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原記者の「医療・福祉のツボ」

医療・健康・介護のコラム

貧困と生活保護(16) 生活保護だと、いくらもらえる?

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 収入がどれぐらいなら、生活保護を受けられるのでしょうか。裏返すと、生活保護を受けると、どれだけの生活費が保障されるのでしょうか。具体的な金額を見ていきましょう。

 生活保護制度には今のところ、生活、教育、住宅、医療、介護、出産、葬祭、生業の8種類の扶助があります。世帯の最低生活費は、これらを合算したものです。

 そのうち医療、介護、出産、葬祭、生業の扶助は、具体的な必要に応じて決まるので、おおむね固定部分となる生活扶助、教育扶助、住宅扶助の2015年度の基準額を調べてみましょう。

 最後に、いくつかのモデル世帯について、固定部分の具体的な基準額を示します。

生活扶助額の計算方法

 生活扶助額は、第1類、第2類、各種の加算を足し合わせた金額です(施設入所中、長期入院中は別の計算)。第1類は、食費など個人単位で計算する費用、第2類は光熱水道費など世帯共通でかかる費用です。これらの金額は、世帯構成員の年齢、人数、地域によって違ってきます。

 地域については、物価水準を考慮した「級地」という区分があり、東京23区、さいたま市、横浜市、川崎市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市、神戸市やその近隣に適用される「1級地―1」から、地方の郡部などに適用される「3級地-2」まで、6段階に分かれています。どの市町村がどの級地にあたるかは厚生労働省の級地一覧表を参照してください。

1類は、個人単位の費用

 食事、衣類、理美容、教養娯楽などにかかる費用を想定した1類の基準額は、次の通りです。食べ盛りの年齢層の金額がやや多くなっています。

<1類の基準額>(2015年度) 単位:円
年齢 1級地-1 1級地-2 2級地-1 2級地-2 3級地-1 3級地-2
0~2歳 26660 25520 24100 23540 22490 21550
3~5歳 29970 28690 27090 26470 25290 24220
6~11歳  34390 32920 31090 30360 29010 27790
12~19歳 39170 37500 35410 34580 33040 31650
20~40歳 38430 36790 34740 33930 32420 31060
41~59歳 39360 37670 35570 34740 33210 31810
60~69歳 38990 37320 35230 34420 32890 31510
70歳以上  33830 32380 30580 29870 28540 27340

 上の表をもとに、世帯にいる個人ごとの金額を足し合わせたうえで、世帯の人数に応じて次の逓減率をかけたものが、その世帯の1類の額になります。世帯の人数が多いほど、食事などを経済的に用意できるという考え方が、2013年以降の保護基準見直しで強化されました。

<1類の逓減率>(2015年度)
1人=1.0000 2人=0.8850 3人=0.8350 4人=0.7675
5人=0.7140 6人=0.7010 7人=0.6865 (以下、略)

2類は、世帯の共通費用

 光熱水道費、日用品、家財道具、電化製品、通信費、交際費といった世帯共通の費用にあたる2類の基準額は、次の通りです(6人以上の世帯の額は省略)。

<2類の基準額>(2015年度)  単位:円
世帯人数 1級地-1 1級地-2 2級地-1 2級地-2 3級地-1 3級地-2
1人 40800 39050 36880 36030 34420 32970
2人 50180 48030 45360 44310 42340 40550
3人 59170 56630 53480 52230 49920 47810
4人 61620 58970 55690 54390 51970 49780
5人 65690 62880 59370 57990 55420 53090

 秋から春にかけては暖房費用として2類に「冬季加算」がついて増額されます(寒冷地ほど加算額が多い)。12月分には、年末年始の費用として期末一時扶助費が加わります。

 ここまでの生活扶助額の計算方法は、たとえば、30代のひとり親と4歳の子の世帯で1級地-1の大都市圏に住んでいる場合、次のようになります。

1類: (30代の38430円+4歳の29970円)×2人世帯の逓減率0.8850
2類: 2人世帯なので50180円
合計: 1類+2類=11万0720円(10円未満切り上げ)

 なお、生活扶助基準は、2013年8月から2015年4月まで、3段階にわたって引き下げが行われました。それに伴う経過措置が残っているため、ケースによっては、この計算方法より、すこし高い基準額になることがあります。

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原昌平20140903_300

原昌平(はら・しょうへい)

読売新聞大阪本社編集委員。
1982年、京都大学理学部卒、読売新聞大阪本社に入社。京都支局、社会部、 科学部デスクを経て2010年から編集委員。1996年以降、医療と社会保障を中心に取材。精神保健福祉士。社会福祉学修士。大阪府立大学大学院客員研究員。大阪に生まれ、ずっと関西に住んでいる。好きなものは山歩き、温泉、料理、SFなど。編集した本に「大事典 これでわかる!医療のしくみ」(中公新書ラクレ)など。

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