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最新医療~夕刊からだ面より

医療・健康・介護のニュース・解説

足底腱膜炎による痛み…衝撃波治療で緩和も

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 起床して歩き始めの一歩で足に痛みを感じたことはないだろうか。この痛みは、足の裏を通っている腱膜けんまくに原因がある「足底腱膜炎そくていけんまくえん」という病気によることが多い。痛みが長引くことがあり、飲み薬や注射による治療が十分でないと感じる患者に対しては、足裏に衝撃波を当て、痛みを和らげる治療が保険で行われている。

 足底腱膜は、かかとから足の指に向かって足の裏を通っている。足に体重がかかると伸びる性質があるが、加齢に伴い変性し、炎症により痛みが生じる。「足底筋膜炎」ということもある。

 患者は比較的、中高年の女性が多い。またランニングなどのスポーツで足に負担をかけたことで発症することがある。千葉大整形外科医師の山口智志さんは「足の痛みの原因としては非常によくみられる病気の一つ」と話す。

 足裏に均等に圧力がかかるように土踏まずの部分が盛り上がったインソール(中敷き)を靴に入れることが勧められる。痛むことが多いかかとの内側が地面に当たる際の衝撃を吸収する中敷きも販売されている。

 足をそらせたり、アキレス腱を伸ばしたりするストレッチは、痛みが出るのを抑える。

 痛み止めの飲み薬で十分でない時は、痛みがある腱膜に直接、炎症を抑える効果があるステロイド剤を注射する治療が行われている。山口さんは「ステロイド剤は組織を傷めるとの指摘もあるため、短期間で繰り返し注射を受けることは避けたほうがいい」と話す。

 こうした治療を半年以上続けても、十分に痛みがひかない患者には、一部の医療機関で体外衝撃波治療が行われている。整形外科向けに開発された機器で、腎臓や胆のうの結石を砕くのに使われている衝撃波と比べ、力が弱い。衝撃波が、痛みを伝える末梢の神経を壊したり、傷んだ足底腱膜の修復を促したりして、痛みを和らげると考えられている。

 千葉市在住のA男さん(50)はランニングや山登りが趣味。左足に痛みが出て、昨年秋に東京都内のクリニックで足底腱膜炎と診断された。かかとを地面に着くだけで強い痛みを感じるようになり、今年夏に千葉大整形外科で衝撃波治療を受けた。

 治療時間は20分程度。A男さんは「治療は非常に痛い」という。山口さんは「強い衝撃波の方がより効果的という研究結果が出ており、患者が我慢できるだけの強さで治療を行っている」と説明する。

 10月までに4回の衝撃波治療を終え、A男さんは「かかとを押しても痛みは以前ほどではない。運動した翌日の痛みも薄れてきた」と話す。山口さんによると、治療後半年の時点で約8割の患者で痛みの改善が見られるという。海外の研究でも、痛みの軽減に効果があるとする結果が出ている。

 3か月以内の治療は、回数に関係なく、かかる医療費は5万円。保険が利き、患者の支払額は自己負担の割合で違う。例えば、3割負担なら1万5000円だ。衝撃波治療は、石灰沈着性腱板炎やテニス肘(上腕骨外側上顆炎じょうわんこつがいそくじょうかえん)などに対しても痛みを軽減する効果がみられる。現在は保険適用外だが、一部の病院で治療に使われている。
(渡辺理雄)

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