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迫り来る外来生物の脅威(上)危険なツマアカスズメバチ
国境を超えた人やモノの移動の速度と量が増す中で、外来生物が人や農産物などにまじって日本にやってくるケースが増えている。日本の環境に適応して在来種の存在を脅かすだけでなく、人間に危害を与えるハチなども確認されている。こうした外来種に対し、どんな対応が可能なのか。国立環境研究所プロジェクトリーダーとして外来種の研究、対策に取り組んでいる五箇公一さんが、BS日テレ「深層NEWS」に出演し、注意点や対応などを語った。(取材・構成 読売新聞編集委員 伊藤俊行)
――番組は、岸田雪子キャスターが、3年前に長崎県対馬で確認され、今年8月下旬には福岡県北九州市でも確認されたツマアカスズメバチについて、その性質を五箇さんに尋ねるところから始まる。
◆危険度高いツマアカスズメバチ
ツマアカスズメバチは、基本的にスズメバチという狩りバチですから、獲物を捕らえるために毒針を持って襲うという性質を非常に強く持っています。その意味では、人に対する影響、危険度の大きい生き物だと考えなければいけません。
中国、東南アジア原産の大陸型のスズメバチなので、日本列島に生息するスズメバチに比べ、若干、性格がしつこいと言われています。中国南部の大陸で、他の生物と競合しながら進化してきたプロセスと、島国で進化してきたプロセスの違いによるもので、大陸型の方が、増殖力が強く、性格も荒い種類が多い。ツマアカスズメバチの名の由来は、お尻の先に行くほど色が薄く黄色くなって、飛んでいるときには赤く見えるところから来ています。
日本のオオスズメバチに比べると、ツマアカスズメバチの方が小さい。何しろ、日本のオオスズメバチはアジア最大のスズメバチですから。それでも、ツマアカスズメバチは、普通のハチよりは十分に大きい。しかも、狩りバチですから、注意が要るのです。
ツマアカスズメバチの特徴の一つとして、巣が非常に大きいということが挙げられます。図2は、2年前に対馬で撮影された写真で、長さが2メートル、幅が80センチにも達しています。これは、ツマアカスズメバチの巣の中でも最大級のものです。
巣が大きいということは、それだけたくさん、働きバチを生むということです。1匹の女王蜂が非常にたくさんの子を産み、それだけの数の子が巣をどんどん大きくしていくことで、これだけ大きな巣になります。繁殖力が非常に強いのも、ツマアカスズメバチの特徴です。
普通のスズメバチだと一つの巣の中に、だいたい500匹ぐらいの働きバチがうごめいていますが、ツマアカスズメバチの場合は、最大で2000匹以上の働きバチがいて、さらに、次の世代の新しい女王蜂も多数生まれます。1匹の女王蜂が秋になると、次の世代の女王蜂を最低でも500匹ぐらい産みます。その新しい女王蜂が交尾して、次の年に別の巣を作ることを繰り返しますから、増えるスピードが非常に速いのです。
スズメバチの天敵はスズメバチで、スズメバチ同士で巣を襲い、乗っ取り、幼虫やさなぎを食べてしまうことがあります。その意味では、オオスズメバチがツマアカスズメバチを「退治」することもあり得ますが、エサが豊富であれば、あまり
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