抱える選手たちを早期に医療につなげ、適切な治療が受けられるような仕組みづくりが求められる。(佐々木栄)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

教えて!yomiDr.の一覧を見る

最新記事