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迫り来る外来生物の脅威(下)強い毒持つヒアリ、侵入阻止は困難

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 外来生物の脅威について取り上げたBS日テレ「深層NEWS」の後半で、国立環境研究所プロジェクトリーダーの五箇公一さんは、食料の多くを輸入に依存し、外国からの観光客も増えている日本で、外来種の侵入を防ぐことは難しいという前提で、国民に対する啓発を行うことが重要だと訴えた。また、外来種の増加は、日本古来の自然環境の劣化を示すメルクマールだとして、日本の将来の自然環境をどうしていくのか、国民的なコンセンサスをもとに、取り組みを考えていく必要があると強調した。(取材・構成 読売新聞編集委員 伊藤俊行)

◆抜群の「競争力」誇るアルゼンチンアリ

(図1)BS日テレ「深層NEWS」より
(図2)BS日テレ「深層NEWS」より
(図3)BS日テレ「深層NEWS」より

 アルゼンチンアリは、それほど強い毒を持っていないので、人体に対する影響はほとんどありません。ただ、他のアリや虫に対する攻撃やエサの取り合いといった競争する力が抜群に強いアリです。アルゼンチンアリも巣が非常に大きく、たくさんの女王アリが一つの巣の中でたくさん子どもを産み、大きな帝国のような巣を作ることができます。これは、スーパーコロニーと呼ばれています。普通のアリに比べ、極めて大きな巣を作ることで、他のアリや虫をどんどん駆逐する性質を持っています。

 たくさんの種類のアリがいたのに、アルゼンチンアリしか生き残らないという状態になれば、生態系の基盤が変わる恐れが非常に高いということを意味しています。

 数が多くなると、人の家の中にも入ってきて、家の中にある食べ物をどんどん持っていってしまいます。土の中に巣を作るというよりも、遮蔽物の陰のところで塊になって巣を作る性質をもっているので、巣自体が動くことができるのです。女王アリが子どもを産みながら動けますから、まさに動く絨毯じゅうたんのように巣を移動させ、家の中で巣を作ってしまうのです。

 危険度という意味では、まだ日本に入ってきていませんが、ヒアリを挙げたいと思います。強い毒性を持つ針を持っていて、ハチのようにお尻の針で相手を攻撃します。人間が刺されると、刺された瞬間が痛いばかりでなく、毒が体に回ってアレルギーが出ると、皮膚に発疹が出たうえ、発熱して呼吸困難に陥ってしまう可能性があります。自分では対処療法ができませんから、刺されたらただちに病院に行く必要があります。

 攻撃性が極めて強く、僕は一度、フロリダで野生化している集団を調査したことがあるのですが、巣に近づくと、一斉に集団で襲いかかってきました。足元からどんどんい上がってくるのですね。繁殖力も非常に強く、アリですから、気づかないうちにどんどんはびこる可能性が高い。繁殖力、分布拡大の速度、生態系と農業被害、そして人に対する影響という全てのリスクを持っているという意味で、危険度は五つ星です。

 ヒアリは、最初は南米から北米に侵入し、2000年代に入るとニュージーランド、オーストラリア、中国、台湾と、太平洋側に広がっています。BRICSの一つとして、ブラジルが農産物を太平洋沿岸の国々に盛んに輸出する過程で、おそらくヒアリも一緒に付いていったのではないかと考えられます。全ての農産品をくまなく検疫するのは困難です。とりわけ、日本のような輸入大国では難しいので、ヒアリが日本に入ってくる可能性は、極めて高いと見た方がいいでしょう。

 とすれば、入ってくることを前提に防除体制を確立しておくことが必要です。もちろん、検疫で見つけることも大事ですが、入ってきて定着している状況をいち早く見つけ、その場で根絶していくことを繰り返していかなければなりません。

◆リスク前提の啓蒙を

 日本では一度駆除した種類の害虫が、他国で抵抗性をつけて、再び入ってくるようなケースもあります。

 例えば、殺虫剤が効かなくなったスーパー南京虫は、既に日本に入っています。これは、トコジラミと呼ばれている吸血性の害虫です。日本では戦中、戦後、公衆衛生の悪さから、あちらこちらで発生していて、DDTという殺虫剤で防除しました。その後、日本の環境が良くなり、公衆衛生も発達して、随分と減りました。ところが、海外では、いまだにたくさん発生しているところがあり、駆除のために大量の薬剤を使い続けた結果、薬に抵抗性を持つ系統ができてしまいました。これが、国際的な人の往来の増加に伴い、衣服などに付着して日本に入ってきてしまったようです。別の薬の開発が進んでも、また抵抗性をもった種類が出てくると、イタチごっこです。できるだけ早期に見つけ、ある程度効く薬もあるので、封じ込め、防除することが重要になってきます。

 必ずしも、外来種が在来種より強いわけではありません。もともと住んでいた環境では天敵がいたり、競争相手がいたりして、弱かった生物でも、違う環境に来て、天敵がいない、競争相手がいないということになると、強くなるわけです。ツマアカスズメバチ、アルゼンチンアリ、ヒアリなどが、原産地でものすごい勢いで繁殖しているかというと、そんなことはありません。決まった数でしか生きられない生態系の中で進化しているからです。それが、全く違った進化をしてきた環境に入ることで、爆発的に増えてしまう可能性が出てくるのです。

 外来種を完全に防ぐことはできません。となると、入ってくることを前提にした啓発が重要になります。国民が、そうした外来生物が入ってくるリスクを知らなければ、例えばヒアリに刺されたときに、その可能性に考えが及ばないわけです。医療機関や保健所なども、リスクがあるという前提で、対策を考えていく必要があるのではないでしょうか。

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