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予防医学研究者・石川善樹の「続けたくなる健康法」

コラム

リラックスも「ためられる」

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 こんにちは。

 予防医学研究者の石川です。

 実はついこの間のことなのですが、ストレスがたまる出来事がありました。そういうとき私は仕事を早めに切り上げ、ファミリーレストランでパフェを食べながら、数学や物理の問題を解くようにしています。

 たとえばこの間解いたのは、私が大学一年生の時に習った「シュレディンガー方程式を導け」という物理の問題です。もちろんもう随分昔の話なので、勘と記憶を取り戻すのに時間がかかり、気が付くとすっかり深夜になっていました。

 この話を同僚にすると「いや、それはむしろ余計にストレスがたまるんじゃないか?!」と不思議がられたのですが、私にとっては落ち着く行為なのです。適切なたとえかどうか分かりませんが、同じ小説でも若い時と今では受ける印象が違うように、若い時に解いた問題も今解くと違った感慨を抱くものなのです。

 特に一つの方程式が導かれるまでには、人類の何百年、何千年もの英知が込められています。その悠久の歴史におもいをせながら、一つ一つ式を展開していくのはまるで、壮大な大河ドラマを見ているような気分になるのです。

 結局お店を出たのは深夜の2時過ぎでした。しかし、ファミリーレストランに入るときと出たときでは、明らかに気分が違います。落ち着きを取り戻した私は、冷たい夜風をほほに感じつつ、「これからはストレスがたまって心のバランスを崩さないようもっと予防的に行動しないといけないな」と反省しました。

 よく「ストレスがたまる」という表現を私たちは使いますが、実はその逆もしかりなのです。つまり「リラックスもたまる」のです。

 普段からリラックスをためているような人は、たとえストレスとなる出来事があったとしても、うまく対処することができます。私の場合は、数学や物理の問題を解きながら、人類の築いてきた知性に想いを馳せることがリラックスをためる秘訣ひけつになっているようです。

 しかし、普通に生活しているとどうしても雑事に流されてしまい、わざわざ時間をとってまでそのようなことに取り組もうと思えないものです。そしてストレスがたまると、それを発散させるためにバーッと気分転換をしたりしますが、それはあまり本質的な解決にはなっていないこともしばしばです。

 私の好きな詩人である与謝蕪村は、

 「限りある 命のひまや 秋の暮」

 という素晴らしい俳句を詠んでいます。

 忙しい毎日に流されることなく、「命のひま」を大事にリラックスをためていきたいなと思った秋の暮れでした。

シュレディンガー方程式
 オーストリアの物理学者エルヴィン・シュレディンガーが提唱した方程式で、量子力学で用いられる。難解で、理工系の大学生でも、きちんとわかっている人は少ないと言われている。
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予防医学研究者・石川善樹の『続けたくなる健康法』_顔120px

石川善樹(いしかわ よしき)

 予防医学研究者・医学博士。(株)Campus for H共同創業者。1981年 広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学にて博士(医学)取得。「人がより良く生きるとは何か」をテーマとして、企業や大学と共同研究を行う。専門分野は予防医学、行動科学、機械創造学、マーケティング等。

 著書に「疲れない脳をつくる生活習慣」(プレジデント社)など。最新刊「ノーリバウンド・ダイエット」(なとみみわさんとの共著、法研)が2017年1月19日に発売。

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1件 のコメント

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数学や物理?!

のリコピン

リラックスするために数学や物理の問題を解くなんて、頭の中が感嘆符で一杯になりました!!!何の見返りも求めないで、ひたすら好きなことに没頭するのが...

リラックスするために数学や物理の問題を解くなんて、頭の中が感嘆符で一杯になりました!!!
何の見返りも求めないで、ひたすら好きなことに没頭するのが、限られた人生の無限の醍醐味かも知れませんね。
これが天才的にうまい子供たちは、ストレスフリー、薔薇色の人生。でも、周囲の大人たちは・・・
大体幸せそうじゃないですね。大人しくしてるって、大人にとってもストレス一杯の生き方なんですね。
先生のように大人しく、アカデミックにリラックスをためる方法で、いつだって軽く脱力していたいものです。
それにしても、数学、物理ですか。
無力感で脱力できそう。

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